攻略対象のイケメンに生まれ変わりボッチになってしまった話

碧海慧

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11、連行

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 皆さん、ご機嫌よう。
 僕の名はアルベール・ルベッソン。
 恋愛ゲームの攻略キャラの一人です。
 僕は今から断罪されるようです……

「アルベール・ルベッソンとアナベル・オーフレイを連行せよ」

 王太子殿下が少し顔を青くして命令する。
 周囲から悲鳴があがる。
 僕の信者の中には気絶する者もいた。
 僕は王太子殿下の衛兵に腕を捕まれた。
 僕の横に王太子殿下の婚約者で悪役令嬢であるアナベルが衛兵に腕を捕まれている。

 これは……悪役令嬢の断罪イベントだ。
 本来、僕はどんなルートでも断罪されるはずはない。
 何かがおかしい……

 王太子殿下の横で女主人公が満面の笑みを浮かべている。
 完全に嵌められたことを僕は悟った。

「待ってください! アルベール様は関係ありません! 殿下、どうか……」

 アナベルが必死に王太子殿下に訴えている。

「君一人で不貞行為は出来ないだろう」

 王太子殿下が冷たくアナベルを突き放した。

 アナベル、君がいくら王太子殿下に訴えてもこの決定は覆くつがえらないよ。
 もう僕達は断罪ルートに乗ってしまったんだ。

「アナベル」

 僕は悪役令嬢の名を呼んだ。
 アナベルは僕を涙に濡れた瞳で見つめた。

「僕は君が好きだ」

 僕の口から自然に転がり落ちた言葉だった。
 どうせ断罪されるなら伝えておかなくてはと思ってしまった。
 こんなに好きになった人は初めてだった。
 何よりも、あなたが大切だ。
 この世界でたった一人の僕の友達になってくれた人。

「だから、君だけには幸せになってもらいたい。僕はどうなっても構わない」

 僕の身体から冷気が溢れ、全てを凍らせていく。
 王太子殿下が息を飲む。

「アルベール!」

 アナベルの悲痛な声が聞こえる。
 凶悪なほど冷たい冷気に晒され、教室は凍り始めた。

 衛兵が凍りつき、僕は自由になった。
 僕は靴が凍って動けない王太子殿下の首に触る。

「みんな、動くな。と言っても動けないか」

 僕は王太子殿下にニコッと笑う。

「王太子殿下。アナベルを無事に遠くまで逃がすまでご無礼をお許しください」

「私は君になら別に構わないが……」

 王太子殿下がぶっきらぼうに僕にしか聞こえない小さな声で言う。

「は?」

「君がやっと私と話してくれるようになって、とても嬉しいのだ」

 王太子殿下は微かに笑った。
 王太子殿下が笑ったところを初めて見た。

「断罪イベントはもっと先だろう? アルベール。君とアナベルを助けたい」

 王太子殿下が言った言葉に僕は衝撃を受けた。

 この人全部知っていたのか。

 君は私の最推しだからな。という王太子殿下のお言葉は僕には聞こえなかった。
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