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北の森のダンジョン編
第84話 精霊契約
しおりを挟む「何をそんなに慌てておるのじゃ?」
「そ、それはですね。このままだとトラちゃんが消えちゃうかもしれないからでして!」
「なんじゃ、そんな事か。」
女王様の無遠慮な言葉が俺の怒りを煽る。
「そんな事って!!」
「其方ら人間は第二職業とか言われておる、特有の能力を持っておるのだろう?」
「えっ!?そうですけど。」
確かに職業は人族、つまり人間や獣人やエルフにとって共通の能力なのだが。
第二職業に就けるのは人間だけだと聞いている。
この世界では職業と言うのは、神が与える役割なのだと信じられている。
獣人の身体能力やエルフの魔力などに比べて、基本的な能力で劣る人間を不憫に思った神が人間に与えた能力が第二職業なんだそうだ。
「ならば精霊魔術師となって、その精霊と契約を結べば良かろう。先の試練で其方の条件は既に満たしておるだろう?」
「えっ?」
俺は慌てて自分のレベルを確認してみた。
すると俺のレベルが40に上がっている。
「レベルが上がっています。」
俺が驚きの声を上げると、女王様はニヤリと片方の口角だけを上げた。
まさか・・・俺を精霊魔術師にする為に女王様は試練を与えたのか?
さっきの裁判がどうのとかのやり取りは建前上の茶番だったと言うのか!?
色々と言いたい事はあるが、敢えて飲み込もう。
俺も大人なのだから。それに今はそれ所ではない。
「しかし、どうやって第二職業に就けば。ここには教会なんて無いでしょうし。」
「それなら心配無用じゃ。妾が仲介してやろう。」
「そんな事までできるのですか?」
「当然じゃ。人族よりも神に近い存在の精霊族じゃぞ?しかも王なのじゃぞ?」
「そ、そうなのですか。それならお願いします。」
「うむ、良かろう。跪いて目を瞑るが良い。」
理屈は分からないが、自信があるみたいなので、お任せする事にした。
言われた通りに女王様の前で跪いてから目を瞑った。
目を瞑っているが、目の前が明るくなった感覚がする。
体が暖かな魔力?に包まれたように感じる。
女王様は俺には分からない言語で詠唱を続けている。
俺はこのまま何もしなくて良いのかな?って思った時に、目の前の明るさが元に戻った。
体の暖かさも徐々に消えていった。
「よし、終わったぞ。」
「あれ?もう終わったんですか?」
俺がゆっくり目を開けると、胸を張る女王様がいらっしゃった。
下から見上げる女王様の豊かな双丘は眼福です。
「其方は面白い存在じゃのう。」
「えっ!何がですか?見てないですよ!?」
「まだ見ておらぬのならば、ステータスを見てみるが良い。」
危ない。盗み見がバレたのかと思ったよ。
早速、自身のステータスを確認してみる。
個体名 ガルド
年齢 20歳
種族 人間族
レベル 40
職業 魔具師
第二職業 精霊魔導師
職業スキル(魔具師)
解析 魔改造 精製 加工
第二職業スキル(精霊魔導師)
魔力練成 魔術 精霊契約 魔力合成
固有スキル
人形製作
耐性
雷属性
称号
覚醒者 発明家 ゴーレムマスター 蟻キラー
「本当だ。第二職業に就いてる。精霊魔導師だって。」
「そうじゃ。精霊魔術師かと思ったが、選択肢に精霊魔導師があったからの、それにしたのじゃ。」
「へぇ、他にはどんな選択肢があったんですか?」
「興味がないものは忘れたの。」
「そ、そうですか。」
「精霊魔導師と言うのも珍しい。面白い人間じゃな。」
魔術師と魔導師では何が違うのだろうか?
詳しそうな人に今度聞いてみよう。
「これで俺はトラちゃんと契約ができるのですか?」
「うむ。スキルを使うが良い。」
それでは早速、トラちゃんの正面に立ってスキルを使ってみるとする。
「精霊契約。」
俺とトラちゃんの体が発光しだした。
俺の胸の辺りから光の糸がシュルシュルと伸びた。
同じくトラちゃんからも光の糸が伸びており、1本の糸に纏まった。
すると糸がハートの形になって赤く光った!
何だこれ!フィーリングカップル的なやつですか!?
若い人にはもう伝わらないやつですよ?
『契約が成立しました。』
「ふむ。契約成立じゃな。」
「みたいですね。」
するとトラちゃんの体が黄色く輝き始めた。
光が強く目を開けていられない。
『契約精霊が中級精霊へと昇格しました。』
「えっ?昇格?何だって!?」
「ほほう。これまた面白い。」
光が収まり、俺はゆっくりと瞼を上げた。
「えっ?猫??」
俺の目の前には虎柄の猫が空中に浮いている。
「ガウ!!ガウ!!」
違う違うと首を振っている。
「おそらく、虎なのではないかの?」
「ガウ!!」
ウンウンと頷いている。
子供の虎ぐらい?なので猫かと思ったよ。
これが新たなトラちゃんなのか?
なかなか可愛いじゃないか!
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