魔具師になったら何をつくろう?

アマクニノタスク

文字の大きさ
上 下
8 / 106
町おこし編

第7話 精製スキルで実験しよう

しおりを挟む

冒険者ギルドから家へ帰る途中。
向こうからリンダさんが歩いて来るのが見えた。


「こんにちは、リンダさん。」

沢山の食材を持ったリンダさんに挨拶をした。


「あんらぁ~、ガルドじゃないの。もう元気になったのかい?」

リンダさんは老舗の宿屋の女将さんで、特に料理が美味しいと評判なのだ。食堂としても利用できるので、俺もちょくちょくご飯を食べに通っていた。


「もうピンピンしてますよ!それにしても相変わらず、すごい量の食材ですね。」

食材が溢れんばかりに入った買い物カゴを俺は見ながら言う。しかも両手に持っている。リンダさんはとってもパワフルなのだ。


「あっはっは、みんながいっぱい食べてくれるからねぇ~、持ちきれなかった分は配達してもらってるよ。」

確かに、リンダさんの所の料理は美味しいからな。ついつい食べ過ぎてしまう。

俺が料理の事を思い出していると、グゥーギュルギュルと俺の腹が鳴った。
そう言えば、朝から何も食べていなかったな。


「あんらぁ~、アンタお腹空いてるのかい?林檎で良ければ食べるかい?」

リンダさんは買い物カゴを一旦地面に置くと真っ赤な林檎を1個くれた。


「リンダさん、ありがとう。遠慮なく頂きます。」

俺はお腹も空いていたので有り難く林檎を受け取る。


「ウチにもまた食べに来るんだよ。大盛りにしてあげるからね。」

リンダさんは再びパンパンの買い物カゴを持ち直すと良い笑顔を見せて帰って行った。

俺は家がすぐそこなのだが、我慢出来ずに林檎を齧りながら歩いて帰った。


家に戻ると、まずは一休みする。
そして買って来た素材を持って工房へと移動した。

早速だが色々とスキルを試してみたいからな。まずは精製スキルで魔玉を作ってみるかな。

袋から魔石の欠片を10ケ、数えながら取り出し作業台の上に並べていく。

魔石の欠片は2センチ程度と小さく、虹色のガラス片の様な感じだ。

並べ終えると一つにまとめて小山を作る。
そして俺は両手を欠片に向けて唱える。

「・・・精製・・・」


すると、欠片が淡く光り出し、小さな煙も出てきた。

煙はすぐに消えていき、そこには小さな虹色の玉があった。


「これが精製スキルかぁ・・・」

俺は出来上がった魔玉を手に取りながら観察する。
小さなビー玉ほどの大きさで欠片よりも虹色が鮮明になっている。魔玉は魔力を使い切ると透明なガラス玉になる。虹色の濃さが魔力の残量の目安となっているのだ。

ちなみに属性魔力の魔玉も存在する。
火系統なら赤、水系統なら青、風系統なら緑、土系統なら橙。虹色は無属性となっている。
属性魔力の魔石や欠片は、その属性の魔物から獲れる事が多いのだが、比較的強い魔物が多く市場に出回る事は少ないのだ。

「これくらいならほとんど疲れないな。」

頭の重さもダルさもわずかにしか感じないので、俺は次に実験をしてみる事にする。

10ケの欠片で同じように小山を作り、今度は念じてスキルを使う。


『・・・精製』


無事にスキルは成功した。
出来上がった魔玉を見比べても遜色ない。
疲労度は念じた方が若干抑えられたように感じた。

「なるほどな、次の実験に移ろう。」

またまた10ケの欠片で小山を作り念じる。
さらに念じる際に、魔力以外の不純物が取り除かれ、煙となって消えるイメージを追加する。


『・・・・・精製』


今回も無事にスキルは成功した。
見比べてみても品質に問題はない。いや、むしろこちらの方が中心部の色が濃いように感じる。
そして疲労度はあまり感じない。

「うむ、やはりスキルは使用する際のイメージが効果や消費魔力に影響するようだ。なかなか良い実験結果が得られたな。」

ちょっと休んだらもう少し実験してみよう。

俺は台所で食事の用意をする。手軽に済ませたいので、パンと干し肉に野菜のスープだ。庶民の食事はこの程度なのだ。しかもパンは固いのでスープに浸さないと食べれないな。

前世の豊かな食生活の記憶がある分だけ、今のこの食生活が少し辛く感じるな。前世の記憶が思わぬデメリットを生んだものだ。

手早く食事を済ませお茶を淹れてから工房へ戻る。

「さてと、続いては。」

袋から20ケの欠片を取り出して盛る。
ちょっと大きな小山が出来たらスキルを念じる。倍の量の素材を1個の魔玉に注ぎ込むイメージをする。

『・・・・・精製』


煙も2倍ぐらい出ている。成功かな?


煙が消えるとそこには2個の魔玉があった。


「あらら、これは狙いが外れたな。」

素材の量を増やせば魔力量の多い魔玉が作れるかもと思ったのだが、そう上手くはいかなかったようだ。イメージもしっかりと出来ていたのだが、結果はご覧の通りだ。

頭がダルい。さっきの2倍以上の疲労を感じる。これはおそらくスキルの使用で無理があると補正がかかるのだろう。そして補正が働くと魔力を余分に使ってしまうのだろう。

お茶を飲んで頭を休ませる。


「これで納品用の魔玉は準備できたな。明日にでも納品に行こう。」

俺は一仕事を終えた満足感を味わう。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

異世界に飛ばされたけど『ハコニワ』スキルで無双しながら帰還を目指す

かるぼな
ファンタジー
ある日、創造主と言われる存在に、理不尽にも異世界に飛ばされる。 魔獣に囲まれるも何とか生き延びて得たスキルは『ハコニワ』という、小人達の生活が見れる鑑賞用。 不遇スキルと嘆いていたそれは俺の能力を上げ、願いを叶えてくれるものだった。 俺は『ハコニワ』スキルで元の世界への帰還を目指す。

処理中です...