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前編
49.前編の終わり(2)
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__もうダメだ。
エラは思った。思えばエラはどうせ後数ヶ月の命だ。このまま生き恥をさらすくらいならここで死んでしまった方がマシかもしれない。だが、__
(針鼠だけは……なんとか助けないと……。昇り藤が……! 皆が……! 彼が生きる事を望んでる!)
「浮いて!」
杖はやはり何も起きない。
(お願い……。)
エラは心の中で手を組んだ。地面はもうすぐ目の前に迫っていた。
すると、____
チラチラと視界の隅で何かが明滅しているのが見えた気がした。エラはピンときて、それを見た。
___白い蝶だ。
エラは涙が込み上げてきた。
いつの間にか、エラの周りには、あの白い蝶が数匹集まって飛んでいた。
「_____浮けェッ……!!!」
エラは腹に力を込めて叫んだ。
ふわりっ……
体に浮遊感を感じた。針鼠の体もエラと同様にふわりと一瞬上に浮く。すぐに二人は下にゆっくりと降下した。地面に静かに着地した。
「……はぁ……ぁ……はあ……」
身体中にしばらく心臓音がバクバクと響く。エラは緊張で身体中から汗が吹き出していた。呼吸を整えるまで動く事ができなかった。
しばらくすると、やっと緊張が解けてきて、体が動かせるようになる。エラの頭に乗っていたカゴは崖から落ちている間にどこかへいってしまった。エラの醜い顔がさらけだされている。だが、今はそんな事気にしている場合じゃない。
エラは急いで針鼠に駆け寄った。エラの目は見えなく、魔法で頭の中に入ってくる情報は針鼠の輪郭と苦痛の感情だけである。なのでエラは針鼠の体を触りながら傷の度合いを確かめなければならない。
身体も服も血だらけだ。ちゃんと服を脱がせて血をふかないと怪我の程度がわかりにくい。が、左腕の引っ掻き傷が最も重症である事はわかった。呼吸はしているが正常ではない。
「は、早く治療しないと……! し、死んじゃうよ……!」
エラは真っ青になった。まだ、白い蝶はエラの周りを飛んでいる。エラは今までの経験から、この蝶達がいる時は魔法が使えるという事を学んだ。エラは杖を構えた。
「治れ!」
だが、反応しない。
「な、なんで……!?」
エラは叫んだ。蝶と意思疎通できるはずがないのに、エラは非難がましく一匹の蝶を睨みつけた。
蝶達がいれば魔法が使えるんじゃないのか?
何度か「治れ」と叫んだ。だが、何も起きなかった。針鼠の左腕からどんどん血が流れ出ていく。エラは魔法を使う事を諦めた。
とにかく左腕の血を止めようと、腰布を使って、強く押し当てた。エラは他の箇所の傷も調べようと思った。しかし、
___ァオオーゥン
ふいに、森の方から獣の鳴き声が聞こえた。エラの聞き覚えのない声だ。
(い、今の結構近かったわよね……?)
エラは身震いした。そもそも『迷いの森』は「一度入ったら出られる者はいない」と言われている森だ。つまり、植物も動物も全てが未知だ。エラの知らない凶暴な生物が沢山いるだろう。
(針鼠の怪我を見たいけど、ここでは危険だわ。もっと安全な場所に移動できればいいのだけれど……。でも、ここに安全な所なんてあるのかしら……。)
エラが思案していると、1匹の白い蝶はエラの頭の周りを一周回って森の方へ飛んでいった。エラをおいてまたどこかへ消えてゆくのかと思ったが、一定の距離森へ進むとその場で止まって飛び続けた。まるで、エラ達を待っているようだった。気がつくと、他の白い蝶は消えていた。その蝶だけがずっとエラの前で飛び続けた。
「まさか……ついてこいって言うの……?」
エラは迷った。この場で針鼠が回復しさえすれば、崖を登って帰る事ができるかもしれない。針鼠は片腕を負傷しているしエラは筋力がないが、さっきの浮遊する魔法を応用すればなんとか登れるかもしれない。
(帰るってどこへ帰れば良いのかしらね……。)
エラはため息をついた。処刑場のあの様子では、『白い教会』は壊滅。生き残った者がいるとは思えなかった。エラも針鼠も帰る場所がなくなった。
だが、これで蝶について行ったらどうなるだろうか?
エラ達は本格的に、「一度入ったら出られる者はいない」という『迷いの森』に入る事になる。あの白い蝶は不思議な蝶だ。他の人には見えないのに、目の見えないエラにははっきりと見える。そしてその蝶が出現した時には魔法が使えるようになる。だから、今回も不思議な力でエラをどこかへ導いてくれようとしているのかもしれない。でも、もし、そうじゃなかったら?道案内をされてるのかとおもいきや、途中でぱっと消えてしまうかもしれない。そうなったら、今度こそエラ達はおしまいだ。
森の中には危険な生き物がわんさかいるだろう。だが、ここに残っていてもそれは変わらない。
「賭けてみるしか、ないみたいね。」
エラは針鼠の左腕の引っ掻き傷を腰布で巻いて、右腕を自分の肩に回して持ち上げた。
「行くわ。案内して。」
エラは白い蝶に向かって言った。白い蝶は一瞬上下にひらひらと飛ぶと、森の奥へと飛んでいった。
エラは針鼠の体を支えながら、『迷いの森』へと足を踏み入れたのだった。
エラは思った。思えばエラはどうせ後数ヶ月の命だ。このまま生き恥をさらすくらいならここで死んでしまった方がマシかもしれない。だが、__
(針鼠だけは……なんとか助けないと……。昇り藤が……! 皆が……! 彼が生きる事を望んでる!)
