98 / 106
王都暗躍編
第92話 相談と紹介
しおりを挟む
熱い男の真剣な眼差しはエグイ程に鋭い。
そこまで強く見詰められるのは得意じゃないのだが。
相手がマッチョな男なら尚更だな。
フィルが影響を受けてマッチョにならない事を願うばかりだ。
「えーっと、折り入ってご相談したい内容はですね。」
フィルにも自然に視線を振る事で緊張を緩和させる。
「実は、我が社の荷馬車ばかりが狙われる事件がありまして。」
「ゴムノキ社ばかりを?」
「はい。意図的なものではないかと、護衛を増やし実行犯は捕まえる事が出来ました。」
「ほおう。それで?」
「実行犯を尋問した結果、黒幕の名前が挙がりました。」
「黒幕か。」
「ガル兄、誰だったの?」
「名前が出たのは、サン・ジューク男爵でした。」
「サン・ジューク男爵。貴族が裏で糸を引いていたの?」
「でも証拠は無いんです。チンピラの証言なんて何の力にもならない。」
「そうだろうね。サン・ジューク男爵か、あまり良い噂は聞かないが。」
「そうなんですか?」
「あぁ、元は教会でも高位の役職を代々務める家柄だったのだが、彼は素行が悪くてね。教会では芽が出ないと判断したのか、裏の力で爵位を得たなんて話もあるぐらいさ。」
「僕もあまり良い話は聞きませんが。動機は何でしょうか?彼の得になるとは思えないのですが。」
「おそらくだけど、さらに黒幕がいるんじゃないかと。」
「その可能性が高いだろうね。」
大旦那は黙って何かを考えているようだ。
フィルも腕を組んで唸っている。
「真の黒幕がいるのか。目的は何なのか。その辺りを明らかにするしかないですね。」
「そうだな。しかし相手が相手なだけに下手は出来ない。」
「サン・ジューク男爵もそう高をくくっているのだと思います。」
「その間に決定的な証拠を掴むしかないか。」
大旦那とフィルが策を講じていく。
2人とも冷静な顔をしているが、どこか楽しそうだ。
「問題は証拠をどうするかだな。」
「そうですね。証言だけでは弱いし、直筆の命令書なんてあるわけないでしょうし。」
「それなら俺に案があるんです。」
俺はリュックから魔導具を取り出して円卓の上に置いた。
「ガル兄、これは?」
「うちの爺ちゃんが生前に集めていた珍品の中から見つけた魔導具です。」
「ガルバンじい、よく変な物を集めてたもんね。」
「ほおう、あのガルバン式魔導ランプで高名なガルバン氏のコレクションか。」
「この特殊な魔玉でしか動かないのですが、この魔導具を使えばその場で起こった事を記録できるんです。」
「起こった事を記録って?」
大旦那もフィルも全く意味がわからないと言った顔だ。
それは仕方がない事だ。
この世界の文明からはぶっ飛んだ品なのだから。
実は、爺ちゃんのコレクションと言うのは真っ赤な嘘だ。
この魔導具は俺が作ったのだが、チート過ぎて周りが放っておかないと思ったので、嘘をつく事にしたのだ。
そのチート過ぎる魔導具と言うのはビデオカメラだ。
しかも録画した光景を投影する映写機能付きの優れものなのだ。
光と闇、さらには風の魔力を応用する事でなんとか実現できた。
ただし画質や音質は古いフィルムの映画ばりに粗いのだが十分だ。
難点は魔力消費量が激しいので星魔玉でも10分の撮影が限界だ。
さて、百聞は一見にしかず。
ビデオカメラを起動させ、フィルと大旦那に向けた。
「ガル兄、何をしているの?」
2人は状況が理解できず、顔を見合わせた。
「はい。これで記録できたぞ。クリオさん部屋の明かりを暗くしてくれますか?」
録画を止め、映写モードに持ち替える。
持ち方を変える事で持ち手に仕込んだ録画用と映写用のそれぞれの魔導回路が作動する仕組みにしてあるのだ。
クリオさんがランプを調整して部屋をうす暗くしてくれた。
「これを見れば分かってもらえるかと思いますよ。」
壁に向けてさっき録画した内容を映写する。
ざざっと雑音がするとフィルと大旦那が映し出された。
『ガル兄、何をしているの?』
さっきの光景が壁面に再現された。
「こ、これは。私なのか?」
大旦那が目を丸くして驚いている。
「すごい、僕の声が聞こえた!」
フィルは興奮して周りをきょろきょろしている。
やっぱりこの世界の文明にはチート過ぎたようだな。
「御覧のように、この魔導具を使えば確かな証拠が得られるかと。」
「ガル兄、すごいよ!どんな仕組みなの?」
「残念ながら仕組みがわからないんだよ。」
「そうなんだ。商品化すれば革命が起こったかもしれないのに。」
「それは確かに残念ではあるが、これなら証拠として間違いないだろう。」
「問題はどうやって証拠の現場を記録するか?ですね。」
「それなら私に当てがあるよ。」
大旦那は腕を組みなおした。
どうやら自信があるようだ。
「それはどんな方法なんですか?」
「腕利きの諜報員とのコネクションがあってね。帝都を拠点にしているのだが腕は一流だ。貴族令嬢の下着の数まで調べられると豪語しているよ。」
諜報員ってスパイの事だよな。
異世界のスパイか、なんかカッコいいな。
それにしてもなんて破廉恥なスパイなんだ。
そこまで強く見詰められるのは得意じゃないのだが。
相手がマッチョな男なら尚更だな。
フィルが影響を受けてマッチョにならない事を願うばかりだ。
「えーっと、折り入ってご相談したい内容はですね。」
フィルにも自然に視線を振る事で緊張を緩和させる。
「実は、我が社の荷馬車ばかりが狙われる事件がありまして。」
「ゴムノキ社ばかりを?」
「はい。意図的なものではないかと、護衛を増やし実行犯は捕まえる事が出来ました。」
