【完結済】女王に体の大切な部分が徐々になくなっていく呪いをかけられ絶望の縁に立たされていた貴族令嬢が元王子と出会って革命を起こします!!

寿(ひさ)

文字の大きさ
上 下
77 / 82
後編

77.エラは城内で姫に再会する(1)

しおりを挟む
※またアレクシア視点に戻ります。



 朝食の後、再び寝室へ呼ばれた。
 何か用があるのなら、どうせ二人きりだしその場で言ってくれてもいいのにと思った。エリオンの真意が分からず、私は頭の中で首を傾げる。

 エリオンは開け放たれていた窓を締めると、カーテンもぴっちり閉じた。明るい日の光が差し込んでいた寝室が一気に薄暗いものになる。彼がこれから何をするつもりなのか、察しの悪い私でも察してしまった。
 今日、エリオンは休みだ。朝からそういうことをしようと思えば出来る。今日は業者も来ない日だ。

 胸の奥がどくんと跳ねるが、嫌な気持ちではない。それでも。ベッドに薔薇の花びらを散らせとまでは言わないが、もう少しロマンチックな雰囲気で誘ってほしいと思った。しかし、相手は何かと不器用なところのあるエリオンである。こちらの恐怖心を煽るような誘い方しか、彼はできないのかもしれない。心の中で苦笑いした。

 ──今の私は、今までの私じゃないわ。

 男女のことを何も知らなかった私は、この数ヶ月間、程々に経験を積んでいるというヘレナから、閨の事を色々教わっていた。もう受け身でばかりいる私ではない。
 ぎゅっと拳をにぎり、怖気付きそうになる心を奮い立たせる。ここで怯んだらまたレス状態が続いてしまう。そんなのは嫌だ。

 私は振り返ったエリオンに力強くこう言い放った。

「アレク……」
「エリオン様、ズボンを脱がせてもいいでしょうか!」

 私の言葉に、エリオンは凍りついたようにピシリと固まる。そして、絨毯を引き摺るように一歩二歩後ずさると、声を震わせた。

「ず、ズボン……? なぜ?」
「エリオン様の陽根を舐めるためです」

 エリオンは「ひっ」と小さく悲鳴を漏らした。その翡翠の瞳は、信じられないと言わんばかりに見開かれている。

 ──やっぱり。

 エリオンの反応を見て確信した。枢機院で働きはじめた彼は精神疲労のせいで不能気味になっていたのだろう。
 爺専のヘレナは独り者の枢機官数名と付き合った事があるらしいが、その誰もが雄を直接刺激しないと勃ちあがらない状態であったらしい。
 枢機院はこの国の中枢だ。選りすぐりのエリートが集まる苛烈な競争社会。派閥争いが絶えずあり、皆が皆、精神的に疲れていた。
 ヘレナは言った。エリオンは精神疲労が原因で、性的に不能気味だから私と交われないのだろうと。
 ヘレナ曰く、軽度の勃起障害ぐらいなら、こちらが口や手で刺激してやればなんとかなるものらしい。私はヘレナに聞いた男を悦ばせるコツをメモし、こっそり毎日読んでいたのだ。

「……あら?」

 固まっているエリオンの目の前に膝をつくと、すでに彼の股間には布地をくっと押し上げるものがあった。エリオンは今、タイトなズボンを履いているからか、肉棒の形がくっきり浮き出ている。ズボンの上から、股間に触れるとそこはじんわり温かかった。
 頭上から、動揺しきったエリオンの声が降ってくる。

「そ、そんなところ……! さっ、触ってはダメだ……!」
「え? どうしてですか? これから交合をするのでしょう?」
「えっ、それはその」
「わざわざ寝室に呼んで、カーテンも閉めて。私と閨のことをするためですよね?」

 少々あけすけすぎるが、ここで周りくどい言い方をするのもまどろっこしい。私の問いに、エリオンは喉を鳴らすと、顔をこれでもかと赤らめて頷いた。

「では、失礼しますね」

 私はエリオンのベルトに手をかけた。私には少し歳の離れた弟がいて、小さな頃は着替えを手伝ったこともある。実は人の脱ぎ着を手伝うのは慣れていた。あっさりベルトを外し、ズボンの留め具に手をかける。すでにエリオンの雄はがちがちに勃ちあがっていて非常に窮屈そうだった。早くここから出してあげなくては。頭上からエリオンの浅い息遣いが聞こえてくる。
 なんとかボタンを外し、ズボンをずり下げる頃には、エリオンの下着は先走りの液で濡れていた。

 ──……不能じゃないのかしら?

