魔具師になったら何をつくろう?

アマクニノタスク

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北の森のダンジョン編

第48話 バージョンアップ

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「これでよしっと!」

トラちゃんの左腕から手を離す。


「手足にちょこっと細工したけど、異常は無いかな?」

トラちゃんは立ち上がり、手足を動かして確認してから頷いた。異常は無いようだ。
細工をしたのは両足の踵と両の掌に風の魔導具の応用でブースターを埋め込んだ。
これによりトラちゃんは高くジャンプする事もできるし、掌底で敵を吹き飛ばす事も可能となった。もちろんプレートアーマーもその部分は風穴としてくり抜いてある。

実は、トラちゃんが完成してからこの3日間でちょこちょことバージョンアップを重ねている。

完成の翌日にはスミスさんの店に行き、トラちゃん用の武器を調達した。トラちゃんには大きめの槍を待たせている。
前衛として囲まれても多くの敵を屠れる様にと選んだのだが、槍を持つトラちゃんはかなり絵になる。まるで歴戦の騎士さながらなのだ。もう少し稼いだらもっと良い鎧を用意してあげよう。
そしてそのまま西の森へ入ってみたのだが、ゴブリンや野生動物ならトラちゃんの敵ではなかった。しかし、ボア系や素早い虫系の魔物が相手では機動力で劣り、無駄な被弾が多くなってしまっていた。
そこで取り入れたのが先程のブースターだ。
他にも間接部の調整や形状を変えてみたりトライアンドエラーを繰り返している。

そんな中でも今、1番楽しみにしているのは新しい槍の開発だ。武器についてスミスさんと相談している時に魔導玩具のナイフを見せたのだが、これにスミスさんも食い付いた。
奥さんのキリカさんはブーツとサンダル製作で充実しているのだが、スミスさんは金具作りが増えてしまい武器や防具を思う様に作れていない、つまりフラストレーションが溜まってしまっていたのだ。
昨日、スミスさんと打ち合わせをしてトラちゃんが使っている槍と同じタイプの槍を新たに打ってもらっている。もちろん、魔玉と魔導回路を仕込める様にアレンジしてだ。


「ただいま戻りました~。」

食料の買い出しに行っていたサラが帰ってきたようだ。


「おかえり。」

「師匠、スミスさんが呼んでましたよ。」

「おっ!もう出来たのかな?」

「何が出来たんですか?」

「トラちゃんの新しい武器をな!」

「えっ!早く行きましょう。楽しみです!」

みんなでスミスさんの工房を訪ねる。


「スミスさん、こんにちは。もう出来たんですか?」

「あぁ、鍛治の腕が疼いていたからな!これがその品だ。」

「普通の鉄の槍ですね。どこが変わったんですか?」

「サラはまだまだ甘いな。この部分に俺が作っておいた魔導回路を仕込めば、完成だ。」

「かっ、カッコイイです!」

「カッコイイだけじゃなく威力も期待できるぞ!」

「おっおい、ガルド。武器鑑定したんだが。」

「あっ、俺も解析してみます。」


自滅の雷槍
推定攻撃力+29
雷属性の魔力を秘めた魔導武器の槍
効果:切れ味補正、放電、強スタン


「魔導武器ってのが出来ましたね。。。」

「あぁ、俺も知らなかったぞ。。。」

「自滅の雷槍って名前もカッコイイですね!」

「魔導回路用に武器を製作して組み込むと魔導武器になるようですね。しかし、設計が難しそうなので技術研究が必要ですね。」

「そうだな。しかし、俺は魔導回路を知らんし、ガルドは武器製作を知らん。両方を理解していないと設計するのは至難の技だろうな。」

「そうですね。今後の課題の1つですね。」

「この槍の代金はいらんから、使用時の問題点なんかを教えてくれ。武器製作の良い刺激になりそうだ。」

「わかりました。気付いた事があれば報告します。」

「頼んだ。俺も女房に負けてられんからな。」

「キリカさん、忙しそうですもんね。」

「あぁ、張り切ってるよ。フィルのとこの大口も決まってるからな。やり甲斐があるんだろう。」

「そうですね。フィルに会えてゴードンさんも嬉しそうでしたしね。」

「あぁ、あいつは昔から心配性だからな。」

「そうだったんですか。」

他愛もない世間話をしてから帰ってきた。
これでトラちゃんもかなりバージョンアップしたと思う。
メンテナンスを終えて、お茶を飲んで一休みしていると工房の隅に積まれたガラクタが気になった。
これらは珍品好きの爺ちゃんが集めた品々なのだが、ずっとそのままで放置していたのだ。

「これらも整理しないとな。」

上に置いてある1つを手に取ってみると、ガラガラと山が崩れてしまった。


「あちゃ。やっちまったな。」

崩れた山を眺めていると、小さな木箱が目に止まった。


「この箱も何かの珍品なのかな?」

『解析』


魔導錠の木箱
魔力に反応する魔導回路が仕込まれているようだ。魔導回路の詳細は解析不能。


「詳しくは分からないけど、精巧な魔導具なんだな。」

危ない物でも無さそうなので、試しに魔力を流してみる事にした。
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