魔具師になったら何をつくろう?

アマクニノタスク

文字の大きさ
上 下
56 / 106
北の森のダンジョン編

第52話 蟻狩り

しおりを挟む

「師匠、また来ました!今度は3匹です。」

サラが警戒の声を上げた。
前方の洞窟の奥からアイアンアントが迫ってくる。


「トラちゃん任せた。」

トラちゃんは大槌を構えて走り出す。
バチッと電気を帯びた大槌を振りかぶり、横薙ぎに振るう。

ドゴッ

2匹の蟻が巻き込まれ、そのまま感電死した。
逃れた1匹は俺が雷槍で突き、スタンさせる。
そこへトラちゃんが大槌を叩きつける。
頭を潰してしまえば流石にイチコロだ。


俺たちは今、アイアンアントの巣穴を探索中だ。
なぜかと言うと、ゲイ兄弟や鉱夫のみんなが鉱脈を求めて掘り進めていたのだが、アイアンアントの巣穴に繋がってしまったのだ。

初めてアイアンアントを狩ってから3ヶ月ほど、連日のように狩り続けた俺は、冒険者ギルドでは『蟻狩り』の通り名で呼ばれていた。それもあってゲイ兄弟たちから蟻駆除の依頼を受けたのだ。


現在地は坑道から巣穴に入ってすぐの開けた場所。
入ってすぐにワラワラと蟻の群れが襲ってきて、今はようやく落ち着いた所だ。

「あれだけ狩ったのにまだまだいそうだなぁ。」

「鉱脈があると繁殖力が増すらしいですね。」

俺とサラとトラちゃんで巣穴を進む。
通路は獲物を運ぶ為か、人間が2人ほど進める広さがある。天井は低いのでトラちゃんは頭上に要注意だ。
少し進むと開けた部屋に出た。
捕らえた獲物を肉団子にして置いてある。食料庫のようだ。


「ひどい匂いだな。」

鼻腔に突き刺さるようなアンモニア臭が漂ってくる。
そんな時でも蟻の群れが襲撃を仕掛けてきた。こんな場所は早く去りたいのだが。


「サラ、頼んだ。」

「はい!行きます!!」

サラが大きく振りかぶって爆弾を投擲する。
群れの手前に着弾、蟻は構わず進んで来る。
次の瞬間、ゴオッと局地的な竜巻が起こる。
蟻は風に耐えるように身動きが出来なくなる、そして襲いかかる電撃の嵐。
6匹いた蟻の群れも一網打尽だ。

これは今回用に開発した魔導手榴弾だ。
起爆後に着弾の衝撃を感知してから風の魔力で竜巻を起こす、巻き上げられた魔玉粒同士の間で電撃をランダムで発生させる。
洞窟の中で爆発は崩落の危険があるので竜巻に設定したのだが、なかなかの威力だ。魔玉粒の使用量も多いのでコストも高いけどね。

それと、トラちゃんが使っている大槌も対アイアンアント用に作った魔導武器だ。
最初にアイアンアントを狩って手に入れた素材でスミスさんに作ってもらった逸品だ。
アイアンアントの硬い外骨格を更に鍛えて作られているので、蟻を叩いても負けない強度を誇っている。それに電気の伝導率が高いのも雷属性の魔力と相性が良い。

蟻の群れにトラちゃんがトドメを刺していく、続いて俺が魔石の欠片を回収する。
蟻の解体はもう手馴れたものだ。手早く魔石の欠片だけを取り出していく。
他の素材は後回しだ、ここにはスライムもいないだろうし、少しぐらい放置しても大丈夫だろう。


『レベルアップしました。』

「おっ、レベル上がった。」

「私もです!」

これで俺がレベル24になって、サラがレベル20になったな。
やはりこのアイアンアントは得られる経験値が多いようで、毎日のように狩っていたのでレベルもグングン上がっている。
当面の目標は第二職業に就けるレベル40だ。そうなれば一流の冒険者級だと思う。
実際に一流として有名な冒険者は第二職業に就いている。戦士と魔法使いで魔法剣士としてや、猛獣使いと召喚術士で魔獣使いとしてなど2つの職業を活かして新たな力を得ている。


「さてと、ここは臭いからサッサッと先に進もうか。」

そこからは3回続けて食料庫だった。
匂いで頭が変になりそうだ。
襲って来る蟻の群れの数も増えてきている、魔物よりも匂いが辛い。早く抜け出したい。
無心で蟻を駆除して突き進む。
なんとか食料庫エリアを抜けた頃にはレベルがそれぞれ1つずつ上がっていた。


「ふぅ~。少し休憩しようか。」

「そうですね。お茶飲みますか?」

「うん。頼む。」

サラがリュックから水筒を取り出す。
これもお気に入りの魔導具で、氷の属性魔力でいつでも冷えた飲み物が楽しめる。今みたいに歩き回った時なんかには冷やしたお茶は堪らなく美味しいのだ。


「よし、行こうか?」

「はい!」

気を引き締め直して探索を続けよう。
最終の目標は女王蟻の討伐だが、無理はせずにヤバそうなら撤退して対策を練ろう。
結構進んだはずだけど、この巣穴はどれぐらい続いているのだろうか?
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

処理中です...