魔具師になったら何をつくろう?

アマクニノタスク

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王都暗躍編

第92話 相談と紹介

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熱い男の真剣な眼差しはエグイ程に鋭い。
そこまで強く見詰められるのは得意じゃないのだが。
相手がマッチョな男なら尚更だな。
フィルが影響を受けてマッチョにならない事を願うばかりだ。


「えーっと、折り入ってご相談したい内容はですね。」

フィルにも自然に視線を振る事で緊張を緩和させる。


「実は、我が社の荷馬車ばかりが狙われる事件がありまして。」

「ゴムノキ社ばかりを?」

「はい。意図的なものではないかと、護衛を増やし実行犯は捕まえる事が出来ました。」

「ほおう。それで?」

「実行犯を尋問した結果、黒幕の名前が挙がりました。」

「黒幕か。」

「ガル兄、誰だったの?」

「名前が出たのは、サン・ジューク男爵でした。」

「サン・ジューク男爵。貴族が裏で糸を引いていたの?」

「でも証拠は無いんです。チンピラの証言なんて何の力にもならない。」

「そうだろうね。サン・ジューク男爵か、あまり良い噂は聞かないが。」

「そうなんですか?」

「あぁ、元は教会でも高位の役職を代々務める家柄だったのだが、彼は素行が悪くてね。教会では芽が出ないと判断したのか、裏の力で爵位を得たなんて話もあるぐらいさ。」

「僕もあまり良い話は聞きませんが。動機は何でしょうか?彼の得になるとは思えないのですが。」

「おそらくだけど、さらに黒幕がいるんじゃないかと。」

「その可能性が高いだろうね。」

大旦那は黙って何かを考えているようだ。
フィルも腕を組んで唸っている。


「真の黒幕がいるのか。目的は何なのか。その辺りを明らかにするしかないですね。」

「そうだな。しかし相手が相手なだけに下手は出来ない。」

「サン・ジューク男爵もそう高をくくっているのだと思います。」

「その間に決定的な証拠を掴むしかないか。」

大旦那とフィルが策を講じていく。
2人とも冷静な顔をしているが、どこか楽しそうだ。


「問題は証拠をどうするかだな。」

「そうですね。証言だけでは弱いし、直筆の命令書なんてあるわけないでしょうし。」

「それなら俺に案があるんです。」

俺はリュックから魔導具を取り出して円卓の上に置いた。


「ガル兄、これは?」

「うちの爺ちゃんが生前に集めていた珍品の中から見つけた魔導具です。」

「ガルバンじい、よく変な物を集めてたもんね。」

「ほおう、あのガルバン式魔導ランプで高名なガルバン氏のコレクションか。」

「この特殊な魔玉でしか動かないのですが、この魔導具を使えばその場で起こった事を記録できるんです。」

「起こった事を記録って?」

大旦那もフィルも全く意味がわからないと言った顔だ。
それは仕方がない事だ。
この世界の文明からはぶっ飛んだ品なのだから。
実は、爺ちゃんのコレクションと言うのは真っ赤な嘘だ。
この魔導具は俺が作ったのだが、チート過ぎて周りが放っておかないと思ったので、嘘をつく事にしたのだ。
そのチート過ぎる魔導具と言うのはビデオカメラだ。
しかも録画した光景を投影する映写機能付きの優れものなのだ。
光と闇、さらには風の魔力を応用する事でなんとか実現できた。
ただし画質や音質は古いフィルムの映画ばりに粗いのだが十分だ。
難点は魔力消費量が激しいので星魔玉でも10分の撮影が限界だ。
さて、百聞は一見にしかず。
ビデオカメラを起動させ、フィルと大旦那に向けた。


「ガル兄、何をしているの?」

2人は状況が理解できず、顔を見合わせた。


「はい。これで記録できたぞ。クリオさん部屋の明かりを暗くしてくれますか?」

録画を止め、映写モードに持ち替える。
持ち方を変える事で持ち手に仕込んだ録画用と映写用のそれぞれの魔導回路が作動する仕組みにしてあるのだ。
クリオさんがランプを調整して部屋をうす暗くしてくれた。


「これを見れば分かってもらえるかと思いますよ。」

壁に向けてさっき録画した内容を映写する。
ざざっと雑音がするとフィルと大旦那が映し出された。


『ガル兄、何をしているの?』

さっきの光景が壁面に再現された。


「こ、これは。私なのか?」

大旦那が目を丸くして驚いている。


「すごい、僕の声が聞こえた!」

フィルは興奮して周りをきょろきょろしている。
やっぱりこの世界の文明にはチート過ぎたようだな。


「御覧のように、この魔導具を使えば確かな証拠が得られるかと。」

「ガル兄、すごいよ!どんな仕組みなの?」

「残念ながら仕組みがわからないんだよ。」

「そうなんだ。商品化すれば革命が起こったかもしれないのに。」

「それは確かに残念ではあるが、これなら証拠として間違いないだろう。」

「問題はどうやって証拠の現場を記録するか?ですね。」

「それなら私に当てがあるよ。」

大旦那は腕を組みなおした。
どうやら自信があるようだ。


「それはどんな方法なんですか?」

「腕利きの諜報員とのコネクションがあってね。帝都を拠点にしているのだが腕は一流だ。貴族令嬢の下着の数まで調べられると豪語しているよ。」

諜報員ってスパイの事だよな。
異世界のスパイか、なんかカッコいいな。
それにしてもなんて破廉恥なスパイなんだ。
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