魔具師になったら何をつくろう?

アマクニノタスク

文字の大きさ
上 下
104 / 106
王都暗躍編

第98話 リポポの過去と妄想

しおりを挟む
「またリポポにちょっかいを出してるんでしょ。」

猿の獣人と思われる女性はシュヴァインに近づきながら言った。
2人が並ぶと身長の落差が凄い事になっている。
シュヴァインがおよそ190センチを超えるぐらい。
対して女性の方は150センチより少し低いくらいだ。


「おいおい、シンミャ、俺っちは何も悪くないぞ。悪いのはコイツなんだ。」

「うるさい!さっきからちゃんと見てたんだから。問答無用よ!!」

慌てるシュヴァインの豚っ腹に強烈な正拳突きが決まった。


「はむぅ。」

下腹部を押さえ崩れ落ちるシュヴァイン。
なんて武闘派な人なんだ。


「シンミャ、相変わらず元気そうね。」

「リポポも、活躍は聞いているわ。」

「リポポさん、こちらの方は?」

「あっ、紹介しますね。私が前にパーティーを組んでいたシンミャです。」

「シンミャよ、よろしくね。」

シンミャさんが笑顔で握手を求めてきた。
良かった、怖い人ではなさそうだ。


「ガルドです。サイモンの町で魔具師をやっています。」

「へぇ~、魔具師なんだ。強そうな匂いがするんだけどなぁ。」

「あら、ガルドさんは強いわよ?」

「いやいや、俺はただの魔具師ですよ。それより、そちらのシュヴァインさんは大丈夫なんですか?」

「あっ、コイツ?それなら大丈夫よ。タフなだけが取り柄だから。そのうちに復活するわ。」

ハッハッハっと豪快に笑うシンミャさん。
これがいつものやり取りなんだそうだ。
シュヴァインさんも昔のパーティーメンバーだったそうで、駆け出しの2人を先輩のシュヴァインさんがリーダーとして活動していたんだそうだ。


「う、ブゥ~。痛たた。おい、シンミャ!いつも突然殴るのは止めろと言っているだろ。」

「あら、殴られるのが嫌なら躱せばいいじゃない?」

「馬鹿言うな、お前のパンチを躱せる奴なんてほとんどいないじゃねぇか!」

確かに、アレは見事な一撃だった。
リポポさんも腕の立つ冒険者だしな、シンミャさんも高レベルの冒険者だと思う。
シュヴァインさんは、う~ん、よく分からないや。


「ほら、そんな事よりさっさと仕事に行くわよ。」

「フゴッ、こら!引っ張るな。」

「じゃあね、リポポ!」

シンミャさんは手を振りながら片手でシュヴァインさんを引きずるようにして去って行った。
なんとも豪快な人だ。
引きずられながらシュヴァインさんがこちらへ何かを言っている様子だったけど、聞こえなかったので無かった事にしよう。
ちなみにシンミャさんの解析結果はこんな感じだ。


シンミャ
猿の獣人の19歳の女性
帝都の冒険者
身長147センチ
体重43キログラム
B78 W57 H82 Aカップ


明るめの茶髪をショートカットにしており、小柄なので一見すると少女のような印象だ。
大きな目と耳がチャーミングでボーイッシュな女性だ。


「アイツがいなければ、ここももっと良い場所なのにな。」

リポポさんがポツリと言い放った。


「何かあったんですか?」

「いえいえ、さぁ、次に行きましょうか。」

リポポさんが珍しく話をそらしたな。
たぶん、何かあったんだろうけど、これ以上を聞くのは野暮だろう。
まぁ、聞かなくても何となく分かるけどね。
おそらくシュヴァインさんはリポポさんの事が好きになってしまったのだろう。
しかし、リポポさんは仲良しのシンミャさんがシュヴァインさんを好きな事を聞いていたので、パーティー内の三角関係に悩んだに違いない。
そして、その悩みが大きくなって限界を迎えた時にリポポさんは慣れ親しんだパーティーを抜ける事にして、ソロの冒険者として旅をして回っていたのだろう。
今にして思えば、初めてリポポさんを見かけた時は何処と無く、人を寄せ付けないような雰囲気を出していたと思う。
きっとパーティーとの一件で他人と関わり合う事に少し臆病になっていたのだろう。


「ガルドさん。ガルドさーん。」

ピートに手を引っ張られて、ようやく我に返った。
どうやら盛大に妄想へと浸っていたみたいだ。
気が付いた時には目的のペコラさんの工房の前だった。
どの道を歩いて来たのかも覚えていない。
リポポさんが道を聞きながら案内してくれたらしいのだが、俺は上の空で生返事ばかりだったので少し怒っているらしい。
これは申し訳ない事をしたな。
お詫びにまた美味しいキノコ料理のレシピでも紹介しよう。
まずはペコラさんだ。
良い人だったらお近付きになりたいし、是非ともお願いしたい物もあるしね。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

処理中です...