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北の森のダンジョン編
第88話 獣人の少年
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ダンジョン攻略から5日後、俺は王都へと向かった。
我が社の荷馬車を襲わせた黒幕がサン・ジューク男爵だと吐かせたまでは良かったが、相手が貴族となると我々の手には負えないので、ロック商会の大旦那に相談させてもらうのだ。
馬車は以前に購入したゴムタイヤ装着のマイ馬車を走らせている。
ちなみに馬は馬車屋からのレンタルだ。
御者はリポポさんが名乗りをあげてくれたし、その横には兎耳の少年も一緒にいる。
座席には俺とレナさんの2人だけ。
なぜにこんな珍しいメンバーなのかと言うと、その訳は3日前に遡る。
「それじゃあ、猛獣使いの当てが見つかったんですね。」
「おうよ、食品問屋の紹介でな。独立するんで移住を考えてるらしい。」
「この町に来てもらえるといいですね。」
ゴードンさんとの打ち合わせの帰りにバンズさんの食材屋へと寄り道していた。
食材を買って、世間話をしていると熱望していた猛獣使いの話になったのだ。
この話が上手くいけば、酪農によって食文化がもっと豊かになる。
つまりは、もっと美味しい物が食べられるようになるのだ。
そんな垂涎寸前の妄想をしながら店を出て、道を歩いていたので、うっかり女性とぶつかりそうになってしまった。
「きゃ!」
「おっと、すみません。」
ギリギリの所で衝突は避けられた。ヒラリと躱し、ジュルッと涎を隠した。
「すみません。すみません。」
ペコペコと頭を下げる青髪の女性。
「あれ、レナさんじゃないですか。」
「えっ、あっ、ガルドさん。」
「考え事をしていて、すみませんでした。大丈夫でした?」
「はい、大丈夫です。私の方こそ不注意で、すみません。」
レナさんはあの後からずっと獣人の少年の看護をしている。
サラから聞いたのだが、少年の名前はピートだそうだ。
ジャックさんの治療所にいるので看護の必要はないのだが、レナさん本人が望んでそうしている。
罪の意識を抱え込んでしまっているようにも見える。
「ピートも順調に回復しているそうですね。」
「はい。失った右足は戻りませんが。」
かなり気にしている様子だな。
少し痩せてしまっているみたいだし。
「俺も明日、お見舞いに行きますね。協力できる事があるかもしれませんので。」
「ありがとうございます。あっ、私ももう行かないと。」
深く頭を下げると彼女は町の雑踏へと消えていった。
2人を救う手助けを俺にも何か出来ないだろうか。
家に帰り、夕飯を食べながら、この事をサラに話すと、一緒にお見舞いに行きたいと言っている。
リポポさんもピートの事を気にしていたそうなので誘ってみる事に決めた。
翌日、スミスさんの工房にいたリポポさんに声をかけると、一緒に行きたいと言ってくれたので、ジャックさんの治療所へと同行する。
「リポポさん、新しい剣はどんなのにするんですか?」
「慣れている細身の剣でオーダーしたわ。スミスさんは良い鍛冶師ね。」
「スミスさんは腕も良いし、優しくて良い人ですよ!」
「そうよね。紹介してもらえて良かったわ。ありがとう。」
雑談している間に到着した。
助手のメアリーに事情を説明してピートの部屋へと案内してもらった。
ジャックさんが診察中らしいのだが、経過観察だけなので問題ないそうだ。
「ジャックさん、こんにちは。」
「よー、ガルド。活躍しているらしいな。」
「ぼちぼちやらせてもらってます。」
世間話を交えながら、ピートの具合について教えてもらった。
怪我や疲労からはすっかりと回復したそうだ。
レナさんが毎日、回復魔法でサポートしていたらしい。
しかし、右足は元に戻らない。
欠損部を再生させる回復魔法なんて無いらしい。
右足の膝から下を失ったピートだが、今日からは杖をついての歩行訓練も出来るそうだ。
「ジャックさん、相談があるんですけど。」
「どうした?」
「俺にピートの義足を作らせてくれませんか?」
「なるほど。義足か。」
「これを見てもらえますか?」
俺は背負っていたリュックから1枚の羊皮紙を取り出して広げた。
「ほお、設計図ってやつか。俺も義足を見た事はあるが作るのは初めてだな。」
「とりあえず簡易的ですけど、こんな感じにしようかと。」
ゴム製のソケットに木製の足が付いている簡単な構造だ。
拘れば関節も作れるのだが、まずは簡易な物で義足に慣れてもらおう。
ゆくゆくはピートの要望に応じてカスタムしていく方が良いだろうと考えた。
ジャックさんの許可も出たので、ピートに義足を作る事の説明をした。
不安そうな顔をしていたが、レナさんやリポポさんが励ましてくれたお蔭で、ピートの不安も拭えたようだ。
作業自体はピートのサイズを計測すれば、後は俺の固有スキルで各パーツを成形するだけだ。
設計図を描いてイメージも出来ているし、俺の魔力量も増えているので問題はない。
固有スキルだと気付かれないとは思うが、念の為に加工スキルで作っていると装っておこう。
さくっと義足を作り上げると、早速ピートの足へと装着してみた。
ゴム製のソケットに足を入れて、革のベルトで締めるだけだけど。
「痛い所はある?」
「んー。大丈夫です。」
ジャックさんの補助を受けて、ピートがベッドからゆっくりと立ち上がった。
支えられながらも懸命に慣れない義足を使って歩こうとしている。
最初はフラフラだった歩みも少し練習をすれば1人で歩けるようになってしまった。
ピートのセンスが良いのか、獣人はバランス感覚まで凄いのか。
