77 / 106
北の森のダンジョン編
第72話 ダンジョンの準備
しおりを挟む「こんにちは~って、おわっ!」
武具屋に入って、すぐ側にキリサさんが座り込んでいた。
「こんな所で、どうしたんですか?」
「疲れたのよ~。朝から冒険者の人達が押し掛けてきてぇ。」
なるほど。ダンジョンへ向かう前に準備をする為に武具屋へ大勢の冒険者が来ていたのか。
「それは大変でしたね。スミスさんは工房ですか?」
「ええ、サラちゃんと何か作っているわ。」
「それじゃあ、お邪魔します。」
奥へ進もうとすると、カウンターにはキリカさんが突っ伏していた。
「キリカさんも、お疲れ様でした。」
「サイズ調整ばっかり。もう今日は嫌よ!」
「ははは。大変でしたね。」
これは今日はもう開店休業状態だな。
カウンター横の出入り口から工房へとお邪魔する。
鍛治仕事のリズミカルな音が聞こえる。
「スミスさん、こんにちは。」
「あっ、師匠!」
「順調か?」
「はい!問題ないです。」
「試作品から大きくは変わっていないからな。それに仕上げと調整はサラ嬢がやってくれるしな。」
「はい!パーツの製作はもうすぐ終わりそうです。」
「そうか、今日中に完成まで出来そうか?」
「うー。今日は厳しいです。調整とテストがあるので、早くても明日かと。」
「そうか。なら、明後日から俺たちもダンジョンに潜るぞ。」
「えっ!ダンジョンですか?」
「おいおい、ガルド。冒険者達が言ってたが、例の森の主が相手だろ?大丈夫なのか?」
「無理はしないつもりです。」
「それでもダンジョンは危険な場所だ。準備は入念にして行った方が良いぞ。」
「はい。分かりました。」
「私もこの新型銃を完璧に仕上げます!」
「うん。ここは頼んだぞ。俺は物資の準備とトラちゃんの点検をしに戻るよ。」
「任せてください!」
後は2人に任せて工房を後にする。
まずは物資の買い出しだな。
そのままの足でゴードンさんの道具屋へと向かう。
「ゴードンさん、こんにちは。」
「よう、ガルド。」
「ゴードンさん、なんか疲れてますね。」
「あぁ、朝から忙しかったからなぁ。やっと落ち着いた所だ。」
「ゴードンさんの所もですか。って事は商品は残ってないですか?」
「いや、ちょうど昨日に仕入れが届いたからな。少ないが残っているぞ。」
「良かった。俺もダンジョンに潜ろうと思いまして。」
「なんと!お前さんも行くのか。気を付けろよ。」
「はい。必要な物を揃えようと思っているんですけど、教えて貰えますか?」
「あぁ、いいぞ。」
ゴードンさんに冒険用の必需品を揃えて貰った。
水筒やランプは持っているので要らないか。
寝袋やテント布、それから大きめのバックパックも買っておこうか。
調理器具はあるけど、木製の軽い食器類は新調しておこう。
それから素材などを入れる大小の袋にロープ、手拭いも新しいのを買って行くか。
「こんな物ですかね?」
「そうだな。食料も忘れずに持って行くんだぞ。」
「分かりました。後でバンズさんの所で調達します。」
「あぁ、それから。薬草や回復薬も忘れずにな。」
「あっ、そうですね。マルチの所にも寄ります。」
サラの分も買ったので荷物が多い。
一旦、家に戻るか。
荷物を置いて空のバックパックだけ背負って、また出掛ける。
まずは先にマルチの薬屋から行くか。
「こんにちは~。」
薬屋のドアを開けて中を伺う。
「はーい。いらっしゃいませー。」
どうやらマルチは元気なようだ。
「あら、ガルドくん。いらっしゃい。」
「マルチの店は忙しくなかったの?」
「忙しかったわよぉ~。疲れちゃったから、さっき回復薬を調合して飲んだのよ。」
「あぁー、なるほどね。どこも大変だったみたいだね。」
「そうみたいね。ガルドくんは、どうしたの?」
「俺もダンジョンに挑戦しようと思ってね。薬草と回復薬を買いに来たんだよ。」
「まぁ、そうなの?気を付けてね。それなら良い薬を用意するわね。」
「頼むよ。それから魔力を回復する薬もあるかな?」
「そうねぇ、魔力回復薬は強い薬だから1日1回までにしておいてね。」
回復薬の取り扱いについて教えてもらい。
薬草を5束、解毒草を3束、回復薬を6本、魔力回復薬を2本、どれ位あれば良いのか分からないけど、取り敢えずこれだけ購入した。
回復薬が少なくなったら迷わず撤退しよう。
マルチにお礼を言って、次はバンズさんの食材屋へと向かう。
「へい、いらっしゃい。」
「バンズさんは、相変わらず元気ですね。」
「店主の威勢が良くないと、食材も美味そうに見えないだろ?」
「なるほど。確かにそうですね。」
「今日は何にするよ?」
「今日はダンジョンに潜る為の保存食が欲しいんですよ。」
「ほぉーう、ガルドもダンジョンに挑戦するのか。それなら俺が見繕ってやろう。」
「お願いします。」
「何日ぐらい潜るんだ?」
「どれくらいですかね?無理はしないつもりです。」
「なら多めに5日分にしとくか?」
「じゃあ、それでお願いします。」
バンズさんに保存食を用意してもらう。
固焼きパン、干し肉、干し芋、乾燥ハーブとどれもあまり美味しそうではない。
なかなか辛い戦いになりそうだ。
0
お気に入りに追加
3,124
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?


異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています


巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。

異世界に飛ばされたけど『ハコニワ』スキルで無双しながら帰還を目指す
かるぼな
ファンタジー
ある日、創造主と言われる存在に、理不尽にも異世界に飛ばされる。
魔獣に囲まれるも何とか生き延びて得たスキルは『ハコニワ』という、小人達の生活が見れる鑑賞用。
不遇スキルと嘆いていたそれは俺の能力を上げ、願いを叶えてくれるものだった。
俺は『ハコニワ』スキルで元の世界への帰還を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる