魔具師になったら何をつくろう?

アマクニノタスク

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北の森のダンジョン編

第90話 魔術師と魔導師

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タイヤがパンクするハプニングはあったものの、早めの朝に出発していたお蔭もあり、1日で一気に中継点の宿屋に到着する事が出来た。
以前に来た時よりも店が増えている印象だ。
料理が美味しかった記憶があるので、前と同じ宿屋した。
そこの女将さんに話を聞いてみたら、最近は人も物資の流れも増えてとても忙しいらしい。
サイモンの町と王都の商流が活性化された結果だろう。
そうなれば、またそこで新たな商機が生まれてより賑わう。
この中継点もいずれは村や町へ発展するかもしれないな。


「ピートも遠慮せず、たくさん食べなよ。」

「うん。ありがとうございます。」

「私もここのチキン好きなんです。ガルドさんも通ですね。」

「いえいえ、以前に乗り合わせた冒険者の方に教えてもらったんです。」

みんなでチキンの丸焼きに齧り付く。
なぜだろう前世でカニを食べていた時のように、全員が黙々と食べ続けている。
小さな骨があるからかな?
レナさんには丸々1羽は量が多かったようで、ピートへ分けてあげていた。
こうして傍から2人を見ていると仲が良い姉弟みたいだ。


「なんだか2人は姉弟みたいですね。」

「え!?私とピートがですか?」

「はい。優しいお姉さんと元気な弟って感じですよ。」

「そ、そんな。私は優しくなんて・・・」

「私も少し思ってました。ピートには兄弟いるの?」

「うん。姉さんがいます。」

「そうか、なら心配しているだろう。」

「う~ん、姉さんはレナさんと違って厳しいから。戻ったら怒られるかも。」

「ははっ、大丈夫だよ。無事だったんだから。」

「私たちも付いているから大丈夫よ。」

食事を済ませたので、部屋に戻って明日に備える事にする。
部屋は2人部屋が2つ取れた。
当然、俺とピートの男組とリポポさんとレナさんの女組だ。
そう言えば俺にはまだ仕事が残っていた。
ゴムタイヤをチューブ式からカバー式に改造しておかなければ。
明日のお尻が痛くなってしまう!
ピートには先に寝ているようにと言ってから、宿の裏に停めておいた馬車からタイヤを外し、邪魔にならない場所で作業を始めた。
タイヤ1つずつをまずは精製スキルで不純物を取り除き、人形製作ドールメイクで成形し直した。
車輪をゴムで覆うだけの簡単なカバー式のタイヤだ。
手持ちの材料が無いので緩衝材もほぼ無いが、パンクしたタイヤよりはマシだろう。
新しいタイヤを取り付けてから部屋へと戻った。


「おかえりなさい。」

「なんだ、まだ寝てなかったのか?」

「うん。練習してた。」

「練習って?」

「この足でも、なんでも出来るようにならなきゃって。僕も強くなるんだ!」

「そうか。なら頑張らないとな!」

「うん。」

「だけど、明日も早いから、ちゃんと休む時は休まないとダメだぞ。」

ピートがちゃんと寝たのを確認して、俺も瞼を閉じた。


次の日、馬車は王都へ向けて走っている。
昨日よりも揺れと衝撃は強くなってしまったが、タイヤ無しの馬車に比べれば快適と言っても良いだろう。
この日もピートは御者台のリポポさんの隣で馬の扱いを教えてもらっている。
俺も何もしないのは勿体ないので、レナさんに魔法について教えてもらった。


「へぇ、レナさんの職業は侍祭なんですね。それで回復魔法が使えるんですか。」

「実は、回復魔法は俗称なんです。魔法ではなくて、神の奇跡と教義ではされています。」

「へぇ、そうなんですか。」

「自分の魔力を捧げて、小さな奇跡を頂く。そう教えられています。」

「教会の方は全員が奇跡を起こせるんですか?」

「いえ、どちらかと言えば少ないですね。適性なのか、その辺りがよく魔法と混同される原因でしょうか。」

「確かに魔法と似てますね。そう言えば、魔術師と魔導師は何が違うんですか?」

「名前は似ていますが、全然違いますよ。」

レナさんに教えてもらった内容はこうだ。
魔術師は決められた方法に則って術を使用する。
職業スキルは魔力錬成と魔術が基本で、あとは適性によって魔法陣や早詠みなどレアなスキルが発現する事もあるそうだ。
対して、魔導師は魔力の扱いに長けた者が就ける職業だそうだ。
魔力を操り、術式化まで出来る魔導師も中にはいるそうだ。
職業スキルの基本は魔術師と同じだが、魔力合成や術式化など、個性的な魔法の使い方が出来る事が多いらしい。
俺が精霊魔導師なのは面倒にならないように秘密にして、第二職業が精霊魔術師だと伝えておいた。
第二職業には驚かれたが、大王角を倒した現場に居合わせていたので、逆に納得されてしまった。
精霊魔術師については、レナさんもあまり詳しくないそうなので、町に帰ったらニモ婆さんにでも聞いてみようと思う。
有意義な時間を過ごしていると、馬車の走るスピードが緩まった。


「ガルドさん、そろそろ王都に到着しますよ。」

夕暮れになるにはまだ早い。順調に到着した証だ。


「さてと、ここからが俺の仕事の本番だな。」

気合を入れて格好よく立ち上がった。
俺の行動が王都で巻き起こる一大事件へと繋がってしまうなんて、この時には全く想像もしていなかった。

ガッタン

「あ、痛てっ!!」

「ガルドさん、馬車の中で立つと危ないですよ。」

俺の頭には大きなたんこぶが・・・小さな奇跡で何とかならないでしょうか?
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