ゆっくりとだが自分の力で歩いているピートには自然と笑みが生まれていた。
我が社の荷馬車を襲わせた黒幕がサン・ジューク男爵だと吐かせたまでは良かったが、相手が貴族となると我々の手には負えないので、ロック商会の大旦那に相談させてもらうのだ。
馬車は以前に購入したゴムタイヤ装着のマイ馬車を走らせている。
ちなみに馬は馬車屋からのレンタルだ。
御者はリポポさんが名乗りをあげてくれたし、その横には兎耳の少年も一緒にいる。
座席には俺とレナさんの2人だけ。
なぜにこんな珍しいメンバーなのかと言うと、その訳は3日前に遡る。
「それじゃあ、猛獣使いの当てが見つかったんですね。」
「おうよ、食品問屋の紹介でな。独立するんで移住を考えてるらしい。」
「この町に来てもらえるといいですね。」
ゴードンさんとの打ち合わせの帰りにバンズさんの食材屋へと寄り道していた。
食材を買って、世間話をしていると熱望していた猛獣使いの話になったのだ。
この話が上手くいけば、酪農によって食文化がもっと豊かになる。
つまりは、もっと美味しい物が食べられるようになるのだ。
そんな垂涎寸前の妄想をしながら店を出て、道を歩いていたので、うっかり女性とぶつかりそうになってしまった。
「きゃ!」
「おっと、すみません。」
ギリギリの所で衝突は避けられた。ヒラリと躱し、ジュルッと涎を隠した。
「すみません。すみません。」
ペコペコと頭を下げる青髪の女性。
「あれ、レナさんじゃないですか。」
「えっ、あっ、ガルドさん。」
「考え事をしていて、すみませんでした。大丈夫でした?」
「はい、大丈夫です。私の方こそ不注意で、すみません。」
レナさんはあの後からずっと獣人の少年の看護をしている。
サラから聞いたのだが、少年の名前はピートだそうだ。
ジャックさんの治療所にいるので看護の必要はないのだが、レナさん本人が望んでそうしている。
罪の意識を抱え込んでしまっているようにも見える。
「ピートも順調に回復しているそうですね。」
「はい。失った右足は戻りませんが。」
かなり気にしている様子だな。
少し痩せてしまっているみたいだし。
「俺も明日、お見舞いに行きますね。協力できる事があるかもしれませんので。」
「ありがとうございます。あっ、私ももう行かないと。」
深く頭を下げると彼女は町の雑踏へと消えていった。
2人を救う手助けを俺にも何か出来ないだろうか。
家に帰り、夕飯を食べながら、この事をサラに話すと、一緒にお見舞いに行きたいと言っている。
リポポさんもピートの事を気にしていたそうなので誘ってみる事に決めた。
翌日、スミスさんの工房にいたリポポさんに声をかけると、一緒に行きたいと言ってくれたので、ジャックさんの治療所へと同行する。
「リポポさん、新しい剣はどんなのにするんですか?」
「慣れている細身の剣でオーダーしたわ。スミスさんは良い鍛冶師ね。」
「スミスさんは腕も良いし、優しくて良い人ですよ!」
「そうよね。紹介してもらえて良かったわ。ありがとう。」
雑談している間に到着した。
助手のメアリーに事情を説明してピートの部屋へと案内してもらった。
ジャックさんが診察中らしいのだが、経過観察だけなので問題ないそうだ。
「ジャックさん、こんにちは。」
「よー、ガルド。活躍しているらしいな。」
「ぼちぼちやらせてもらってます。」
世間話を交えながら、ピートの具合について教えてもらった。
怪我や疲労からはすっかりと回復したそうだ。
レナさんが毎日、回復魔法でサポートしていたらしい。
しかし、右足は元に戻らない。
欠損部を再生させる回復魔法なんて無いらしい。
右足の膝から下を失ったピートだが、今日からは杖をついての歩行訓練も出来るそうだ。
「ジャックさん、相談があるんですけど。」
「どうした?」
「俺にピートの義足を作らせてくれませんか?」
「なるほど。義足か。」
「これを見てもらえますか?」
俺は背負っていたリュックから1枚の羊皮紙を取り出して広げた。
「ほお、設計図ってやつか。俺も義足を見た事はあるが作るのは初めてだな。」
「とりあえず簡易的ですけど、こんな感じにしようかと。」
ゴム製のソケットに木製の足が付いている簡単な構造だ。
拘れば関節も作れるのだが、まずは簡易な物で義足に慣れてもらおう。
ゆくゆくはピートの要望に応じてカスタムしていく方が良いだろうと考えた。
ジャックさんの許可も出たので、ピートに義足を作る事の説明をした。
不安そうな顔をしていたが、レナさんやリポポさんが励ましてくれたお蔭で、ピートの不安も拭えたようだ。
作業自体はピートのサイズを計測すれば、後は俺の固有スキルで各パーツを成形するだけだ。
設計図を描いてイメージも出来ているし、俺の魔力量も増えているので問題はない。
固有スキルだと気付かれないとは思うが、念の為に加工スキルで作っていると装っておこう。
さくっと義足を作り上げると、早速ピートの足へと装着してみた。
ゴム製のソケットに足を入れて、革のベルトで締めるだけだけど。
「痛い所はある?」
「んー。大丈夫です。」
ジャックさんの補助を受けて、ピートがベッドからゆっくりと立ち上がった。
支えられながらも懸命に慣れない義足を使って歩こうとしている。
最初はフラフラだった歩みも少し練習をすれば1人で歩けるようになってしまった。
ピートのセンスが良いのか、獣人はバランス感覚まで凄いのか。
ゆっくりとだが自分の力で歩いているピートには自然と笑みが生まれていた。
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