【完結済】女王に体の大切な部分が徐々になくなっていく呪いをかけられ絶望の縁に立たされていた貴族令嬢が元王子と出会って革命を起こします!!

寿(ひさ)

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後編

53.針鼠の過去。復讐への誓い。(1)

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 俺の母_エミリアは心の優しい人だった。
 王の妃という身分でありながら、誰にでも分け隔てなく尊敬心を持ち、思いやりをもって接していた。王にはもう一人妃がいた。その女の性格は最悪だったよ。そいつはエミリアよりも優秀で、美しい女で、エミリアに負ける要素がなかった。それでもあいつは母を侮辱し嫌がらせをし続け、王妃の座から退けようとした。エミリアが王子を産んだのが余程気に食わなかったんだろうな。エミリアは嫌がらせを耐え続け、父王にも報告しなかった。俺は子供ながらにもう一人の王妃の事が大嫌いだったよ。
 俺はある日、

「あいつがいなくなればいいのに。」

と言った。すると、母は言った。

「そんな事言ってはダメ。人間良い所と悪い所の両方を持っているものよ。私たちはあの人の悪い所を見ているだけ。あの人にもきっと素晴らしい部分があるのよ。」

 とんだお人好しだな。もう一人の王妃は父王には性格の悪さを取り繕ったようだが、父はそれを見破っていたようだった。次第に母に愛情を傾けるようになった。だが母は、そんな父王に、二人の王妃を平等愛してくれと頼んだ。そうでなくてはもう一人の王妃がかわいそうだ、と。

 その内に、父王は病で忽然と亡くなってしまった。亡くなる直前もう一人の王妃が『王家の指輪』を受け継ぎ、王位を継承した。

 そこからが地獄だった。

 あの女___女王は、王位に即位した途端、母と俺を捕まえた。罪状は『先王が病に伏せっているにもかかわらず、若い男と不義理の関係を結んでいた』だった。勿論、でっちあげだ。母エミリアは生涯父王を愛し続けた。あまりにも屈辱だった。貴族達はすぐに女王の側につき、母と俺には味方がほとんどいなかった。忠誠心の厚い者達が何人か味方してくれた。

 だが、女王は彼らも母も捕まえた。そして、俺の目の前で全員、火炙りの刑にした。

 母は泣きながら父と俺の名前を何度も叫んでいたよ。力尽きる最期の時まで。何度も何度も。俺は何もできずにただ見ている事しかできなかった。あんなに優しかった母や忠臣達を、残酷に殺してしまう世界そのものが受け入れられなかった。

 あの日から俺の中に炎がある。ずっと俺を蝕み燃え続けている。ずっとその炎に焼かれて苦しくてしょうがない。ただ、あの女_女王が苦しむのを想像する時だけは痛みが和らぐんだ。あの女を殺せばきっとこの火は消える。
そうすれば、きっと消えるはずだ。皮膚が焼けただれる匂いも、パチパチと人間を焼く火の音も、母の狂ったような叫び声も、全部___



――――
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