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前編
40.目覚める力(2)
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エラが目を覚ました時には既に『白い教会』の本拠地、白い教会にいた。ベッドに寝かされていて、起きたら他の侵入作戦のメンバーもいた。カゴを被っていなかったので城で落としたのかと焦ったが、枕元に置いてあったのでホッとしながらそれをかぶる。他の人たちは皆元気そうだった。深手を負っていた神父や蜘蛛、翡翠も清潔な布で傷の処置が施されていて顔色が良かった。
その日の夜、白い教会の大部屋はお祭り騒ぎだった。
精鋭部隊が王家の指輪を盗み無事帰還した事に、誰もが喜びの声をあげた。驚いた事に、多くの人たちがエラの事を賞賛した。蜘蛛達がエラの活躍を皆に報告してくれたのである。
「でも、気を失ってる間黒目の大事な予備の杖をなくしてしまったわ。」
周囲に褒められても、その事が気になってエラはいまいち喜びきれないでいた。杖は高級品だったらしい。黒目が普段持っている杖とエラがなくしてしまった杖しかなかったようだった。
「いいんだよ。杖よりも、お前が救った針鼠の方が余程『白い教会』にとって価値がある。」
黒目が笑ってエラの肩を叩いた。エラはチラッと針鼠を見る。針鼠の不服そうな感情がエラの頭にはっきりと伝わってきた。散々馬鹿にしてきたエラに命を助けられたのだ。針鼠としてはいい気はしないだろう。
(でも、私が魔法使って立てなくなった時は針鼠が助けてくれたのよね。なんで、あの時助けてくれたんだろう。……いえ、そんな事疑問に思うのが無駄よね。どうせ、あいつの事だから私を魔法使いとして利用価値があるとか思ったのでしょうね。)
気づけば、針鼠が居心地悪くなったのか、エラ達がいる大部屋から一人退出していった。針鼠が不機嫌なのはエラのせいなのだと思うと、なんだか胸がスッとした。
エラはふうっとため息をついた。皆が今回の作戦の成功を喜んでいる中で、エラの心はずっと沈んだままだった。
「どうした? イシ。何か引っかかる事があるのか?」
エラの様子を不思議に思い黒目が聞いた。
「……女王様の部屋で叔父様と叔母様と見つけたの。豚に変えられてペットにされてたわ。」
エラは陰鬱な表情で答えた。周りの人々がびっくりしてエラを見た。まだ女王のペットの話は聞いていなかったらしい。
「それは……初耳だ。なんてひどい……。……だが、人を動物に変える魔法は現代魔法だ。イシ、お前がかけられた呪いと違って魔法使いなら誰でも解く事ができる簡単な魔法だよ。最悪、術者を殺すことで魔法を解く事もできる。革命が成功すれば彼らを必ず助けられる。」
黒目はエラを安心させようとした。が、エラは頭をふった。
「今こうしている間にも叔父様達は辱めを受けているのよ。ホール家の……今は落ちぶれているけど元は大貴族である叔父様達が……あんな……あんな、姿に変えられて、豚の餌を食べさせられて服も着せてもらえず豚のやり方で排泄させられるのよ!! いくらなんでもあんまりな罰だわ! 私がそれ程の事をしたっていうの!? あなた達のいう『革命』の決行がいつなのか知らないけど、それまでずっと叔父様達があんな屈辱を味わわされなきゃいけないなんて、私、耐えられない……。」
「___革命は、明日決行する。」
黒目は静かに言った。エラは一瞬開いた口が塞がらなかった。
「お前には作戦をちゃんと説明するよ。」
エラは周囲を見回す。
「え、そんな事、私に言っていいの?」
今までエラは捕虜だったから、『白い教会』の方針とか、作戦については一切聞かされなかった。それが、急に話すというのだからエラは耳を疑った。
「ああ、いいよ。皆もいいだろ?」
黒目が周りに呼びかけると、兄ドラや神父、翡翠など周囲の人々は頷いた。弟ドラが、フンッと鼻をならしたが、特段止めるそぶりを見せない。
「皆イシの事を認めてるんだよ。」
エラは胸が熱くなるのを感じた。
今までずっと捕虜として疎外感を感じてきた。『白い教会』だけじゃない。エラは女王に呪いをかけられた日からずっとどこにいても自分には居場所がないように感じていた。だが、今は彼らはエラを対等な仲間として受け入れてくれていた。エラは胸がいっぱいになるのを感じた。
「それでは説明するぞ。」
その日の夜、白い教会の大部屋はお祭り騒ぎだった。
精鋭部隊が王家の指輪を盗み無事帰還した事に、誰もが喜びの声をあげた。驚いた事に、多くの人たちがエラの事を賞賛した。蜘蛛達がエラの活躍を皆に報告してくれたのである。
「でも、気を失ってる間黒目の大事な予備の杖をなくしてしまったわ。」
周囲に褒められても、その事が気になってエラはいまいち喜びきれないでいた。杖は高級品だったらしい。黒目が普段持っている杖とエラがなくしてしまった杖しかなかったようだった。
「いいんだよ。杖よりも、お前が救った針鼠の方が余程『白い教会』にとって価値がある。」
黒目が笑ってエラの肩を叩いた。エラはチラッと針鼠を見る。針鼠の不服そうな感情がエラの頭にはっきりと伝わってきた。散々馬鹿にしてきたエラに命を助けられたのだ。針鼠としてはいい気はしないだろう。
(でも、私が魔法使って立てなくなった時は針鼠が助けてくれたのよね。なんで、あの時助けてくれたんだろう。……いえ、そんな事疑問に思うのが無駄よね。どうせ、あいつの事だから私を魔法使いとして利用価値があるとか思ったのでしょうね。)
気づけば、針鼠が居心地悪くなったのか、エラ達がいる大部屋から一人退出していった。針鼠が不機嫌なのはエラのせいなのだと思うと、なんだか胸がスッとした。
エラはふうっとため息をついた。皆が今回の作戦の成功を喜んでいる中で、エラの心はずっと沈んだままだった。
「どうした? イシ。何か引っかかる事があるのか?」
エラの様子を不思議に思い黒目が聞いた。
「……女王様の部屋で叔父様と叔母様と見つけたの。豚に変えられてペットにされてたわ。」
エラは陰鬱な表情で答えた。周りの人々がびっくりしてエラを見た。まだ女王のペットの話は聞いていなかったらしい。
「それは……初耳だ。なんてひどい……。……だが、人を動物に変える魔法は現代魔法だ。イシ、お前がかけられた呪いと違って魔法使いなら誰でも解く事ができる簡単な魔法だよ。最悪、術者を殺すことで魔法を解く事もできる。革命が成功すれば彼らを必ず助けられる。」
黒目はエラを安心させようとした。が、エラは頭をふった。
「今こうしている間にも叔父様達は辱めを受けているのよ。ホール家の……今は落ちぶれているけど元は大貴族である叔父様達が……あんな……あんな、姿に変えられて、豚の餌を食べさせられて服も着せてもらえず豚のやり方で排泄させられるのよ!! いくらなんでもあんまりな罰だわ! 私がそれ程の事をしたっていうの!? あなた達のいう『革命』の決行がいつなのか知らないけど、それまでずっと叔父様達があんな屈辱を味わわされなきゃいけないなんて、私、耐えられない……。」
「___革命は、明日決行する。」
黒目は静かに言った。エラは一瞬開いた口が塞がらなかった。
「お前には作戦をちゃんと説明するよ。」
エラは周囲を見回す。
「え、そんな事、私に言っていいの?」
今までエラは捕虜だったから、『白い教会』の方針とか、作戦については一切聞かされなかった。それが、急に話すというのだからエラは耳を疑った。
「ああ、いいよ。皆もいいだろ?」
黒目が周りに呼びかけると、兄ドラや神父、翡翠など周囲の人々は頷いた。弟ドラが、フンッと鼻をならしたが、特段止めるそぶりを見せない。
「皆イシの事を認めてるんだよ。」
エラは胸が熱くなるのを感じた。
今までずっと捕虜として疎外感を感じてきた。『白い教会』だけじゃない。エラは女王に呪いをかけられた日からずっとどこにいても自分には居場所がないように感じていた。だが、今は彼らはエラを対等な仲間として受け入れてくれていた。エラは胸がいっぱいになるのを感じた。
「それでは説明するぞ。」
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