魔具師になったら何をつくろう?

アマクニノタスク

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北の森のダンジョン編

第83話 女王様の試練

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魔法陣から姿を現したのは、巨大なスライムだった。
公園によくあるジャグルジムぐらいかな?
プルンとしたゼリーのような体を震わしている。


「このスライムを倒せば、俺は無罪にしてもらえるのですか?」

「うむ。ルールは無用じゃ、存分に死合うが良い。」

「分かりました。では、いきます。」

俺は腰のホルスターからケルベロスを抜くと、3連同時発射のフルファイヤーを放った。
速攻最大火力だ。
予想ではスライムの体を貫通して、風穴を空けるはずだった。
しかし、実際は少し凹んだ程度でポヨンと音がすると元に戻ってしまった。


「マジかよ・・・。」

トラちゃんが蔓を抜け出そうと奮闘する。


「ほう。そちも助太刀に入りたいのか。宜しい、許可しよう。」

絡まっていた蔓が解かれた。
トラちゃんは雷槍で突進する。
スライムの体内へ雷槍の刃が入っていく。
すぐに勢いはなくなり、止められた。
スライムにダメージの反応は無い。


「打撃も斬撃もダメそうだな。」

よくあるパターンのやつだと、体内の核を攻撃すれば効くはずなんだけど。


「トラちゃん、放電は?」

スライムの体内に青い電光が迸る。
半透明なので花火みたいで綺麗だ。
そしてスライムはプルプルしている。
ちょっとだけ痺れた感じか?


「これもダメっぽいな。」

困ったな。結構手強い相手だ。
俺はどうしたものかと、思案していた。
するとスライムが大きく揺れると液体を飛ばしてきた。


「しまった!」

範囲が広い。これでは回避は不可能だ。
そう思った瞬間に、トラちゃんが俺の前に飛び出した。
両手の平に仕込んだ風のブースターを起動させ、液体を吹き飛ばす。


「トラちゃん!!」

それでも全ての液体を防ぐ事は出来なかった。
トラちゃんのボディに液体がかかる。
ジュワッと音と煙を立てて溶けた。


「うげっ!やっぱり酸かよ。トラちゃん大丈夫か?」

トラちゃんの鎧が溶けて、中の素体まで少し溶けてしまっている。
くそっ、あんなに苦労して作ったのに!


「トラちゃん、あんまり無理をするなよ。」

動けない程ではないみたいだけど、また酸を浴びるとヤバそうだ。
俺は覚悟を決めて突撃を開始する。
右手のケルベロスを強く握りしめて、スライムへと突っ込んで行く。
思いっきり振りかぶり、銃口をスライムの体内へとブチ込む。


「ファイヤー!」

ケルベロスを発射させるが何も起きない。
スライムは俺を弾き飛ばした。


「ぐわ、ぐえ、ぐへ、ぐお。」

弾かれて後方へと転がされてしまった。
這いつくばったままで、銃口の先を確認する。
ヌメっぽい物が付着し、湿っている。
やはりスライムの体内は水分が多いみたいだ。


「これでも食らってろ!」

スライムにビリリ玉を投げつける。
ピリピリと奴が痺れている間に、トラちゃんの元へと移動する。


「トラちゃん、雷槍を!」

雷槍を受け取って、急いで魔改造を施す。
形状は変えずに魔導回路を書き換える。
慌てて設定したけど上手く作動するかな?
少しだけ起動させてみる。


「うわっち!」

思わず手放してしまった。
この威力なら上手くいくかもしれない。
そうこうしている間にビリリ玉の効果が切れてしまった。
スライムがすごく低いが跳ねながらこちらへと近付いて来る。
その巨体で俺たちを押し潰すつもりか?


「トラちゃん、この槍をスライムに投げてぶっ刺してくれ。」

トラちゃんは槍を受け取ると、ブースターで大きく跳んだ。
スライムの体を蹴って、真上へと再度ブースターを放つ。
スライムの真上まで到達すると、落下の勢いを加えスライムの脳天へと槍を投げ下ろす。


「これで決まってくれ!」

槍の半分以上がスライムの脳天に突き刺さった。
キーンっと澄んだ音が響き、槍が青白く光る。


「よし、上手く発動した。」

スライムは跳ねる動きを止めた。
プルプルと震えていたが、その動きも止まった。
パキッパキっと音を立ててスライムの内部から凍り付いていく。


「うっし。」

俺は勝利を確信して、小さくガッツポーズを決めた。
トラちゃんがスライムの上に着地する。
その時にはもうスライムは完全に凍っていた。


「ふーむ。勝負ありじゃな。」

女王様が顎に手を当てて頷いている。


「トラちゃん、お疲れ!」

戻って来たトラちゃんとハイタッチを交わす。
その時、反対側の左腕が取れて落ちた。


「うわっー!トラちゃん!!」

酸が関節部分にかかってしまっていたのか?
左肩から先の腕が千切れてしまっている。


「ふむ。凍っておるの。」

凍ったスライムをコツコツとノックする女王様。


「其方は変わった魔法を使うのだな。」

「いえ、これは魔法ではなく魔導具です。」

「ほう、これが魔導具か。」

俺は正直、それ所ではなかった。
早くトラちゃんのメンテナンスをしなければ!
もしもゴーレムの札や魔玉部分に酸がかかってしまっていたら、精霊としてのトラちゃんが消えてしまうかもしれない!
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