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北の森のダンジョン編
第63話 在りし日の戦士
しおりを挟む「ハイロさんに、ジャックさん!」
俺は思わず2人の名前を呼んだ。
「えっ!ハイロにジャックだって!!」
隣のマッチョ冒険者は更に驚きの声を上げた。
「まさか・・・切り裂きジャックと剛力のハイロなのか!!」
マッチョ冒険者は目を見開き、口をパクパクさせていた。
「ほぉっほぉっ、彼奴らめ年甲斐もなく暴れよって。昔の血が騒いだのかのぉ。」
サイモンの爺さんが白髭を撫でながら目を細めている。
「爺さん、切り裂きジャックと剛力のハイロって?」
「おいおい。何言ってんだ、あんた!一昔前なら知らない奴はいないぐらい名の通った人達だぞ!?俺の憧れの冒険者なんだよ!!」
「へぇー、そうなの?爺さん。」
「ふむ。やや大袈裟じゃが、そんな感じじゃったかのぉ。」
「敵対する奴は瞬く間に切り刻むクレイジーなナイフマスター、切り裂きジャック。それに、身の丈より巨大な大剣を軽々と扱い、敵をミンチにする剛力のハイロ。まだまだ現役でやれるんじゃないのか?」
マッチョ冒険者は解説しながら、純真な少年の様に憧れの視線を送っていた。視線の先では今日のヒーローがたくさんの人達から賞賛されている。
「なぁ、爺さん。あの3人を取り調べるんだろ?また何か分かったら教えておくれよ。」
「あぁ、そうじゃな。厳しく追及するつもりじゃ。分かり次第、会議を開くつもりじゃ。」
「わかった。」
俺はジャックさんとハイロさんに手を振ってみた。2人は気付いたみたいで、手を挙げて応えてくれた。
マッチョ冒険者は自分に向けられたものと勘違いしたのか、感動で目が潤んでいた。
俺は大人しくその場を離れ、家へと帰った。
その夜。
ゆっくりとお風呂に入って、のんびりと思考を巡らせる。
生活水準もかなり改善されてきた。
武器も強化できて狩りでも困っていない。
ステータスも。
個体名 ガルド
年齢 20歳
種族 人間族
レベル 34
職業 魔具師
職業スキル(魔具師)
解析 魔改造 精製 加工
固有スキル
人形製作
耐性
雷属性
称号
覚醒者 発明家 ゴーレムマスター
蟻キラー
「あれ?いつの間にか20歳になってる!」
うっかり自分の誕生日を忘れていたよ。
今度パーティーしないとなぁ!
それからアイアンアントや草原でも色々な魔物を倒したから、レベルがかなり上がっている。
レベル40になれば第二職業に就けるし、そろそろどんな職業にするかも考えておくべきだろう。
それから帝都や他の土地にも行ってみたいしなぁ。それなら冒険する事になるよなぁ。
俺には野営や索敵など、冒険の知識も経験も無い。このままでは難しいだろう。
第二職業を冒険向きの職業にするか?
願わくば快適な冒険をしたい!
それも視野に入れて準備をしておかないとな。
「師~匠~。お風呂長いですよぉー。私もその後に入るんですよー!」
サラから苦情が届いた。
どうやら長湯が過ぎたようだ。
お風呂から上がるとサラが待ってましたと入れ替わりでお風呂場へと入っていく。
俺は湯上がりに冷えたエールを頂く。
この快適な生活を冒険中も維持したい。
人間の欲望とは底無しなのだ。
その後は工房で武器とトラちゃんのメンテナンスを済ませ、構想中の新しい銃の構造を羊皮紙に描いてみる。
「うーん、やっぱりここの可動部分が難しそうだなぁ。俺にもイメージ出来てないし。」
図を眺め、腕を組んで唸っていると、サラがお風呂から上がってやって来た。
「何を唸ってるんですか?」
「う~ん。これだよ。新型の銃の構造。」
「あっ!今日、言ってた私の銃ですか!?」
「そう。なかなか詳細なイメージが出来なくてね。」
「すごーい!これが私の銃!!うふふふ。」
サラの変なスイッチが入ったみたいだ。
両手で図を持って眺めながら、クルクル回ってほくそ笑んでいる。
「まぁ、まだまだ構想中ってとこだな。明日にでもスミスさんと相談してみよう。」
「あぁー早く会いたいなぁー。」
「おーい、サラ。聞いてるかぁー?」
「うふふふふ。楽しみだなー。」
「こりゃダメだな。俺は先に寝るぞ。」
「うふふふふ。」
工房からはしばらく不気味な笑い声が止む事は無かった。
俺はサラに新しい銃を作る約束をした事を後悔しながら眠りについた。
しかし、これが彼女の才能を開花させる切っ掛けになろうとは、夢にも思っておりませんでした。
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