 むしろこの状況は健康すぎるぐらいだろう。
 エリオンは脱がされるだけで、これだけ興奮できているのだから。

「アレクシア……。俺のことが気持ち悪いんじゃ無いのか?」

 切羽詰まったようなエリオンの言葉。私は数回瞬きした。

「どうしてですか? 私はあなたのこと、好きですけど?」

 好きでなきゃ、さすがに復縁は出来ない。それにこの三ヶ月の間に私から閨の誘いをしたこともある。気持ち悪いと思っていたら、そもそも一緒に暮せない。

「す、すき……?」
「はい! 大好きです!」

 またエリオンはぴしりと固まった。その隙に下着を脱がせる。ぶるんと勢いよく出てきた彼の雄は天を仰ぎ、亀の頭のような先が張り出している。約一年半ぶりに目にした肉棒。彼に襲われた事自体はあまり良い思い出ではないが、コレには随分気持ちよくして貰った。

 ──どうしよう……。

 ヘレナからは、柔らかい雄をなんとか奮い勃たせる方法は教わったが、すでに目の前にあるものは臨戦態勢だ。でもまあ、勃ちあがっていても触れば気持ちよく感じて貰えるかもしれない。そう思い、手を伸ばそうとしたら。
 逆にエリオンから手首を掴まれてしまった。

「エリオン様?」
「君に触らせている余裕がない」
「えっ、え」

 腕を引っ張られると、そのままベッドに押し倒された。視界がぐるりと回る。腰や背に手を回されると、ドレスを固定していた紐をしゅるんと解かれる。襲うように着ていたものを乱暴に剥がされ、私は慌てた。

「ドレスが皺になります!」
「また買ってやる」

 性急な手つきで剥き出しになった乳房を握りこまれ、もう片方の手で顎を上向かされた。抵抗する間もなく、唇を重ねられ、口内に滑る舌をねじ込まれた。
 こんなに切羽詰まるまで我慢するのなら、私が誘った時に普通に抱いていればいいのに、エリオンはどうしてもラブラブな雰囲気で楽しい交接が出来ない人らしい。そして襲われている私も、この状況を少し悦んでしまっている。

 ──割れ鍋に綴蓋ね……。

 また心の中で苦笑いしながら、エリオンの舌に自分の舌を絡めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
 リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。  お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。  少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。  22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

拾った仔猫の中身は、私に嘘の婚約破棄を言い渡した王太子さまでした。面倒なので放置したいのですが、仔猫が気になるので救出作戦を実行します。

石河 翠
恋愛
婚約者に婚約破棄をつきつけられた公爵令嬢のマーシャ。おバカな王子の相手をせずに済むと喜んだ彼女は、家に帰る途中なんとも不細工な猫を拾う。 助けを求めてくる猫を見捨てられず、家に連れて帰ることに。まるで言葉がわかるかのように賢い猫の相手をしていると、なんと猫の中身はあの王太子だと判明する。猫と王子の入れ替わりにびっくりする主人公。 バカは傀儡にされるくらいでちょうどいいが、可愛い猫が周囲に無理難題を言われるなんてあんまりだという理由で救出作戦を実行することになるが……。 もふもふを愛するヒロインと、かまってもらえないせいでいじけ気味の面倒くさいヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより pp7さまの作品をお借りしております。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。 そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。 「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」 こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。 けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。 「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」 夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。 「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」 彼女には、まったく通用しなかった。 「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」 「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」 「い、いや。そうではなく……」 呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。 ──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ! と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。 ※他サイトにも掲載中。

処理中です...