魔具師になったら何をつくろう?

アマクニノタスク

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北の森のダンジョン編

第81話 ダンジョンの後で

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少し走った先に空間の裂け目の様に境界が広がっていた。
その境界の先は元の北の森。
ダンジョンの入り口があった場所とは別の場所だった。


「ここは。北の森か?」

「そうみたいですね。森の深部ぐらいでしょうか?」

「あっ!リポポさん、それ!!」

サラがリポポさんの頭の上を指差した。
頭のキノコ笠にグレートホーンのツノが刺してあった。


「リポポさん。それって・・・。」

「グレートホーンの角ですよ。」

リポポさん、いつの間に。
それにしても、頭のキノコに刺さなくても。


「リポポさん、強そうです!グレートホーンみたいです!!」

ドヤ顔のリポポさんを見てられない。


「そうだ。これはレナさんに渡しておきます。」

雷鳴の剣の柄を手渡す。


「あ、これは・・・。」

「それから、これはその子に使って下さい。」

残りの回復薬を手渡す。
失った右足が生えてくる事はないが、体力や傷なら回復できる。これで意識が戻れば良いのだが。


「ありがとうございます。」

レナは深く頭を下げて、少年へと駆け寄る。
俺たちも一旦、状況を確認しよう。


「師匠!レベルが3つも上がりました!!」

「おっ、俺も3つ上がってる!」

「私は4つ上がりました!!」

これで俺がレベル38、サラがレベル36、リポポさんはレベル35になった。
俺のダメージもさっきの回復薬でほぼ回復している。
これなら町まで戻るのも大丈夫だろう。


「そう言えば、これはどうしようか?」

俺はポケットにしまっていた宝珠を取り出す。


「適性があれば特殊な魔法を覚えられるそうですが。ガルドさんはどうですか?」

「うーん。何の反応もないみたいです。リポポさんは、どうですか?」

リポポさんに宝珠を手渡す。


「残念ながら、私もダメそうです。」

「私も試してみたいです!」

サラが宝珠を受け取った。
すると、宝珠が淡く光って反応した。


「わっ!これは!?」

「サラに反応したのか!?」

「頭の中で声が聞こえます!」

「なんて言ってるんです?」

「魔力の吸収を開始しますか?って!」

「リポポさん、良いですか?」

「ええ、私にはこれがあるから。」

頭の角を指差して笑うリポポさん。


「すみません。御礼は出来るだけしますので。」

頷く事でサラへと合図をする。
サラも頷いてから目を瞑った。
宝珠からサラへと光が広がり、包み込む。
やがて光はサラに吸収されていった。
目を開けて、瞬きをするサラ。


「サラ、大丈夫か?」

「はい。何ともないです!」

「宝珠はどうなった?」

「手に持っていたんですけど、消えちゃいました!」

「これで特殊な魔法を得たんでしょうか?」

聞いていた情報だと、アイテムボックスみたいな魔法のはず。


「サラ、試しにこの小石を収納できるか?」

「やってみます!」

サラの手の平に小石を乗せる。
サラが念じると、小石が消えた。


「おぉ!本当に消えたぞ!」

「すごいですね。」

「出す事もできます!」

手の平に小石が音も無く現れた。


「おぉー!これは便利だな。」

「不思議な魔法ですね。」

「サラ、どれくらい収納できそうか分かるか?」

「うーん。いっぱい入りそうです!」

その辺の詳しい事はこれから検証の余地があるな。


「あ、あの。この度は、助けて頂いて本当にありがとうございました。」

振り返ると、レナが少年に肩を貸して立っていた。
少年が意識を取り戻したのか。


「いえ、俺たちの都合で居合わせただけです。そちらの少年は大丈夫ですか?」

「はい。何とか意識を取り戻してくれました。」

少年は怯えたような目をしている。
奴隷として虐げられていたからだろうか。


「君も、これからは強く生きなさい。」

リポポさんが少年に近付いて声をかける。


「うん。」

消え入りそうな小さな声で頷く少年。


「よし、それじゃあ、町へ戻ろうか。」

「そうですね。色々と報告もしなければいけませんし。」

「それじゃあ、出発しましょう!」

町へと帰還するため、歩き出そうとした。
その時、俺の足下に光の魔法陣が現れた。


「えっ?なんだこれ?」

「ガルドさん!?」

「きゃっ!トラちゃん!!」

トラちゃんの足下にも同じ魔法陣があった。
それを見たのを最後に視界が揺らぐ。


「えっ、えっ、師匠!?」

「ガルドさんが・・・消えた?」

俺とトラちゃんは、魔法陣に吸い込まれる様にして、姿を消してしまったようだ。
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