21 / 106
町おこし編
第18話 ゴーレムの札
しおりを挟む翌朝の目覚めはスッキリ爽快でした。
いつもより少し早いけど朝食を済ませて早速行動を開始する。
大きめの木桶を3つ持って町から近いゴムの木を探す。
ビグルが言うには森の全域に紛れて生えているらしいので、西の森の入り口付近から解析スキルで確認していった。
入り口のすぐ側で3本見つけたのでナイフで樹液採取の加工をして木桶をセットしておく。
「夕方にでも一度確認に来るか。」
あとは放置しておくだけなので、そのままの足でニモ婆さんの家へと向かう。
ニモ婆さんは10年ぐらい前にこの町へ移って来た魔術師の婆さんだ。ちなみに10年前から婆さんだ。何歳なのかは怖くて聞けない。
婆さんはただの魔術師ではなくて精霊魔術師と言う職で精霊と通じて祈祷や雨乞いなんかもやっている。
俺の目的のゴーレムの札はちょっと高価だが護身用として町の外に出る時は持って行く人が多い。
ゴーレムの札を地面に貼り魔力を流すとゴーレムが生成される。
精霊魔術師だけがゴーレムの札を作れるらしいが詳しい事は知らないので聞いてみよう。
ニモ婆さんの家は町の西端の方なのでここからならすぐに着いた。
コン コン コン
扉をノックする。
「ニモ婆さ~ん、起きてる?」
ノックしてから少し待つとゆっくりと扉が開いた。
「なんだい、ガルドかい。珍しいねぇ。」
「婆さん、ゴーレムの札が欲しいんだけど。あるかな?」
「ああ、札かい?少しならあるよ。それじゃあ中にお入りよ。」
「お邪魔しま~す。」
中に入りダイニングの椅子に腰掛ける。
婆さんが札を持ってくるのを待つ。
相変わらず得体の知れない物があちらこちらに置いてある。
まさに魔女のイメージがピッタリだ。
でも本当は優しい婆さんなので安心して寛げる。
「3枚あったよ。何枚欲しいんだい?」
「1枚いくらだっけ?」
「1枚1銀貨だよ。おまけはしないよ。ヒッヒ。」
あらま、先手を取られた。
「ん~。じゃあ全部買うから、精霊魔術についてちょっと教えて欲しいんだけど。」
「ほぉ~興味があったのかい。」
「まぁね。まずはなんでこの札でゴーレムが作れるのか簡単に教えてほしいかな。」
その後は婆さんから精霊魔術について色々と教えてもらった。
俺が知りたかった事をまとめるとこんな感じ。
精霊魔術の術式を札に封じて販売している。
この術式は近くの土精霊をゴーレムの精神体として使役する契約内容で対価の魔力は札の作成時に支払われているらしい。なので起動する時に魔力を少し流すだけで、それ以外には魔力を必要としないそうだ。
ゴーレムの体を生成し維持と行動するのは土精霊の魔力を使っているらしい。その土精霊の魔力が尽きるか命じるかすればゴーレムは土に還るそうだ。
ちなみに通常のゴーレムの体は泥に近い粘土で形成され、沼から泥塗れの上半身を出した人みたいな見た目らしい。
契約する土精霊は下級精霊なので魔力量も少なく、札の起動後に何も行動しなくても2時間程度が限界らしい。
ゴーレムは何かを攻撃する命令は受け付けず、マスターの護衛とゴーレムに襲いかかってきた敵意にのみ反撃する様に契約されている。
これが基本的な内容で、ここからは俺の質問に対して教えてもらった事だが。
まずはゴーレムの体は土でしか生成できないのか?と疑問に思ったのだが、過去にも岩石や樹木で試した例はいくつかあるらしい。
しかし、どの事例も土精霊は宿ったが体の形を変化させる事も動く事も出来ず、魔力を無駄に消費してすぐに魔力が尽きたらしい。
そこで俺はさらに、藁人形なんかの柔らかい素材のゴーレムなら動けるか?と質問をしたのだが、婆さんでも分からないらしい。
藁なら体を維持する魔力消費は少ないが、体を動かす時の魔力消費が増える。土ならその反対になる。どちらが魔力効率が良いかを検証した事例はないらしい。
あとはゴーレムは魔導具を使う事ができるのか聞いてみたが、契約で決めた内容以外の事はその精霊の判断によるそうだ。
好奇心旺盛な精霊なら使う可能性もあるが、怠惰な精霊もいるらしい。
精霊魔術師になれば専属の精霊と契約する事も可能だし、精霊を育てていけば下級から中級~上級の精霊へ成長する事もあるらしい。
でも、第二職業に就くにはレベルを40まで上げないといけないからなぁ。
興味はあるが今のままでは夢のまた夢だな。
こんな感じですっかり長話をしてしまった。
お茶を2杯もおかわりしたし、気が付けば太陽が高くなっている。
ニモ婆さんにお礼を言って銀貨3枚でゴーレムの札を3枚購入する。
それから痺れ薬も買っておかないとな。
その後は家に一度戻ってから昨日のゴムの木の所へ行こう。
0
お気に入りに追加
3,124
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?


異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。


巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる