52 / 106
北の森のダンジョン編
第48話 バージョンアップ
しおりを挟む「これでよしっと!」
トラちゃんの左腕から手を離す。
「手足にちょこっと細工したけど、異常は無いかな?」
トラちゃんは立ち上がり、手足を動かして確認してから頷いた。異常は無いようだ。
細工をしたのは両足の踵と両の掌に風の魔導具の応用でブースターを埋め込んだ。
これによりトラちゃんは高くジャンプする事もできるし、掌底で敵を吹き飛ばす事も可能となった。もちろんプレートアーマーもその部分は風穴としてくり抜いてある。
実は、トラちゃんが完成してからこの3日間でちょこちょことバージョンアップを重ねている。
完成の翌日にはスミスさんの店に行き、トラちゃん用の武器を調達した。トラちゃんには大きめの槍を待たせている。
前衛として囲まれても多くの敵を屠れる様にと選んだのだが、槍を持つトラちゃんはかなり絵になる。まるで歴戦の騎士さながらなのだ。もう少し稼いだらもっと良い鎧を用意してあげよう。
そしてそのまま西の森へ入ってみたのだが、ゴブリンや野生動物ならトラちゃんの敵ではなかった。しかし、ボア系や素早い虫系の魔物が相手では機動力で劣り、無駄な被弾が多くなってしまっていた。
そこで取り入れたのが先程のブースターだ。
他にも間接部の調整や形状を変えてみたりトライアンドエラーを繰り返している。
そんな中でも今、1番楽しみにしているのは新しい槍の開発だ。武器についてスミスさんと相談している時に魔導玩具のナイフを見せたのだが、これにスミスさんも食い付いた。
奥さんのキリカさんはブーツとサンダル製作で充実しているのだが、スミスさんは金具作りが増えてしまい武器や防具を思う様に作れていない、つまりフラストレーションが溜まってしまっていたのだ。
昨日、スミスさんと打ち合わせをしてトラちゃんが使っている槍と同じタイプの槍を新たに打ってもらっている。もちろん、魔玉と魔導回路を仕込める様にアレンジしてだ。
「ただいま戻りました~。」
食料の買い出しに行っていたサラが帰ってきたようだ。
「おかえり。」
「師匠、スミスさんが呼んでましたよ。」
「おっ!もう出来たのかな?」
「何が出来たんですか?」
「トラちゃんの新しい武器をな!」
「えっ!早く行きましょう。楽しみです!」
みんなでスミスさんの工房を訪ねる。
「スミスさん、こんにちは。もう出来たんですか?」
「あぁ、鍛治の腕が疼いていたからな!これがその品だ。」
「普通の鉄の槍ですね。どこが変わったんですか?」
「サラはまだまだ甘いな。この部分に俺が作っておいた魔導回路を仕込めば、完成だ。」
「かっ、カッコイイです!」
「カッコイイだけじゃなく威力も期待できるぞ!」
「おっおい、ガルド。武器鑑定したんだが。」
「あっ、俺も解析してみます。」
自滅の雷槍
推定攻撃力+29
雷属性の魔力を秘めた魔導武器の槍
効果:切れ味補正、放電、強スタン
「魔導武器ってのが出来ましたね。。。」
「あぁ、俺も知らなかったぞ。。。」
「自滅の雷槍って名前もカッコイイですね!」
「魔導回路用に武器を製作して組み込むと魔導武器になるようですね。しかし、設計が難しそうなので技術研究が必要ですね。」
「そうだな。しかし、俺は魔導回路を知らんし、ガルドは武器製作を知らん。両方を理解していないと設計するのは至難の技だろうな。」
「そうですね。今後の課題の1つですね。」
「この槍の代金はいらんから、使用時の問題点なんかを教えてくれ。武器製作の良い刺激になりそうだ。」
「わかりました。気付いた事があれば報告します。」
「頼んだ。俺も女房に負けてられんからな。」
「キリカさん、忙しそうですもんね。」
「あぁ、張り切ってるよ。フィルのとこの大口も決まってるからな。やり甲斐があるんだろう。」
「そうですね。フィルに会えてゴードンさんも嬉しそうでしたしね。」
「あぁ、あいつは昔から心配性だからな。」
「そうだったんですか。」
他愛もない世間話をしてから帰ってきた。
これでトラちゃんもかなりバージョンアップしたと思う。
メンテナンスを終えて、お茶を飲んで一休みしていると工房の隅に積まれたガラクタが気になった。
これらは珍品好きの爺ちゃんが集めた品々なのだが、ずっとそのままで放置していたのだ。
「これらも整理しないとな。」
上に置いてある1つを手に取ってみると、ガラガラと山が崩れてしまった。
「あちゃ。やっちまったな。」
崩れた山を眺めていると、小さな木箱が目に止まった。
「この箱も何かの珍品なのかな?」
『解析』
魔導錠の木箱
魔力に反応する魔導回路が仕込まれているようだ。魔導回路の詳細は解析不能。
「詳しくは分からないけど、精巧な魔導具なんだな。」
危ない物でも無さそうなので、試しに魔力を流してみる事にした。
0
お気に入りに追加
3,124
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?


異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています


巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。

異世界に飛ばされたけど『ハコニワ』スキルで無双しながら帰還を目指す
かるぼな
ファンタジー
ある日、創造主と言われる存在に、理不尽にも異世界に飛ばされる。
魔獣に囲まれるも何とか生き延びて得たスキルは『ハコニワ』という、小人達の生活が見れる鑑賞用。
不遇スキルと嘆いていたそれは俺の能力を上げ、願いを叶えてくれるものだった。
俺は『ハコニワ』スキルで元の世界への帰還を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる