【完結済】女王に体の大切な部分が徐々になくなっていく呪いをかけられ絶望の縁に立たされていた貴族令嬢が元王子と出会って革命を起こします!!

寿(ひさ)

文字の大きさ
上 下
13 / 82
導入

13.怒り狂った女王(2)

しおりを挟む

「…のっ泥棒猫っ!」

 エラは訳がわからずに頬を打たれたまま、ただ突っ立っている。間髪入れずに、女王はまたエラの頬を打った。

「___っ」

 エラは何がなんだかわからなくて、ひたすら怖くて仕方がなかった。

「陛下、落ち着いてください。誤解をなさって…」

「この私に命令するな!!」

 静かに諌めようとするレナードに女王は怒鳴り散らした。

「この女狐は私の男を誘惑したのよ!おまけに手の甲にキスまでさせた!!」

(……『私の男』?)

 女王の言葉で、やっと、エラは状況がなんとなく理解できた。

 女王は夫_先王が亡くなって以来、新しい夫も恋人ももたずにいる。しかし、それは表向きの話で、女王には何人か『お気に入り』がいるらしいという噂をきいた事がある。周りが面白がって噂しているのを聞いた事があるが、正直エラは半信半疑だった。

「そ、それじゃ、……レナード様が……。」

 エラは驚いてレナードを見るが、目をそらされた。

(そんな……。レナード様は女王様の事なんて一度もおっしゃってくださらなかったじゃないの……。)

 一瞬、騙された、という感情がエラを支配する。
 しかし、すぐに思い直した。『お気に入り』は表立った存在ではない。言いたくても言えなかったのだろう。

「陛下、これは新しい友に対する親愛の証です。深い意味はありません。」

「嘘をつけ!!」

 レナードが弁明するが女王は聞く耳をもたない。後ろでは更にひそひそと貴族達が何事か話している。
 『お気に入り』の存在はエラが聞いた事あるくらいだから、ここにいる大半の貴族も知っているのだろう。が、このように公の場で騒ぎ立てれば良い笑い物だ。女王だけじゃなく、それを諌めているレナードもだ。それでもレナードは顔色は悪いものの、落ち着いた様子でいる。対して、女王は子供のように泣き喚いていた。

「キスだけじゃないわ!外庭でその女狐と楽しそうに踊っていたじゃない!しかも、初対面で3回も踊った!!」

「……人に監視させていたんですね。」

 レナードはここでようやく顔をしかめた。
 女王はエラに向き直った。

「よくもずけずけとこの場に立っていられるわね。綺麗な顔して、人の男たらしこんで、まるで下品な娼婦みたい!」

「そ……そんな、……私、何も知らなくて…。」

「ああ、その顔よ!なんにも知らない、なんにも知らない。内心ではレナードをどうやってたらしこむか考えながら舌なめずりしていたくせに。下級貴族の分際で、身の程知らずにも程があるわ。ねえ、聞かせなさいな。あなたその純粋そうな顔で一体今まで何人の男を誘惑してきたの?」

「ほ、本当にそのようなつもりは微塵もありませんでしたわ!!レナード様とは本当に良いお友達になれると思っていました!!決して恋人などと邪な気持ちを抱いていた訳ではあいません!!」

 ____パンッ…!!

 問答無用でまた平手打ちをされる。耐えきれずにエラは涙が溢れてしまった。

「この売女!!」

____パンッ……!!

「何が友人よ!!」

____パンッ……!!

「誘惑する気だったくせに!!」

____パンッ……!!

「ホール家を皆殺しにしてしまえ!!」

「お、叔父様達は何も…」

____パンッ……!!!

 エラは恐怖と痛みで目がくらくらした。
 その時、ふと姫と目があった。女王の右奥の方にいた。涙を流しながらブルブル震えていた。真っ青だった姫の顔が、エラと目があった瞬間更に青くなった。

「身の毛がよだつような恐ろしい呪いをかけて、地下の一番奥深くに閉じ込めて二度と日の光を浴びれないようにしてやる!!」

 女王は大きく振りかぶった。エラは咄嗟に目をつむった。

 しかし、女王の平手が止まった。

 _レナードが静かに女王の平手を止めたのだ。


 こんな小さな静止ではあったが、確かにそれは、『一国の女王に逆らった』事を意味した。



「……弁明は?」

「ありません。俺は彼女を愛してしまいました。ですが、彼女にはなんの罪もございませ…」

 レナードは最後まで言葉を話さなかった。

 エラの目の前で、一瞬体がぐらりとゆらめいたかと思うと、





 __その場で倒れてしまった。







 貴族の誰かが短く、悲鳴をあげた。

「レ、レナード様……?」

 女王の手には魔法の杖が握られていた。床に転がるレナードの首からドクドクと赤黒い液体が流れていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

拾った仔猫の中身は、私に嘘の婚約破棄を言い渡した王太子さまでした。面倒なので放置したいのですが、仔猫が気になるので救出作戦を実行します。

石河 翠
恋愛
婚約者に婚約破棄をつきつけられた公爵令嬢のマーシャ。おバカな王子の相手をせずに済むと喜んだ彼女は、家に帰る途中なんとも不細工な猫を拾う。 助けを求めてくる猫を見捨てられず、家に連れて帰ることに。まるで言葉がわかるかのように賢い猫の相手をしていると、なんと猫の中身はあの王太子だと判明する。猫と王子の入れ替わりにびっくりする主人公。 バカは傀儡にされるくらいでちょうどいいが、可愛い猫が周囲に無理難題を言われるなんてあんまりだという理由で救出作戦を実行することになるが……。 もふもふを愛するヒロインと、かまってもらえないせいでいじけ気味の面倒くさいヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより pp7さまの作品をお借りしております。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」

あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」 アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。 金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。 私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。

処理中です...