魔具師になったら何をつくろう?

アマクニノタスク

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北の森のダンジョン編

第76話 北の森のダンジョンその3

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俺は小さくガッツポーズをした。


「師匠!危ない!!」

サラの声に振り向いた。
眼前には剣を振りかぶったゴブリンが迫っていた。
あぁ、これはヤバイ。
避ける事も防御も間に合わない。
俺はもうダメだと本気で思った。


「ギャギャー!」

ゴブリンの叫びと共に振り下ろされる剣。
斬られた。
そう思って、強く目を瞑った。


「大丈夫?」

「えっ?」

女性の声がして、驚いて目を開けた。
足下にはゴブリンが倒れている。


「斬られてない?」

自分の体を触って確かめる。


「師匠!無事ですか!?」

サラが周囲の雑魚を倒しながら駆け寄って来る。


「サラ、どうなった?」

「その人が、間一髪で助けてくれたんです。」

「そうなんですか?」

「偶然ですよ。たまたま近くのゴブリンが貴方を狙ったから。」

「それでも。有難う御座いました。リポポさん?」

「ええ、貴方はガルドさんで良かったですか?」

「えっ、俺の事を知ってるんですか?」

「クラナと話してるのが聞こえていたから。獣人は耳が良いんです。」

そう言って、頭のキノコ笠を脱ぐリポポ。
大きな狐耳が飛び出した。
栗色の茶髪は肩で切り揃えられたショートカットで和風な美人顔に狐耳が付いている。
ベージュ色の民族衣装のアオザイみたいな服装なので、キノコ笠を被ると巨大なキノコに見えてしまう。


「師匠!こっちを手伝って下さーい!」

周りのゴブリンを片付けていたサラが声を上げる。


「あぁ、悪い!リポポさん、御礼はまた後でさせて下さい。」

「気にしないでいいよ。」

俺もケルベロスで残ったゴブリンを狩っていく。
他の冒険者たちも優勢を取り戻した様だ。
程なくして、ゴブリン軍団の一掃が完了した。
しかし、冒険者たちの被害も大きい。
負傷した者、亡くなってしまった者。
多くの冒険者が撤退の準備をしている。


「あっ!リポポさんがいましたよ!」

「さっきは本当に有難う御座いました。」

「いえいえ、こちらこそ。ガルドさんがジェネラルを倒してくれなかったら、私たちは全滅してたかもしれませんから。」

「リポポさんのパーティーは無事だったんですか?」

「私は、いつもソロなんです。」

「えっ!1人でここまで来たんですか!?」

「はい。1人旅が長かったので。」

「そうなんですか。ここからは、どうするんですか?また1人で進むんですか?」

「うーん。もう少し行けそうだから、行ける所まで進んでみます。」

「それなら、俺たちと一緒に行きませんか?良ければですけど。」

「私も!リポポさんと一緒に行きたいです!師匠を助けて貰った御礼もしたいですし!」

「ふふっ。何だか楽しそうですね。それじゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな。」

「はい!一緒に行きましょう!!」

リポポさんが仲間になった。
他の冒険者たちは撤退するか、休憩をしてから進むらしい。
俺たちはまだ余裕があるので前進する。
すぐ先には境界があった。
第6階層を進んで行くが、特に問題はなかった。
いや、さっきまでよりも順調だ。
流石は腕利きの冒険者、獣人特有の聴力で索敵し、常に危険を回避して誘導してくれている。
リポポさんのお陰で探索は順調に進む。
サクサクとゴブリン供を倒して第7階層まで到達した。
ここでは剣と鎧を装備したナイトゴブリンが5体まとめて現れた。しかし、この程度なら俺たちの敵にはならない。
サクッと退治して、ここらで休憩にする。


「そろそろ休憩にしましょうか?」

「そうですね。周りも安全そうですし、休める内に休んでおきましょう。」

「それならご飯にしましょう!」

「じゃあ、俺が作るよ。サラはお茶を淹れて。」

「私も手伝いますよ。」

「いえいえ、リポポさんは座ってて下さい。せめてもの御礼がしたいんです。」

「あっ、じゃあ。コレも使える?」

リポポさんが袋から取り出したのは、キノコだった。


「これって、キノコ?」

「そう。キノコです。」

「キノコって食べられるんですか!?」

「中には危ない物もあるけど。美味しいキノコもたくさんあるんですよ。」

「へぇー!そうなんですね!!」

「帝都では割と食べられているんですが、王都では食べる習慣がなかったみたいですね。」

「じゃあ、俺が料理しちゃいますね。」

「調理法は分かる?焼くだけでも美味しいけど。」

「多分、大丈夫です。」

だって、見た目がエリンギなんですもの。
これはバターで炒めるしかないでしょう!
固焼きパン用にと思って持って来たバターが、こんな形で役に立つとは。
手早く鍋で炒めてみる。
エリンギのバターソテー独特の良い香りが広がる。


「うー。美味しそうな香りがしますね!」

「本当に。私もこんなに良い香りがするキノコ料理は初めてです。」

ふっふっふっ、飽食の時代を生きた俺だ。
食文化のレベル差を見せ付けてやろう!
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