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北の森のダンジョン編
第56話 お風呂を作ってもらおう
しおりを挟む女王蟻の討伐から20日。
ついに我が家にもお風呂場が完成した。
大工のゲンガーさんにお願いして、一部増築する形で作ってもらったのだ。
建物と同じ煉瓦造りの構造だが、内装は全てタイル張り、排水の事も考えて設計してもらっている。ちなみに余談だがトイレはボットン式だ。やっぱり水洗式が良いが、それは町の基礎工事からやり直さなければ難しそうなので諦めている。
換気についても天井付近に隙間があるので自然と換気されるだろう。ダメなら換気扇みたいな魔導具を作ろう。
後は肝心の浴槽。
これは拘りたいので自作するのだ。
事前に選んでおいた大きな岩を浴室内へ運んでおいてもらい、壁や天井を完成して貰った。そして今からこの岩を加工して浴槽を作るのだ。
「さてと、それじゃーやりますか!」
一人で気合を入れて作業に取り掛かる。
サラはリィナの所へ冷蔵庫を作りに行っているのでいない。リィナの所は食堂をやっているので大型の冷蔵庫と冷凍庫を希望された、大型は運ぶのが大変なので現場で組み立てる方法を取っている。ここ何日かはリィナの所で頑張っているそうだ。
俺も負けてられないな!
まずは加工スキルで岩の大きさを整える。
鋸でギコギコと岩を切るのは不思議な感じだ。
適した大きさになったら、人形製作で浴槽の形にしてしまう。
耐久性が分からないので少し厚めにしておこう。
形が出来たら実際に入ってみて、背もたれや底面の角度を調整する。拘るポイントはココですな。リラックス出来る形で決定する。
足を伸ばして入れる程ではないが、1人で入るには十分な大きさの浴槽が出来た。
最後に表面をスベスベになるように人形製作スキルを使う。
「よし、これで完成だ!」
相変わらず便利な固有スキルのお陰で満足の行く浴槽が作れた。
切って余った岩は捨てに行き、用意しておいたシャワーヘッド型の魔導具を壁面に取り付ける。王都で使ったシャワーを参考に自作しておいたのだ。温度調節が可能な優れ物だ。
そして浴槽にお湯を入れるための魔導回路を設定する。お湯の量のイメージが掴めなかったので、何度も調整し直した。ここはお湯の温度は固定にしておいた。
シャワーで一度、壁面や浴槽のゴミや埃を洗い流す。そして、外の排水の様子も確認する。
「うんうん。良いんじゃないか!」
問題なさそうなので、早速一番風呂を頂く。
懐かしい感覚に身心ともに解されていく。
シャワーの使い勝手も良好だ、水圧の調整も可能ならもっと良いな。後で改良しておこう。
「やっぱりシャンプーが欲しいなぁ。」
この町には水浴びや体を拭く習慣しかないので、衣服や食器を洗う石鹸はあるが、髪を洗うシャンプーはないのだ。
蜂蜜シャンプーとか聞いた事あるけど。
王都とかではどうなんだろう?
ゴードンさんに聞いてみるか。
「あぁ~さっぱりしたぁ~。」
湯上りに冷やしておいたエールを飲む。
ゴッキュ ゴッキュ
「ぷっはぁー、こりゃ美味い!!」
至極の瞬間と言っても過言ではあるまい。
これだけでもお風呂を作った甲斐があるね。
窓からは夕日が射し込んでいる。
意外と時間が経っていた。それだけお風呂を楽しんだと言う事か。
折角だし、夕食をリィナの所で食べるか。
ついでにサラを迎えに行くとするかな。
ラフな服装に着替えを済ませる。
白のボタンシャツに緑のカーゴパンツ、ポケットに物を沢山入れるので革のサスペンダーをするのが最近のお気に入りなのだ。
フィルにお願いして、この町にも王都の衣服を仕入れて貰っている。お陰で町のみんなの衣服もかなり向上してきた。
今や褌はダサいと言われるまでに成長している。町が豊かになっている証拠だろう。
「あ、ガルドさん!いらっしゃーい!!」
「やぁ、リィナ。食事をおすすめでいいかな?」
「はい。こちらへどうぞ。サラちゃんを呼んできましょうか?」
「まだ作業してるのかな?だったらいいよ。」
「今日も頑張ってくれてますよ。じゃあ、食事の用意をして来ますね。」
サラはしっかりと頑張っているそうだ。
今日は1人で夕食を済ませた。
食後のお茶を飲んでいると、サラがやって来た。
「師匠、今日は泊まっても良いですか?」
「ん?ここに泊まるのか?」
「はい!後少しで仕上がりそうですし、リィナちゃんとお泊まり会をする約束なんです!!」
「そっか、分かった。しっかりと仕上げて来いよ。」
「はい!ありがとうございます!!」
リンダさんにサラの事をお願いしておいて食堂を後にする。
サラとリィナが楽しそうに見送ってくれた。
なんだかちょっと寂しい。
今日は趣味の時間に没頭するかな。
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