「浮いて!」
杖はやはり何も起きない。
(お願い……。)
エラは心の中で手を組んだ。地面はもうすぐ目の前に迫っていた。
すると、____
チラチラと視界の隅で何かが明滅しているのが見えた気がした。エラはピンときて、それを見た。
___白い蝶だ。
エラは涙が込み上げてきた。
いつの間にか、エラの周りには、あの白い蝶が数匹集まって飛んでいた。
「_____浮けェッ……!!!」
エラは腹に力を込めて叫んだ。
ふわりっ……
体に浮遊感を感じた。針鼠の体もエラと同様にふわりと一瞬上に浮く。すぐに二人は下にゆっくりと降下した。地面に静かに着地した。
「……はぁ……ぁ……はあ……」
身体中にしばらく心臓音がバクバクと響く。エラは緊張で身体中から汗が吹き出していた。呼吸を整えるまで動く事ができなかった。
しばらくすると、やっと緊張が解けてきて、体が動かせるようになる。エラの頭に乗っていたカゴは崖から落ちている間にどこかへいってしまった。エラの醜い顔がさらけだされている。だが、今はそんな事気にしている場合じゃない。
エラは急いで針鼠に駆け寄った。エラの目は見えなく、魔法で頭の中に入ってくる情報は針鼠の輪郭と苦痛の感情だけである。なのでエラは針鼠の体を触りながら傷の度合いを確かめなければならない。
身体も服も血だらけだ。ちゃんと服を脱がせて血をふかないと怪我の程度がわかりにくい。が、左腕の引っ掻き傷が最も重症である事はわかった。呼吸はしているが正常ではない。
「は、早く治療しないと……! し、死んじゃうよ……!」
エラは真っ青になった。まだ、白い蝶はエラの周りを飛んでいる。エラは今までの経験から、この蝶達がいる時は魔法が使えるという事を学んだ。エラは杖を構えた。
「治れ!」
だが、反応しない。
「な、なんで……!?」
エラは叫んだ。蝶と意思疎通できるはずがないのに、エラは非難がましく一匹の蝶を睨みつけた。
蝶達がいれば魔法が使えるんじゃないのか?
何度か「治れ」と叫んだ。だが、何も起きなかった。針鼠の左腕からどんどん血が流れ出ていく。エラは魔法を使う事を諦めた。
とにかく左腕の血を止めようと、腰布を使って、強く押し当てた。エラは他の箇所の傷も調べようと思った。しかし、
___ァオオーゥン
ふいに、森の方から獣の鳴き声が聞こえた。エラの聞き覚えのない声だ。
(い、今の結構近かったわよね……?)
エラは身震いした。そもそも『迷いの森』は「一度入ったら出られる者はいない」と言われている森だ。つまり、植物も動物も全てが未知だ。エラの知らない凶暴な生物が沢山いるだろう。
(針鼠の怪我を見たいけど、ここでは危険だわ。もっと安全な場所に移動できればいいのだけれど……。でも、ここに安全な所なんてあるのかしら……。)
エラが思案していると、1匹の白い蝶はエラの頭の周りを一周回って森の方へ飛んでいった。エラをおいてまたどこかへ消えてゆくのかと思ったが、一定の距離森へ進むとその場で止まって飛び続けた。まるで、エラ達を待っているようだった。気がつくと、他の白い蝶は消えていた。その蝶だけがずっとエラの前で飛び続けた。
「まさか……ついてこいって言うの……?」
エラは迷った。この場で針鼠が回復しさえすれば、崖を登って帰る事ができるかもしれない。針鼠は片腕を負傷しているしエラは筋力がないが、さっきの浮遊する魔法を応用すればなんとか登れるかもしれない。
(帰るってどこへ帰れば良いのかしらね……。)
エラはため息をついた。処刑場のあの様子では、『白い教会』は壊滅。生き残った者がいるとは思えなかった。エラも針鼠も帰る場所がなくなった。
だが、これで蝶について行ったらどうなるだろうか?
エラ達は本格的に、「一度入ったら出られる者はいない」という『迷いの森』に入る事になる。あの白い蝶は不思議な蝶だ。他の人には見えないのに、目の見えないエラにははっきりと見える。そしてその蝶が出現した時には魔法が使えるようになる。だから、今回も不思議な力でエラをどこかへ導いてくれようとしているのかもしれない。でも、もし、そうじゃなかったら?道案内をされてるのかとおもいきや、途中でぱっと消えてしまうかもしれない。そうなったら、今度こそエラ達はおしまいだ。
森の中には危険な生き物がわんさかいるだろう。だが、ここに残っていてもそれは変わらない。
「賭けてみるしか、ないみたいね。」
エラは針鼠の左腕の引っ掻き傷を腰布で巻いて、右腕を自分の肩に回して持ち上げた。
「行くわ。案内して。」
エラは白い蝶に向かって言った。白い蝶は一瞬上下にひらひらと飛ぶと、森の奥へと飛んでいった。
エラは針鼠の体を支えながら、『迷いの森』へと足を踏み入れたのだった。
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