「ほおう。それで?」
「実行犯を尋問した結果、黒幕の名前が挙がりました。」
「黒幕か。」
「ガル兄、誰だったの?」
「名前が出たのは、サン・ジューク男爵でした。」
「サン・ジューク男爵。貴族が裏で糸を引いていたの?」
「でも証拠は無いんです。チンピラの証言なんて何の力にもならない。」
「そうだろうね。サン・ジューク男爵か、あまり良い噂は聞かないが。」
「そうなんですか?」
「あぁ、元は教会でも高位の役職を代々務める家柄だったのだが、彼は素行が悪くてね。教会では芽が出ないと判断したのか、裏の力で爵位を得たなんて話もあるぐらいさ。」
「僕もあまり良い話は聞きませんが。動機は何でしょうか?彼の得になるとは思えないのですが。」
「おそらくだけど、さらに黒幕がいるんじゃないかと。」
「その可能性が高いだろうね。」
大旦那は黙って何かを考えているようだ。
フィルも腕を組んで唸っている。
「真の黒幕がいるのか。目的は何なのか。その辺りを明らかにするしかないですね。」
「そうだな。しかし相手が相手なだけに下手は出来ない。」
「サン・ジューク男爵もそう高をくくっているのだと思います。」
「その間に決定的な証拠を掴むしかないか。」
大旦那とフィルが策を講じていく。
2人とも冷静な顔をしているが、どこか楽しそうだ。
「問題は証拠をどうするかだな。」
「そうですね。証言だけでは弱いし、直筆の命令書なんてあるわけないでしょうし。」
「それなら俺に案があるんです。」
俺はリュックから魔導具を取り出して円卓の上に置いた。
「ガル兄、これは?」
「うちの爺ちゃんが生前に集めていた珍品の中から見つけた魔導具です。」
「ガルバンじい、よく変な物を集めてたもんね。」
「ほおう、あのガルバン式魔導ランプで高名なガルバン氏のコレクションか。」
「この特殊な魔玉でしか動かないのですが、この魔導具を使えばその場で起こった事を記録できるんです。」
「起こった事を記録って?」
大旦那もフィルも全く意味がわからないと言った顔だ。
それは仕方がない事だ。
この世界の文明からはぶっ飛んだ品なのだから。
実は、爺ちゃんのコレクションと言うのは真っ赤な嘘だ。
この魔導具は俺が作ったのだが、チート過ぎて周りが放っておかないと思ったので、嘘をつく事にしたのだ。
そのチート過ぎる魔導具と言うのはビデオカメラだ。
しかも録画した光景を投影する映写機能付きの優れものなのだ。
光と闇、さらには風の魔力を応用する事でなんとか実現できた。
ただし画質や音質は古いフィルムの映画ばりに粗いのだが十分だ。
難点は魔力消費量が激しいので星魔玉でも10分の撮影が限界だ。
さて、百聞は一見にしかず。
ビデオカメラを起動させ、フィルと大旦那に向けた。
「ガル兄、何をしているの?」
2人は状況が理解できず、顔を見合わせた。
「はい。これで記録できたぞ。クリオさん部屋の明かりを暗くしてくれますか?」
録画を止め、映写モードに持ち替える。
持ち方を変える事で持ち手に仕込んだ録画用と映写用のそれぞれの魔導回路が作動する仕組みにしてあるのだ。
クリオさんがランプを調整して部屋をうす暗くしてくれた。
「これを見れば分かってもらえるかと思いますよ。」
壁に向けてさっき録画した内容を映写する。
ざざっと雑音がするとフィルと大旦那が映し出された。
『ガル兄、何をしているの?』
さっきの光景が壁面に再現された。
「こ、これは。私なのか?」
大旦那が目を丸くして驚いている。
「すごい、僕の声が聞こえた!」
フィルは興奮して周りをきょろきょろしている。
やっぱりこの世界の文明にはチート過ぎたようだな。
「御覧のように、この魔導具を使えば確かな証拠が得られるかと。」
「ガル兄、すごいよ!どんな仕組みなの?」
「残念ながら仕組みがわからないんだよ。」
「そうなんだ。商品化すれば革命が起こったかもしれないのに。」
「それは確かに残念ではあるが、これなら証拠として間違いないだろう。」
「問題はどうやって証拠の現場を記録するか?ですね。」
「それなら私に当てがあるよ。」
大旦那は腕を組みなおした。
どうやら自信があるようだ。
「それはどんな方法なんですか?」
「腕利きの諜報員とのコネクションがあってね。帝都を拠点にしているのだが腕は一流だ。貴族令嬢の下着の数まで調べられると豪語しているよ。」
諜報員ってスパイの事だよな。
異世界のスパイか、なんかカッコいいな。
それにしてもなんて破廉恥なスパイなんだ。
0
お気に入りに追加
3,124
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?


異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています


巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。

異世界に飛ばされたけど『ハコニワ』スキルで無双しながら帰還を目指す
かるぼな
ファンタジー
ある日、創造主と言われる存在に、理不尽にも異世界に飛ばされる。
魔獣に囲まれるも何とか生き延びて得たスキルは『ハコニワ』という、小人達の生活が見れる鑑賞用。
不遇スキルと嘆いていたそれは俺の能力を上げ、願いを叶えてくれるものだった。
俺は『ハコニワ』スキルで元の世界への帰還を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる