魔具師になったら何をつくろう?

アマクニノタスク

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王都暗躍編

第91話 大旦那

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王都へ無事に到着し、借りていた馬は馬車屋へ返却、車体は預かってもらう続きをこなす。
夕方になってしまったので急いで宿屋の確保をした。
リポポさんが馴染みの宿屋に口利きをしてくれたので助かった。
翌日は朝から教会へレナさんを見送りに行った。


「何か困った事があったら町へ来てくださいね。」

「ガルドさんには本当にお世話になりました。ピートの今後の事も、よろしくお願いします。」

「私も付いて行くから安心して。必ず無事に送り届けるから。」

「リポポさん、ありがとうございます。よろしくお願いします。」

「僕、強くなるから。レナさんも修行がんばってね。」

「ピート、ありがとう。付いて行けなくてごめんね。」

「大丈夫だよ。またいつか会えるよね?」

「ええ、立派になったピートに会えるのが楽しみだわ。」

最後にレナさんの笑顔を見る事が出来て安心した。
レナさんも強く生きていってくれる事だろう。

その後にロック商会へ訪問し、フィルと大旦那へのアポイントを依頼した。
予定が決まり次第、宿に連絡をしてくれるそうだ。
時間に余裕があるので、リポポさんにガイドしてもらい街並みを眺めながら散策した。
大通りからは少し離れた場所に屋台が集中している通りがあり、屋台通りと呼ばれている穴場にも連れて行ってもらった。
串肉や果実、色々なスープを売っている屋台まであった。
好きな物を買い食いしていると満腹になってしまった。
宿へ一旦戻ってみると、既に商会の伝言が届いていた。
早速、明日の朝に迎えが来てくれるそうだ。
俺は明日の準備にと部屋へ戻り、リポポさんとピートは鍛錬をすると出掛けていった。


「ガルドさん、朝ですよ。」

「んー。」

ピートに起こされて目を覚ます。
俺の布団の上でライコはまだ寝ていた。
精霊って寝る必要ないんじゃなかったっけ?
まぁ、可愛いから良いけど。
宿の食堂で朝食を済ませると丁度、商会からの迎えが来た。


「お待たせしました。」

「ガルド様、本日ご案内させて頂きます執事長のクリオです。」

「あっ、お久し振りです。」

「憶えて頂いているとは光栄です。」

初めてロック商会へ行った時にも対応してくれたクリオさんだ。
ザ・執事な洗礼された老紳士は朝から爽やかだ。
リポポさんとピートを巻き込みたくないので、別行動にしてもらった。


「あれ?クリオさん、そっちの道だと遠回りじゃないですか?」

「恐れ入ります。本日は内密な事柄という事で、別の場所をご用意させて頂いております。」

「そうなんですか。わざわざすみません。」

「いえ、ガルド様は当商会にとって特別な方ですので。」

「ははっ、そんな大層なものじゃないですよ。」

クリオさんに煽てられながら少し歩くと、細い路地へと入っていき、何度か曲がるとどこかの裏口へと辿り着いた。


「恐縮ですが、こちらからお入りください。」

ドアを開けてもらうと、高級そうな内装の廊下が続いていた。
クリオさんに先導され、廊下を歩くとカーペットはフカフカだった。


「こちらに会長とフィルが居ります。」

クリオさんがノックするとドアが開いた。


「ガル兄!待ってたよ、入って。」

人懐っこい笑顔でフィルが迎え入れてくれた。
部屋の中は品の良い調度品と大きな円卓があり、大柄な男性が向かいに座していた。
男性が立ち上がり、歩いて近づいてきた。
予想よりも大きい、身長が190センチぐらいか?
高級そうな服に身を包んでいるが、鍛え上げられた肉体が容易に想像できる。


「やぁ、君がガルドくんだね。初めまして、ロック商会会長のライト・ロックだ。」

色黒マッチョが白い歯を見せて握手してくる。
商人と言うより完全に熟練の冒険者な外見だ。
熱い握手を交わす。


「初めまして、ゴムノキ社で開発を担当していますガルドです。今日はお時間を頂き有難う御座います。」

「いやいや、フィルから話は聞いているよ。是非、会ってみたいと思っていたからね。」

「ガル兄はこちらの席へどうぞ。」

席に座ると見計らったようにクリオさんがお茶を運んで来てくれた。
紅茶も茶器も高級そうで持つ手が震えてしまいそうだ。


「まずは、我が商会と専売契約を結んでくれて有難う。とても良い商品で嬉しい限りだよ。」

「ブーツもサンダルも売れ行き好調だよ。帝都への出荷も増えているし、今後も増えそうな勢いだよ。」

「フィルの言う通り、帝都での評判も上々、昨今の帝都は服飾ブームだからね。サンダルのバリエーションを増やそうかと検討していた所だよ。」

「へぇ、帝都では服飾が盛り上がっているんですね。」

「ガル兄はハナハナってブランド聞いた事ない?」

「ん~。知らないな。」

「そっか。まぁ、女性向けが多いブランドだからね。ってガル兄!ハナハナのシャツを着てるじゃない!」

「えっ?このシャツ?」

「そうだよ。僕の目利きは騙せないよ!」

「そう言えば、前に王都の市で買ったシャツだな。」

「はっはっは、それは幸運だったね。滅多に人前に出ないからね、あの女性デザイナーは。」

そうか、確かハナさんって女性だったな。自分でデザインしているって言ってたし。


「ガル兄は相変わらずだね。それで相談ってどうしたの?」

「あぁ、その事なんですが。」

大旦那の表情が一変し、真剣な目の商談モードに切り替わった。
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