魔具師になったら何をつくろう?

アマクニノタスク

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北の森のダンジョン編

閑話 乙女の夜会

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ふぅー。これで上手くいくはず。
今日で仕上げてみせるわ!


「サラちゃん。遅くまで悪いねぇ。」

「あっ、リンダさん!いえいえ、今日で仕上げますから!」

「ありがとね。あとで美味しいご飯作るからね。」

「わぁー!ありがとうございます。」

サラは最後の調整をして無事に大型の冷蔵庫を完成させた。
そしてサラを労う遅めの夕飯を一家で囲む。
家族の食卓は笑いの絶えない楽しい時間だった。そんな当たり前の幸せを少女は噛み締めていた。


「2人とも、部屋にお湯を用意しといたからね、体を清めてからお休み。」

「ありがとうございます!」

「寝巻きはリィナのを置いておいたよ。」

「うん。それじゃあ、私の部屋に行こっか。お父さん、お母さん、おやすみなさい~。」

「ご馳走様でした!おやすみなさい。」

「あぁ、おやすみ。」

宿屋の夜は遅く、朝は早い。
父と母はこれから明日の支度をしてから床に就く。


「わぁ~、サラちゃん肌がすごく綺麗。」

「えっ、そんなリィナちゃんもじゃない!」

「白くてスベスベしてる~。」

「く、くすぐったいよ!」

「それに胸も綺麗。いいなぁ~。」

「リィナちゃんの方が大っきくて羨ましいよぉ。えいっ、仕返し!」

「きゃー!やめて、くすぐったい~。」

乙女達の無邪気な戯れはもう少し続く。
世の男子が見れば鼻血を流し、足下には血溜まりが出来ていたかもしれない。


「それじゃあ、ちょっと狭いけど私のベッドで一緒に寝ましょう。」

「ごめんね、寝巻きまで貸してもらっちゃって。」

「ううん。サラちゃんとお泊りなんて大歓迎よ!」

「ありがとう!」

「じゃあ、明かり消すね。」

「うん。」

夜の闇が部屋に広がり、静寂が乙女達を優しく包み込んだ。
疲れた身体を休ませるべく、乙女達は眠りにつ・・・けなかった。


「ねぇ、サラちゃん寝た?」

「ううん、まだ。」

お泊まり会のお約束、パジャマトークが始まった。


「サラちゃんは好きな人とかいるの?」

「えっ!好きな人はいないかなぁ。」

「ガルドさんは?」

「ええぇ!師匠は、師匠だし。」

「でもぉ、ガルドさんは若いしお金持ちだし、狙ってる娘もいるよぉ?」

「そ、そうなんだ。確かに師匠は天才だし、お金もたくさん稼いでるからモテるのも納得です。」

「でしょ~。サラちゃんはそれでいいのぉ?」

「わ、私は、師匠の足下にも及ばないし、不釣り合いだよ。」

「それは関係ないわ!サラちゃんは可愛いんだから、自信持たなきゃ!」

「そうかなぁ~?」

「サラちゃんがそんななら、私がガルドさんのお嫁さんにして貰おうかなぁ~。」

「えっ!リィナちゃんは師匠が好きなの?」

「ふふっ、嫌いじゃないわよ?昔はちょっと頼りない感じだったけど、優しかったし、今じゃとっても頼りにるし好物件よね!」

「師匠って昔は頼りなかったの!?意外です。」

「そうねぇ。クレアさんが亡くなってからは、無理に明るく振る舞っているみたいだったし、その後にガルーラさんが旅に出てからは無気力っぽくて心配だったなぁ。」

「クレアさんって師匠のお母様で、ガルーラさんがお父様?」

「うん。お父さんとガルーラさんは仲が良くて、若い時に少しだけ一緒に冒険もしたそうなの。お父さんから聞いたガルーラさんとクレアさんの出会いがロマンチックなの!」

「えー!聞きたい。」

「それがね。」


若き日のガルーラとハイロ。
冒険者に憧れて、未知なる砂漠を目指し旅に出た。
草原に入って3日、猛獣や強そうな魔物を避けつつも、旅に限界を感じていた。
そんな時、全滅寸前のパーティと遭遇した。
2人は急いでパーティに加勢して、何とか魔物を撃退した。
しかし、受けた傷は深く、パーティは僧侶の女性しか助からなかった。
ガルーラも女性を庇った時に額へ大きな傷を負っており、生き残った3人は命からがら町まで戻って来た。


「その時の僧侶の女性がクレアさんで、その後すぐに2人は恋に落ちたの。身を呈して守って貰うなんて素敵よねぇ。」

「うん。お父様は今はどちらへ行かれてるの?」

「それが。10年ぐらい前にクレアさんが病気で亡くなって、それからすぐに旅に出ちゃったの。クレアさんは元々、砂漠に住む民族だったそうで、故郷に還してあげたいって。」

「そうだったんだ。」

「ガルバンお爺ちゃんも亡くなっちゃった時には、私も本当に心配だったけど、今はサラちゃんが傍に居てくれてるから安心かな。」

「師匠にそんな過去があったなんて。」

「最近のガルドさんは笑顔が自然だし、それはサラちゃんが傍に居るからだと思うわ。」

「そんな事は、ないと思うけど。」

「それに、最近のガルドさんはちょっとエッチだしね。」

「そうなの!!この前もね、私の下着を見ちゃうし、いつ買ったんだ?なんて聞くのよ!?」

「ふふっ、私も胸に視線を感じる時があるかなぁ~。」

「もぉ~、師匠ったら!」

乙女の夜会はまだまだ続く。
翌日、2人は寝坊をするのだが、両親はそれもお見通し、前夜にしっかりと支度をしていたのだ。
そこでもまた、家族の愛を感じたサラであった。
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