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後編
62.仲間との再会(2)
しおりを挟むそうしてまた3日が過ぎたとある午後……
「フレリア、そろそろ休憩だ。」
明け方頃に野営地を出発し、馬車に揺られてウトウトしていたのだろう。目が覚めるともう陽が高い時間だった。
「ここはもう辺境伯領の端だ。夕刻までには辺境伯の屋敷に到着する。」
「はい。」
「もし、良かったら…俺とデートしてくれませんか? 明日からは、婚姻式までお互い離れ離れだから、その……」
ライド様は赤らめた頬をポリポリと人差し指で撫でながら、遠慮がちに言う。
「はい。よろこんで!!」
私は、居酒屋バイトみたいな返答をすると、ライド様のエスコートで馬車から降りた。
……のだが、そのままライド様は騎乗され、私もライド様の膝の間にお尻から着地すると同時にライド様の合図で馬が駆け足を始める。
ぐんぐんスピードに乗るので馬の鬣に捕まろうとした手を取られて半転、ぎゅっと抱き寄せられた。
少しだけスピードが緩む。
「貴女の体温を感じていたいのだが。」
「………………はい。」
「掴まっていて。」
ライド様の腕の中で頷くと、早速ライド様の背中へ両手を伸ばす。
ライド様は安心されたように僅かに微笑み、再びスピードが上がるとGが掛かってますます体が密着した。
それから、風の抵抗を考えたのかライド様が前傾姿勢を取られたのだけど、それが押し倒されたみたいになって、ドキドキウズウズしてしまった。
そんな時間が、体感時間で半日にも感じた頃、耳に物売りの声が届くようになった。
馬の歩調も常歩となり、ライド様の前傾姿勢も解除され……
私とライド様との間に爽やかな風が通り過ぎたのが、少し寂しく感じた……のもつかの間、下から抱き止められ、私は馬から降りた。
私を片腕に抱き上げたまま、ライド様は見知った下男に馬を預けている。
そこで、私はそこが辺境伯領主邸の門前であり、領主街の入口もしくは出口であると気付いた。
チュッ
「さぁ、フレリア。デートに行きましょう。」
顎にライド様の骨張った指先が触れたと思ったら唇にキスを受けた。
「んぁっ、ライド様。私、手を繋いで歩きたいです。」
ライド様の腕に抱かれたまま、少しだけ見上げるように言い募れば、瞬間的に頬を染めたライド様が私を下ろしてくださった。
「エスコートではなく、手を?」
「はい。こう、指を絡めて繋ぐのを、巷では《恋人繋ぎ》と呼ぶそうですわ。私、本当は学園で恋人ができたら、そうして学園の下町を散策しながらお店をひやかすの、夢だったのです。」
──とは、本当は叶わなかった前世での《夢》だ。
私の高校時代やそれ以降はバイト三昧だったから…
ライド様の指を1本1本撫でながら話せば、
「わかりました、行きましょう。」
数秒後には《恋人繋ぎ》をして街へ繰り出し、そのまた数十秒後には解消して腕を組んで歩くことにした。
《恋人繋ぎ》初心者の私は知らなかったのだ。
騎士の握力の強さと、指同士を深く絡めた時には手の小さな方の指が裂けそうになると言うことを。
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