72 / 106
北の森のダンジョン編
第67話 黒幕
しおりを挟む「う~ん。むにゃむにゃ。」
「師匠!!そろそろ起きないと会議に遅れますよ!」
「うん。分かってるよ、うん。」
「早く支度してくださいよー!」
寝惚けた頭を覚醒させていく。
どうにも朝は苦手だ。これは前世から変わらずなのだ。朝が得意な人と何が違うと言うのだろうか?
どうでも良い事を考えていると。
「師~匠~~!」
「はーい!もう起きたよ。すぐに準備するから!」
どうにも、うちの弟子は口うるさい母親のようだ。
まぁ、それだけ面倒見が良いと言う事かな。
身支度を整えたので、冒険者ギルドへと向かう。
「サラは今日もスミスさんの所へ行くのか?」
「はい。会議が終わった後にお邪魔する予定です!」
「迷惑にならない程度にしとけよ。」
「はーい!」
冒険者ギルドに到着すると、クラナが出迎えてくれた。今日は3階のギルドマスターの部屋で話し合うそうだ。
クラナに案内してもらい部屋に入ると、メンバーは既に揃っていた。俺が最後のようだ。
「これで揃ったのう。では早速だが皆に集まって貰ったのは、報告したい事があるからじゃ。」
「荷馬車襲撃の件ですね?」
ゴードンさんが片眉を上げて見やる。
「そうじゃ。実行犯に尋問した結果、この件には黒幕がおったようじゃ。」
「やっぱりそうか。」
スミスさんがポツリと呟いた。
やはりあんな小悪党の犯行だなんて誰も思っていなかったんだな。
「爺さん、それで誰が黒幕なんだい?」
「尋問の結果、出てきた名前なんじゃがのう。かなりの大物じゃった。」
「爺さん、勿体つけずに教えてよ。」
「あぁ、その黒幕とはのう。サン・ジューク男爵じゃ。」
周りの皆は目を見開いて驚いている。
「さんじゅうく?誰それ?」
どうやら俺だけそいつを知らないようだ。
「し、師匠。サン・ジューク男爵と言えば王都でも名家の貴族ですよ!?」
「そうじゃ。それに洗礼を受けた教会の関係者としても高位の人物じゃ。」
「へぇー、有名人なんだね。」
「そうじゃな。知らない方がビックリじゃ。」
「それにしても。そんな大物がなんで荷馬車なんか襲わせたんだろうね?」
「そうじゃな。その辺りは下っ端共には知らされてなかったようじゃ。」
「それは厄介ですね。原因が分からねば対策も立てようが無いですよ。」
ゴードンさんが頭を抱えてしまった。
「それにのう。更に問題があるんじゃ。」
「えぇ、まだあるんですか?」
普段は冷静なキリカさんまで取り乱している。
「うむ。昨日なんじゃが、北側の森でダンジョンが発見された。」
「えっ!ダンジョン!!」
俺は思わず食い付いてしまった。
異世界と言えばダンジョンでしょう!
やっぱり1度くらいは行ってみたいと思っていたのだ。
「それはまた厄介だな。冒険者ギルドとしてはどうするおつもりで?」
「うむ。幸いにも発見が早く、まだ若いダンジョンだそうじゃ。」
「では、魔物の氾濫の危険性は低そうですね。」
「そうじゃな。なので冒険者ギルドとしてはダンジョンの攻略を優先し、ボス討伐はしないつもりじゃ。」
「そうですね。その方が魔石や素材など、ダンジョン資源が手に入りますからね。」
爺さんとスミスさんの話についていけない。
どうするかは見識のある人達に任せよう。
「では、ダンジョンは冒険者達に内部の攻略を。森周辺の調査は狩人達に依頼を出すとしよう。」
「問題はサン・ジューク男爵ですね。」
苦い顔をしてゴードンさんが呟く。
「相手の目的が分からないなら調べるしかないんじゃない?」
「ガルド、相手は貴族様じゃぞ?」
「それなら同じ貴族様に相談するしかないよ。ゴードンさん、ウィルへ手紙を用意して貰える?」
「あぁ、それは構わないけど。なんて書くんだい?」
「ロック商会の大旦那と面会をお願いして欲しいんだ。」
「ガルド、大丈夫なのか?相談しても味方して貰えるとは限らんのじゃぞ?」
「うん。それは分かってる。」
「むしろ貴族同士の関係性次第ではお主の身が危うくなるんじゃぞ?」
「うん。だから俺が行くよ。俺なら世間知らずの若造が暴走したって事で片付けやすいだろ?」
「ガルド・・・」
「それに、俺にも考えがあるしね。」
「ふむ。無理はしてくれるなよ?」
「うん。大丈夫だよ。」
「ならば、そちらはガルドに任せよう。ゴードンはウィルとの連絡を頼むぞ。」
「分かりました。」
今日の会議はこれで終了。
お昼をかなり過ぎてしまったな。
でも、爺さんにはまだ相談しないといけない事もあるし、ダンジョンについても教えて欲しい。
「爺さん、この後に昼飯でもどうだい?たまには奢ってよ!」
「なんじゃ?珍しいのう。別に奢ってやらん事もないが。」
「よし、じゃあ決まりね。」
0
お気に入りに追加
3,124
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?


異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。


巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる