攻略対象のイケメンに生まれ変わりボッチになってしまった話

碧海慧

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4、友達候補一人目

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 皆様、ご機嫌よう。
 僕の名はアルベール・ルベッソン。
 恋愛ゲームの攻略キャラの一人です。

 やっと教室の自分の席までたどり着くことが出来ました。
 教室では僕を慕う令嬢方に襲われる心配はありません。
 何故か僕を中心に半径1メートルの無人領域が出来る。
 そして妙な緊張感。
 令嬢方に追い回されないのは大変有り難いが、それはそれでかなり寂しい。
 ボッチなのをひしひしと感じる。
 僕に近付こうとする者は男女問わずことごとく僕を慕う令嬢方に排除されている。
 隣の席は学校上の都合で例外だが。

 今日は頑張って隣の席のモブ男君と仲良くなろうと思う!
 モブ男君の特徴はメガネ!
 容姿は平凡の中の平凡。
 黒髪黒目。
 毎日きっちり制服を着て、遅刻したことがない。
 ザ・真面目君だな。
 それ以上特記することはない。

 別に僕はキラキラ一軍(攻略対象達)に入りたい訳じゃないのだ。
 今後の学校生活で、楽しく笑い合える友達が欲しいだけである。
 キラキラ一軍はラーメンとか食べなさそうだしな……
 パクチーとかパイとか何かお洒落なものを食べていそう。
 もしかしたら僕の偏見かもしれないが。
 出来れば一緒にニンニク増し増しラーメンを食べに行ける友達が良い。

 高望みだろうか。
 いや!きっと、モブ男君はラーメンが大好きなはずだ。 
 ラーメン好きそうな顔をしているし!
 昨日、友達を作るぞー!と決意したら夜眠れなくなった。
 なんか人見知りに拍車がかかっているような気がする今日この頃……
 だが、僕は気にしないぞ!
 そんな小さなことを気にする小さな器じゃないからな。
 僕はビックボウル、ビックボウル……
 失礼!作戦の前に暗示をかけていた。

 作戦はこうだ!
 授業中、僕が誤ってペンを落とす。
 それをモブ男君が拾ってくれて、会話スタート!
 僕とモブ男君はすぐに打ち解けて、大の仲良しになる!
 完璧な作戦だ……

 お! ちょうどモブ男君が机をいじりだしたぞ!
 もしかして、ナイスタイミングじゃないか?!
 みんな応援しておくれ!

 ペン準備良し!
 昨日の深夜、綺麗に磨いておいた。 

 転がす角度良し!
 昨日の深夜、何度も練習した。

 イメトレ良し!
 僕は出来る男だ! 絶対成功させる!

 よし! ペン隊長、突撃だ!

 ポトッ……

「キャー! アルベール様のおペンが!!」

「私のよ! 邪魔しないでよ!」

「私が拾ってアルベール様と恋に落ちるのよ!」

 僕の席の周りにいた花のようなご令嬢方が一斉に立ち上がった。
 皆、僕のペンに向かって群がる。
 久しぶりに餌を与えられたアジの群れのようだ。
 教室はパニックになってしまった……
 ご令嬢方に押し退けられるモブ男君。
 これがこの世界のモブの扱いか……

「ホント、いつもうるさいな」

 モブ男君は表情を動かさずボソッと呟いた。
 小さな声だったのに僕にははっきり聞こえた。
 僕は思わず泣きそうになった。 
 一体僕は何が間違っていたんだ……
 モブ男君に嫌われる為にやったんじゃない。
 というか、元々モブ男君に嫌われていた?
 無理無理!メンタルやられちゃうんだけど!

 内心大パニックで大暴れ中だが、外からはいつも通りの僕である。
 眉一つ動かさない。
 氷の貴公子という異名に恥じないように気をつけなければ!という重圧がいつも僕のメンタルを蝕む。
 これでも一応僕は伯爵家の嫡男でもあるし、恥ずかしい行いは避けなければならない……

 僕はペン一本を血眼になって争っているご令嬢方を遠い目で見つめる。
 あれ? こいつらご令嬢だっけ?
 ご令嬢が授業中に男子生徒が落としたペンを取り合うってどうよ?
 ご令嬢と書いて淑女と読むんじゃなかったのか?
 お前ら、邪魔だよ。
 すまない。思わず取り乱してしまった。

 あ! ペンはどこ行ったっけ?
 ペンは僕とモブ男君の間に寂しそうに落ちている。
 当事者のペンは誰にも触れられていない。
 僕は氷魔法でペンを凍らし、ぽーんと自分の机に戻した。
 僕を慕うご令嬢方は僕のペンを手に入れられなくて、はぁ~と残念そうにため息をついた。

 僕は頭の中で頭を抱える。
 はぁ~無理だ。
 僕に友達なんか出来ない。
 ハードルがエベレストのように高すぎる……
 このままだと一生友達が出来ないままかもしれない。
 それだけは嫌だ。
 必ずしも結婚出来なくても良いし、家も継ぎたい訳じゃないから適当な感じで良いんだけど。
 でも、人生が楽しくなるような親友は欲しい。
 どうしよう……

 モブ男君は僕を慕うご令嬢方をうっとおしそうに睨み付けている。
 モブ男君が視線を逸らし、僕と目が合った。
 が、思いっきり逸らされた……

 今日も誰とも話すことはなかった。
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