上 下
9 / 106
町おこし編

第8話 ランプを作ってみよう

しおりを挟む

「さてと時間もあるし、他のスキルを使ってみるか。次は加工スキルかな。」

俺は工房にあった木の板を作業台の上に置き、手にはノコギリを持つ。

木の板を見つめて唱える。

「加工」


木の板が淡く虹色に光りだす。
そのままノコギリで切り出すと、驚くほどに軽く切っていける。まるで発泡スチロールでも切っているようだ。

あっという間に木の板を切り終えると、スキルを解除する。その瞬間、頭脳に重い負荷が襲ってくる。

「うわ、これは消耗が激しいな。」

台に両手をついて休む。
少し休むと落ち着いたので、次の素材を試す。
細長い鉄板が近くにあったので、コレにしよう。

「加工」


鉄板が淡く虹色に光る。
素早くノコギリで切り出していく。
木材を切っているような感覚で鉄板が切れた。
すぐにスキルを解除すると、頭脳の負荷は先程よりも少し軽く感じた。

「虹色状態を維持している時間分だけ消耗していくみたいだな。」

俺は自分なりに考察をまとめていく。

「なら、これならどうだ?」


『・・・加工』

俺は分子の結び付きを切っていくイメージをして念じる。


鉄板が虹色に淡く光りだしたので、同じく素早くノコギリで切る。大根でも切っているみたいだ!
スムーズに切り終えたのでスキルを解除する。
頭脳の負荷は少しは低減されている。


「うーん、この使い方でも長時間の使用は無理だなぁ。」

簡単な物を加工するなら問題無さそうだが、複雑な物や大きな物を加工するなら魔力が保たないだろう。

椅子に座り休憩する。
しばらく休憩していると部屋が薄暗くなってきている事に気が付いた。もう夕暮れのようだ。

作業台の上にランプを点ける。
このランプは爺ちゃんが作った品だ。
一般家庭の生活ならロウソクや普通のランプで十分だが、夜にも作業をする職人には魔導具のランプが必需品なのだ。理由は単純に魔導具のランプの方が明るいからだ。


「次は魔導スキルを試してみるか。けど、この魔導スキルってのが一番奥が深そうなんだよなぁ。」

魔導スキルは魔導具を製作する際に使うのだが、主な効果は魔力の流れを操作し媒体に記憶させる事だ。
この媒体は魔力回路と呼ばれ、魔導具の出来を左右する重要な部品となる。
魔導スキルで如何に効果的な魔力回路を設定出来るかが魔具師の腕を判断するポイントとなる。


「コンピュータ技術のプログラミングに似たような物かな。それなら前世がプログラマーの俺には向いているだろう。」

俺は試しに魔具師の入門として教えられる簡単なランプを作ってみる事にする。

まずは燃料となる魔玉を設置する台座を作る。魔玉と接する部分を魔力回路にするのが一般的な手法だ。

『・・・加工』

さっきの鉄板の切れ端に加工スキルを使う。
分子の結び付きが緩み粘土状になるイメージを加える。
すると、粘土で遊んでいるかのような感覚で鉄板の形を変える事ができる。

「これは楽しいな!」

手早く鉄板を山の形に整える。そして頂上には窪みを作る。

「これでよしっと。」

スキルを解除する。

「だっるぅ~。」

ついつい楽しくてさっきよりも長くスキルを使ってしまったようだ。頭がダルく手足の感覚まで鈍いような錯覚がする。

椅子に座り休む。
少し回復したのでお茶を飲もうとしたがもう無かった。
仕方がないので台所へお茶を淹れに行く。

お茶を入れ直し、ポットを持って工房に戻る。少し休むと回復したので作業を再開する。

さっき作った台座に魔力回路を仕込む。

ランプの魔力回路は単純な仕組みだ。
魔玉の魔力を火の魔力に変換し小さく火を出し続けて明かりを灯すのだ。


俺はこの順番で魔力が流れるのをイメージしながら、台座を見つめて唱える。

「魔導」

台座が淡く虹色に光りだす。
そして同時に不思議な文字のような形が台座に刻まれていく。
これは魔導文字と呼ばれているのだが、詳しい事は知らない。よく分からないがなんか象形文字っぽい。

「できた。だけど、これがまたかなり疲れるな・・・」

俺は椅子に座りしばらく休む。
少し落ち着いたのでお茶を飲む。
そしてまた休む。

「ふぅ、これは絶対的に魔力が足りてないなぁ。」

ここでもレベル不足が課題になるとは。
俺は休憩しながら現状の課題を整理する。

一つ目は、レベル不足。
二つ目は、資金調達。
三つ目は、食事レベルの向上。


「当面の課題は3つかなぁ。」

レベル不足は魔物を倒すしかないよなぁ。
そうすれば魔石や素材も手に入る。
素材は売ってもいいし、魔導具に使ってもいいだろう。
資金の助けにもなるし、収入に余裕ができればもっと贅沢な食事もできる。

「ってことは、取り敢えず魔物を倒せるようにならないとなぁ。そうすれば上手くやっていけそうな気がする。」

今後の方針はある程度決まったな。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

魔攻機装

野良ねこ
ファンタジー
「腕輪を寄越すのが嫌ならお前、俺のモノになれ」  前触れもなく現れたのは世界を混沌へと導く黒き魔攻機装。それに呼応するかのように国を追われた世界的大国であるリヒテンベルグ帝国第一皇子レーンは、ディザストロ破壊を目指す青年ルイスと共に世界を股にかけた逃避行へ旅立つこととなる。  素人同然のルイスは厄災を止めることができるのか。はたまたレーンは旅の果てにどこへ向かうというのか。  各地に散らばる運命の糸を絡め取りながら世界を巡る冒険譚はまだ、始まったばかり。 ※BL要素はありません  

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

処理中です...