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9、ヒロイン
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皆さん、ご機嫌よう。
僕の名はアルベール・ルベッソン。
恋愛ゲームの攻略キャラの一人です。
ようやく僕に友達が出来ました!
僕、頑張ったよね!
皆さんに僕の頑張りを褒めて欲しい。
今日、登校して席につくまではこの上なく上機嫌でした。
しかし、今は最悪な気分です。
何故か朝から女主人公に絡まれています……
僕は彼女に何をしたんでしょうか?
誰か教えてください。
「アルベール様、昨日は席にいらっしゃりませんでしたね? どちらに行かれたんですか?」
女主人公がニコニコ言ってきたが、目が笑っていない。
なんで、そんなに僕の動向が気になるんだ?
女主人公はピンクブロンドのふわふわの髪に紫の目。
ザ・ヒロインって感じだな。
名前はなんだろう?
ゲームでは自由に名前変えられるし、あんまり興味がないから知らない。
これ以上特記することはない。
本当にない。
女主人公とは入学してから一度も話したことがない。
「私、心配していたんですよ。なかなか戻って来てくださらないから」
うざったいな……
そろそろ悪役令嬢に会いに行かなくてはいけないのに……
お前には関係ないだろう。
「アルベール様? 何を考えてらっしゃるのですか?」
僕が何を考えていたって良いだろう。
女主人公はいつも王太子殿下に引っ付いていたのに今日は何故……
僕は眼中になかったはずだろう。
「アルベール様」
女主人公が突然僕の首に腕を絡めてくる。
女主人公がつけている濃い香水の匂いに頭がクラクラした。
気持ち悪い。吐きそう。
僕は思わず口を手で押さえた。
いっそ、凍らせてしまおうか。
「アルベール様……」
「マリー、ちょっとこちらに来てくれないか」
王太子殿下のぶっきらぼうな声が教室に響いた。
女主人公は満面の笑みを浮かべると、はーい!と甘えた声を出した。
「王太子殿下に呼ばれちゃったわ。またね」
女主人公は王太子殿下の所に行った。
王太子殿下は女主人公の手を握ると、教室を出て行った。
女主人公は王太子殿下ルート派なのだろうか。
ふーやれやれ。
やっと解放された。
女主人公の名前はマリーというらしい。
あんまり興味ないけど。
あ! お化けトンネルで悪役令嬢を待たせてるかもしれない。
急がなければ!
▽▲▽▲▽▲
お化けトンネルに着くと、悪役令嬢が本を読んでいた。
悪役令嬢が操っている小さな火の玉がピコピコ動き、薄暗いトンネルを優しく照らす。
「あら? 今日は来ないと思ったわ」
悪役令嬢は僕をからかうように言った。
「何を読んでいるんだ?」
僕は悪役令嬢の手元の本を覗き込んだ。
「あら? ちょっとは話せるようになったのね。」
「うん」
昨日の夜、たくさん会話の練習をしたのだ。
ちょっとだけ自信がついたのかもしれない。
まだ、悪役令嬢としか話せないけど……
「これは呪いの本よ。古今東西の呪いが書いてあるの」
「君らしいな」
僕がそう言うと、悪役令嬢が僕の背中をバンと叩いた。
「あんた、言うようになったじゃない!」
「痛い」
悪役令嬢は嬉しそうに僕の背中をバンバン叩いた。
なんだろう……
何かすごく幸せだった。
こういう触れ合いって前世でもあんまりなかったかもしれない。
前世のたった一人の大切な親友を除いて。
今はもう顔も名前も思い出せないけど。
こうしていると、昔からの知り合いだったのかと錯覚する。
「あんたって、良い奴よね。こんなあたしの為に会いに来てくれるんだもの」
悪役令嬢が僕の頭を優しくポンポンと叩いた。
僕は思わず嬉しくなって、笑ってしまった。
「あんたを見ていると、昔一緒にいてくれた人を思い出すわ」
「前世の?」
「あんたに似てお人好しで間抜けだったわ」
「それ褒め言葉なのか?」
「うん……大好きだったの」
僕は何も言えなくなった。
僕の名はアルベール・ルベッソン。
恋愛ゲームの攻略キャラの一人です。
ようやく僕に友達が出来ました!
僕、頑張ったよね!
皆さんに僕の頑張りを褒めて欲しい。
今日、登校して席につくまではこの上なく上機嫌でした。
しかし、今は最悪な気分です。
何故か朝から女主人公に絡まれています……
僕は彼女に何をしたんでしょうか?
誰か教えてください。
「アルベール様、昨日は席にいらっしゃりませんでしたね? どちらに行かれたんですか?」
女主人公がニコニコ言ってきたが、目が笑っていない。
なんで、そんなに僕の動向が気になるんだ?
女主人公はピンクブロンドのふわふわの髪に紫の目。
ザ・ヒロインって感じだな。
名前はなんだろう?
ゲームでは自由に名前変えられるし、あんまり興味がないから知らない。
これ以上特記することはない。
本当にない。
女主人公とは入学してから一度も話したことがない。
「私、心配していたんですよ。なかなか戻って来てくださらないから」
うざったいな……
そろそろ悪役令嬢に会いに行かなくてはいけないのに……
お前には関係ないだろう。
「アルベール様? 何を考えてらっしゃるのですか?」
僕が何を考えていたって良いだろう。
女主人公はいつも王太子殿下に引っ付いていたのに今日は何故……
僕は眼中になかったはずだろう。
「アルベール様」
女主人公が突然僕の首に腕を絡めてくる。
女主人公がつけている濃い香水の匂いに頭がクラクラした。
気持ち悪い。吐きそう。
僕は思わず口を手で押さえた。
いっそ、凍らせてしまおうか。
「アルベール様……」
「マリー、ちょっとこちらに来てくれないか」
王太子殿下のぶっきらぼうな声が教室に響いた。
女主人公は満面の笑みを浮かべると、はーい!と甘えた声を出した。
「王太子殿下に呼ばれちゃったわ。またね」
女主人公は王太子殿下の所に行った。
王太子殿下は女主人公の手を握ると、教室を出て行った。
女主人公は王太子殿下ルート派なのだろうか。
ふーやれやれ。
やっと解放された。
女主人公の名前はマリーというらしい。
あんまり興味ないけど。
あ! お化けトンネルで悪役令嬢を待たせてるかもしれない。
急がなければ!
▽▲▽▲▽▲
お化けトンネルに着くと、悪役令嬢が本を読んでいた。
悪役令嬢が操っている小さな火の玉がピコピコ動き、薄暗いトンネルを優しく照らす。
「あら? 今日は来ないと思ったわ」
悪役令嬢は僕をからかうように言った。
「何を読んでいるんだ?」
僕は悪役令嬢の手元の本を覗き込んだ。
「あら? ちょっとは話せるようになったのね。」
「うん」
昨日の夜、たくさん会話の練習をしたのだ。
ちょっとだけ自信がついたのかもしれない。
まだ、悪役令嬢としか話せないけど……
「これは呪いの本よ。古今東西の呪いが書いてあるの」
「君らしいな」
僕がそう言うと、悪役令嬢が僕の背中をバンと叩いた。
「あんた、言うようになったじゃない!」
「痛い」
悪役令嬢は嬉しそうに僕の背中をバンバン叩いた。
なんだろう……
何かすごく幸せだった。
こういう触れ合いって前世でもあんまりなかったかもしれない。
前世のたった一人の大切な親友を除いて。
今はもう顔も名前も思い出せないけど。
こうしていると、昔からの知り合いだったのかと錯覚する。
「あんたって、良い奴よね。こんなあたしの為に会いに来てくれるんだもの」
悪役令嬢が僕の頭を優しくポンポンと叩いた。
僕は思わず嬉しくなって、笑ってしまった。
「あんたを見ていると、昔一緒にいてくれた人を思い出すわ」
「前世の?」
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僕は何も言えなくなった。
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