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北の森のダンジョン編
第52話 蟻狩り
しおりを挟む「師匠、また来ました!今度は3匹です。」
サラが警戒の声を上げた。
前方の洞窟の奥からアイアンアントが迫ってくる。
「トラちゃん任せた。」
トラちゃんは大槌を構えて走り出す。
バチッと電気を帯びた大槌を振りかぶり、横薙ぎに振るう。
ドゴッ
2匹の蟻が巻き込まれ、そのまま感電死した。
逃れた1匹は俺が雷槍で突き、スタンさせる。
そこへトラちゃんが大槌を叩きつける。
頭を潰してしまえば流石にイチコロだ。
俺たちは今、アイアンアントの巣穴を探索中だ。
なぜかと言うと、ゲイ兄弟や鉱夫のみんなが鉱脈を求めて掘り進めていたのだが、アイアンアントの巣穴に繋がってしまったのだ。
初めてアイアンアントを狩ってから3ヶ月ほど、連日のように狩り続けた俺は、冒険者ギルドでは『蟻狩り』の通り名で呼ばれていた。それもあってゲイ兄弟たちから蟻駆除の依頼を受けたのだ。
現在地は坑道から巣穴に入ってすぐの開けた場所。
入ってすぐにワラワラと蟻の群れが襲ってきて、今はようやく落ち着いた所だ。
「あれだけ狩ったのにまだまだいそうだなぁ。」
「鉱脈があると繁殖力が増すらしいですね。」
俺とサラとトラちゃんで巣穴を進む。
通路は獲物を運ぶ為か、人間が2人ほど進める広さがある。天井は低いのでトラちゃんは頭上に要注意だ。
少し進むと開けた部屋に出た。
捕らえた獲物を肉団子にして置いてある。食料庫のようだ。
「ひどい匂いだな。」
鼻腔に突き刺さるようなアンモニア臭が漂ってくる。
そんな時でも蟻の群れが襲撃を仕掛けてきた。こんな場所は早く去りたいのだが。
「サラ、頼んだ。」
「はい!行きます!!」
サラが大きく振りかぶって爆弾を投擲する。
群れの手前に着弾、蟻は構わず進んで来る。
次の瞬間、ゴオッと局地的な竜巻が起こる。
蟻は風に耐えるように身動きが出来なくなる、そして襲いかかる電撃の嵐。
6匹いた蟻の群れも一網打尽だ。
これは今回用に開発した魔導手榴弾だ。
起爆後に着弾の衝撃を感知してから風の魔力で竜巻を起こす、巻き上げられた魔玉粒同士の間で電撃をランダムで発生させる。
洞窟の中で爆発は崩落の危険があるので竜巻に設定したのだが、なかなかの威力だ。魔玉粒の使用量も多いのでコストも高いけどね。
それと、トラちゃんが使っている大槌も対アイアンアント用に作った魔導武器だ。
最初にアイアンアントを狩って手に入れた素材でスミスさんに作ってもらった逸品だ。
アイアンアントの硬い外骨格を更に鍛えて作られているので、蟻を叩いても負けない強度を誇っている。それに電気の伝導率が高いのも雷属性の魔力と相性が良い。
蟻の群れにトラちゃんがトドメを刺していく、続いて俺が魔石の欠片を回収する。
蟻の解体はもう手馴れたものだ。手早く魔石の欠片だけを取り出していく。
他の素材は後回しだ、ここにはスライムもいないだろうし、少しぐらい放置しても大丈夫だろう。
『レベルアップしました。』
「おっ、レベル上がった。」
「私もです!」
これで俺がレベル24になって、サラがレベル20になったな。
やはりこのアイアンアントは得られる経験値が多いようで、毎日のように狩っていたのでレベルもグングン上がっている。
当面の目標は第二職業に就けるレベル40だ。そうなれば一流の冒険者級だと思う。
実際に一流として有名な冒険者は第二職業に就いている。戦士と魔法使いで魔法剣士としてや、猛獣使いと召喚術士で魔獣使いとしてなど2つの職業を活かして新たな力を得ている。
「さてと、ここは臭いからサッサッと先に進もうか。」
そこからは3回続けて食料庫だった。
匂いで頭が変になりそうだ。
襲って来る蟻の群れの数も増えてきている、魔物よりも匂いが辛い。早く抜け出したい。
無心で蟻を駆除して突き進む。
なんとか食料庫エリアを抜けた頃にはレベルがそれぞれ1つずつ上がっていた。
「ふぅ~。少し休憩しようか。」
「そうですね。お茶飲みますか?」
「うん。頼む。」
サラがリュックから水筒を取り出す。
これもお気に入りの魔導具で、氷の属性魔力でいつでも冷えた飲み物が楽しめる。今みたいに歩き回った時なんかには冷やしたお茶は堪らなく美味しいのだ。
「よし、行こうか?」
「はい!」
気を引き締め直して探索を続けよう。
最終の目標は女王蟻の討伐だが、無理はせずにヤバそうなら撤退して対策を練ろう。
結構進んだはずだけど、この巣穴はどれぐらい続いているのだろうか?
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