魔具師になったら何をつくろう?

アマクニノタスク

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北の森のダンジョン編

第69話 新技術と新型銃

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次の日は丸1日、研究に没頭してしまった。
だって、遂に出来てしまったのだから。
俺が考えていた闇の魔力の応用が実現したのだ。

闇の魔力の性質は吸収であると、俺は考えている。そしてその性質を応用して作ったのがこの装置だ。
見た目は何の変哲も無い魔玉を搭載した魔導回路だ。しかし、魔導回路の素材は銀で作られている。キラリと光るメタリック感が格好良い。
この装置は使用者から直接、体内の魔力を吸収する仕組みになっている。
つまり、魔導具を魔玉の魔力ではなく、自らの魔力で使用する事が可能になるのだ。
では、なぜ魔導回路に魔玉が搭載されているのかと言うと、魔力を吸収する為に闇の魔力を発動する時の動力と、使用者自身の魔力が尽きてしまった場合の予備動力源とする為だ。

これは今までの魔導具の在り方を一新してしまう発明だと言っても過言では無いだろう。
しかし、この装置が普及するのは難しいだろう。
まずは銀素材を多く使うのでコストが高くなり過ぎる。そして魔導回路が複雑化するので回路を設定するのにも、かなりの魔力が必要となる。そもそも闇の魔力を扱える魔術師さえも希少なのに、魔具師となれば尚更だろう。
ちなみに銀素材を使用している理由は、魔力の伝導率が高く、処理速度も速かったからである。実験の結果、複雑な魔導回路を鉄素材で設定すると、魔力に無駄が多く、最悪の場合では発動しない時もあった。

そんな理由で、この技術は俺の道楽の為に使わせてもらおうと思う。
取り敢えずはケルベロスの魔導回路をこれに入れ替えよう。そうすれば、今まで以上に乱発しても魔力の残量を心配する必要も減るだろう。
後は、サラの為の新型銃にも使えるのではないだろうか。


「そう言えば。お腹減ったな。」

昨日は何も食べてなかったしなぁ。
冷蔵庫を開けてみる。


「野菜スープの残りか。これでいいや。」

簡単に食事を済ませてしまうと、お茶を飲んで一息つく。


「師ーー匠ーーー!!!」

家の玄関の方から、サラの大きな呼び声が飛び込んで来た。


「師ー匠ー!師匠!師匠!師匠!!!」

「おいおい、騒がしいな。どうしたんだよ?」

「師匠!出来たんですよ!?」

「何が?」

「何がって、新型銃の構造に決まってるじゃないですかぁ!」

「おぉ!前にスミスさんと相談してたやつだな!?」

「はい!さっき試作品が出来上がった所なんです!!それで師匠を呼びに来ました!」

「マジか!よし、早速行くか!」

「はい!」

サラと慌ててスミスさんの工房へと移動した。


「スミスさん、こんにちは。」

「よう、ガルド。来たな。」

スミスさんが自信ありげな顔をしている。
期待しても良いのではないだろうか。


「早速ですけど、試作品を見せてもらっても良いですか?」

「あぁ、これだよ。」

手渡されたのは見た目はまさに拳銃だった。
サイズはすこし大きいかなと思うぐらい。
ズシリと手に伝わる鉄の重量感が堪らない。


「凄いですね!見た目はイメージ通りです。」

「師匠、こんなもんじゃないんですよ!」

サラが自慢げにニヤリと笑うと、俺の手から試作品を奪い取った。


「ここをこうすると、ほら!」

「おぉー!」

リボルバー部分が横に飛び出した。
これは確か、スイングアウト式だっけ?
リボルバータイプの拳銃と言えば、こうして弾倉を横にずらして弾を補充するイメージなんだよなぁ。
これなら弾倉部分に仕込む魔導回路のメンテナンスも格段にし易くなるだろう。


「良いですね!凄いですよ、これ。」

「ふっふっふっ、師匠、まだあるんですよ。」

「なーにー!?まだ何かあるの?」

スミスさんの顔を見てもニヤニヤしているだけだった。


「今は空砲ですけど、トリガーを引けば発射されて、このように、連動してリボルバーが回転するんです!」

サラが説明しながら実演して見せた。
確かに、トリガーを引くとガチャリと音を立ててリボルバーが1発分、自動で回転した。


「おぉー!すげぇー!!格好良いー!」

「ですよね!?格好良過ぎですよね!?」

「あぁ、かなり良く出来た仕掛けが作れたな。」

「凄いっすね。スミスさん。」

「いや、俺は手伝った程度だ。サラ嬢ちゃんがお前のイメージを元に考え抜いてくれたんだよ。」

「えっへん。褒めてください!」

「そうか。良くやったな、サラ。さすがは俺の弟子だ。」

「わぁー!初めて師匠に褒められました!!」

初めてだろうか?
あんまり褒めた記憶はないけど。
でも、それだけの成果を出してくれた。
師匠としてはとても喜ばしい事だ。


「スミスさん、この試作品を借りてっても良いですか?これなら凄い銃が作れそうです。」

「あぁ、勿論だ。サラ嬢ちゃん用の銃なんだろう?良い物を作ってやりな。」

「はい!よし、じゃあサラ。今から工房へ戻って新型銃の製作を始めよう。」

「はい!」
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