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町おこし編
第41話 盛況
しおりを挟む「いらっしゃい、いらっしゃい!」
「安いよ、安いよ。お買い得だよ~!」
そこら中から呼び込みの声が飛んでくる。
お客の数もかなりのものだ。
「さぁ、そこの兄ちゃん。焼きたてだよ!1本どうだい?」
串焼き肉を売っているオヤジが声をかけてきた。
ジュージューと肉を焼く音と食欲をそそる香りが堪らない。
「おっちゃん、1本おくれ。」
「あいよ。1鉄貨だよ。」
串焼き肉を頬張りながら店を見て回る。
この辺りは食品を扱う店が多く、グルメ目的でも結構楽しめそうだな。
歩いていると一際大きな店があった。
ロイヤルフーズ社の出店だ。
さすがは王都唯一の会社、出店スペースも豪商クラスを2つ連結させている。
トウモロコシやトマトなどこの辺りではあまり見かけない食材も売られている。
他にも酒やお茶が安い物から超高級品まで揃っている。
折角なので手頃な値段の紅茶と緑茶を購入しておいた。
お米は探してみたがどうやら無いようだ。
白いご飯が少し恋しく感じた。
食品エリアを抜けると武具エリアに入ったようだ。
厳ついマッチョなオヤジの店番が多いな。
見ているだけで暑苦しいエリアだ。
しかしこのエリアは市でも目玉のエリアなのだ。
武具は基本的に高価な物なので売り上げも群を抜いている。
さらに新進気鋭の若手職人が名を売るために自信作をお披露目する格好の場でもある。
将来の名工の品を手に入れようと冒険者から商人、軍関係者まで多くの人が訪れるのだ。
今は持ち合わせも無いので見るだけで素通りしよう。
むさ苦しい人混みが徐々に空いてくると、次は雑貨エリアになっていた。
自分も出店しているエリアだ。
特に出店エリアは決められておらず自由なはずなのだが、自然とジャンルが分かれて出店されるのである。
まぁ、食べ物屋の隣で衣服を売っていたら匂いが移ったりとデメリットはありそうだし、みんな経験から自然と分かれて出店しているのだろう。
ブラブラしているとさっきのゴスロリの女性を発見した。
彼女も出店しているようだ。
お店に近づいて声をかける。
「先程はありがとうございました。」
「あら、さっきのサンダルの。」
「貴方も出店されていたんですね。」
「ええ、服飾専門だけど良ければ見て行ってね。」
「お言葉に甘えて。」
綺麗に並べてある商品を見渡す。
大半は女性物だった。どれも刺繍やレースが使われており華やかだ。
「女性物が多いんですね。」
「そうね。いつもはランジェリーやオーダーメイドのドレスを扱っているけど、今日はカジュアルな物を持ってきたわ。」
「へぇー、ランジェリーって女性用の下着ですよね?珍しいですね。」
「そうね、帝都だけでなく王都でも少しずつ普及しているわよ。」
「へぇー、普段は帝都でお店を?」
「ええ、そうよ。彼女へプレゼントとかどうかしら?」
「残念ながら彼女はいないので、男物はありますか?」
「シャツならあるわ。」
「じゃあ、それを1枚ください。」
「はい。ありがとうございます。」
シャツを包んでもらっている間に商品を眺めていると気になる物があった。
「あの、これも貴方が作ったんですか?」
「ええ、ここの商品は全て私の作品よ。」
「デザインもされているんですか?」
「ええ、私が1人でやっているわ。」
これってどう見てもセーラー服だよな。
もしかしてこの女性も?
「はい、お買い上げありがとうございました。」
「あ、ありがとうございます。帝都に行ったらお店を見に行きますね。」
「ええ、お待ちしてます。」
「俺はサイモンの町のガルドと言います。」
「私はハナよ。またよろしくね。」
「はい、それでは。」
ハナさんって多分そうだよな?
帝都に行く事があれば是非また会いたいな。
考え事をしながら歩いていると自分の店の前まで戻っていた。
しかし店の前に人集りが出来ている。
人を掻き分けて進んでようやく店の前に出た。
「はい、ありがとうございます。」
「でへへ、ありがとう。」
サラが鼻の下を伸ばした厳つい男にブーツを渡している。
「あ、師匠!お帰りなさい。」
「おう、どうだ?売れた?」
「ふ、ふ、ふ。さっきので最後ですよ!」
「え!って事は全部売れたの?」
「はい!完売です!!」
それを聞いた周りの客達が騒ぎ出した。
「なんだよ、完売かよ~。」
「俺も買いたかったぜ。」
「くそっ、もっと早く来ていれば。」
などなど、よく見れば男ばっかりだ。
「はいはい!今日買えなかった人はサイモンの町へ来てくださいね!」
「サイモンの町に行けば買えるのか!?」
「サラちゃんが売ってるのか?」
「私は売ってないけど、近くにいると思うわ。」
「おぉー!なら次はサイモンの町へ行こぜ。」
なんか凄い盛り上がりだな。
とりあえず完売したし店を撤収するか。
宣伝はサラに任せて、俺は撤収作業を進める。
「よし、サラ、撤収するぞ。」
「了解です、師匠!」
俺とサラは盛り上がる男どもを無視して風の如くその場を去った。
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