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町おこし編
第26話 雷鳴
しおりを挟む樹液を回収して家に帰る途中にリィナと出会った。
「あっ!ガルドさん。今帰りですか?」
「やぁ、リィナ。うん帰りだけど、どこか行くのか?」
「いえ、ガルドさんの家に行ったんですけど丁度良かったです。」
「あれ?俺なんかお願いしてたっけ?」
「前にガルドさんを森で助けた冒険者さんが戻ってこられたので伝えて来てってお母さんがに言われたので。」
「あぁ、ジャックさんからお願いして貰っていたやつか。そうか、リィナありがとね。」
「いえいえ、今晩はうちで食事されるそうなのでガルドさんも来ますか?」
「そうだな。お礼も言わなきゃだし、後で行くよ。」
「待ってますね。」
リィナがウインクしてきた。
うむ、可愛い。なかなかの小悪魔だ。
「ガルドさんは今日も何か取って来たんですか?」
リィナが木桶の中を覗き込む。
「うっ何ですかこれ?独特の匂いですね。」
「あぁ、これはゴムの木の樹液だよ。臭いけどこれで便利な物が作れるからね。」
「へぇ~、そうなんですか!出来たら私にも見せて下さいね。」
「わかった、いいよ。」
「それじゃあ、また後で!待ってますね。」
そう言うとリィナは駆けて行った。
リィナがキャバ嬢だったらNo.1とかになっていそうだなぁ。
家に戻り工房に樹液を置いてから装備を外す。夕食時までは少し時間があるので装備のメンテナンスを済ませておく。
お腹も空いてきたので宿屋へ向かう。
宿屋へ入ると夕食時なのでたくさんのお客で賑わっている。
「まぁ、ガルド。いらっしゃい。」
「リンダさん。こんばんは。リィナから聞きました。俺を助けてくれた冒険者さんが戻られたとかで。」
「そうなのよ。今から声をかけてくるわね。」
しばらく待っていると2人の若い男女が出てきた。
「やぁ、君がガルドくんかな?」
「はい、その節は助けて頂いて有難う御座いました。」
「いや、冒険者として当然の事をしたまでさ。あぁ、俺はグロードだ。雷鳴のグロートって言えばそこそこ知られた名前だと思うけどな。それからこっちは俺の相棒のレナだ。ほら、お前も挨拶しろよ。」
「申し遅れました。冒険者をしていますレナです。元気になられたようで良かったです。」
「はい、もうすっかり元気です。有難う御座いました。」
「まぁ、俺様が助けたんだから元気になるだろうさ。ガルドくんも俺様に助けて貰った事は遠慮なく自慢して貰って構わないよ?」
「あはは、そうですね。お二人はこれから夕食ですか?」
「そうだな、この宿は料理が美味いと聞いたからな。明日にはこの町から発つし今から食べておくか。」
「それならここは俺にご馳走させて下さい。」
「そうかい?じゃあ有り難く。」
「ガルドさん、すみません。有難う御座います。」
「ガルドくんも一緒にどうだい?」
「いえいえ、俺はちょっと用事があるんで残念ですが、お二人で楽しんで下さい。」
「そうか。それは残念だったね。縁があればまたどこかで会おう。」
グロートが金髪を掻き上げてから手を差し出してきた。仕方ないので握手で応える。
無駄に強く握ってくるし・・・
最後にニヤリと笑い食堂へと消えていった。
レナはこちらにペコリと会釈してから彼の後について行った。
リンダさんに会計は俺が払う事と、しばらくしたらまたくる事を伝える。
それと彼らが部屋に戻ったら店前に箒を立てかけて置いてくれとお願いしておいた。
リンダさんも苦笑いしていた。
しかし、あのグロートとか言う冒険者は凄いな。前世でもあんなウザい奴はいなかったぞ。
一旦、家に帰り時間を潰す。
工房で生ゴムの乾燥具合を確認する。
「うん、これぐらい乾燥させたら加工しても大丈夫だろう。」
これを使って靴底を作ろうと思う。
この世界の普段履きはサンダルだ。
移動の多い時は革のブーツだが、どちらとも靴底が硬く長く履いていると足の裏が痛い。
それに滑り止めも付いてないので意外と滑りやすい。
まずは加工スキルで生ゴムのシートを半分に切る。これで1足分なのでまた半分に切る。
それから履いてたサンダルを生ゴムの上に乗せてサンダルの形に合わせて切り取る。
靴裏の側には滑り止め加工を付けたいのだが加工スキルでは面倒なので人形製作スキルで済ませる。
前世の記憶からスニーカーの靴裏を何とか捻り出す。これをもう片側も作る。
これをサンダルの裏に貼り付けてたら完成だ。
試しに履いてみた。
屈伸してみたり、ジャンプしてみたり、走ってみたりしたが良い感じだと思う。
滑り止めもちゃんと機能しているしね。
「そろそろ時間も良いだろう。ご飯にしよう。」
本日2度目の宿屋へと向かう。
もう暗くなってしまったので魔導ランプを持って行こう。
宿屋の前に着くと箒が立てかけてある。
どうやら彼らはもう食堂にはいないらしい。
「あんなのと一緒に食事したら折角の料理が不味くなってしまうわ。」
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