上 下
1 / 1

あなたは私博士

しおりを挟む
私は綾瀬美雪、自分を好きになれない‥‥なんなら嫌いまである中学2年生だ。
別に家庭環境が悪かったわけでも友達に恵まれないわけでもなかったが気がついたらいつの間にか自分が大嫌いになっていた。

「美雪ーー‥舞ちゃんが課題もってきてくれたわよ」

「ごめん、今出たくないから受け取っておいて」

「まったくもう、あまり心配させちゃダメよ?」

 分かってる、だけど今は気持ちがいっぱいいっぱいなんだ


「はぁ……もういやだ、このままどこかに行きたい」

 いつの間にかそのまま私は眠ってしまった。


「ん? 寝ちゃったのか……て、えぇぇ!? ‥‥ここ‥どこ?」

 私は神殿とも何とも言えぬ紫色の空間にいた‥夢‥なのかこれは? 痛い‥夢じゃないみたいだ。

「なにコレ? あたしさっきまで部屋で寝ていたのに‥なんでこんなとこに?」

「それは君が深い闇に心が囚われてるからだよ‥探そうよ、心の出口を‥一緒に‥」

 
現れたのは黒髪ロングの私と同い年位の少女だ。

「こんにちは、あなたは綾瀬美雪ちゃんかな~?」

「そうだけど、ここはどこであなたは誰?」

「ここは心の神殿、あなたは今自分の心の闇に囚われかけちゃって‥精神の均衡を保つためにここに迷いこんだみたい、あたしは、ヨーミよろしくね‥じゃあ行こうか」

「行くって、どこへ?」

「もちろんこの神殿の出口だよ~ リアルの君は今お昼寝中だからね」


「‥‥待って! リアルの時間の経過時間は?」

「安心して、一日居てもリアルだと5分だから」

 内心ホッとした、リアルで昏睡状態とかシャレにならない。

「ねぇ、どれくらい歩けば出れそう?」

「‥‥わからない、この神殿の深さはその人の闇の深さに比例するから‥‥でも歩けば必ず着く、だから頑張ろ? 美雪ならできる」

「なんでそう思うの? 私もあなたもお互いをまだ知らないのに‥‥私自身自分が大嫌いなのに」

「知ってても知らなくても私はあなたを信じてる」

 この時の彼女の瞳はとても力強かった、それ以上私はなにも言おうとしなかった。


 もう四時間歩いただろうか、過去を思い出した。

  あ‥私バレーボールで狙って当てられまくってたこと一年は続いてたわ‥

 「ヨーミ‥‥歩くの辛いよ‥」

「頑張って‥苦しいのは出口が近い証、もう少しの辛抱だよ」


「もういいよ、 こんなこと思い出すならずっとここにいても」


「ダメだよ! あなたはここから抜け出さなきゃいけないの‥あたしも出なきゃいけないの!」


「ヨーミ‥‥どうしてあなたはそこまで‥‥」


 
ヨーミはそれ以上はなにも言おうとせず、出口の方角を向いて私の手を引いた。


「光だ‥‥やった‥‥ヨーミ、 私たち帰れる‥帰れるんだよ!」

「ねぇ美雪、 帰る前に一つだけ伝えておかなきゃいけないことがあるんだ」

「どうしたの?」

「あたしはあなた自身‥‥あなたの自己肯定の部分なんだ、あなたのいいとこも悪いとこも常に見てきて、一生懸命だけどあたしのこと全然褒めてくれないんだもん」

「あっ‥‥うぅ‥‥ごめん‥‥‥ごめんね‥‥ごめんなさい」

 
私は謝りながらヨーミを‥‥私"を抱き締めた。



 ‥‥‥目が覚めた‥‥見慣れた蛍光灯‥壁紙‥扉、帰ってきたんだ‥ただ、何となく自分の身体に無くしたなにかが戻ってきた感じ。



 ごめんねあたし" おかえりなさい‥あたし"


 
今日からまた生きていく‥この私で‥このあたし"と
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

巨象に刃向かう者たち

つっちーfrom千葉
ミステリー
 インターネット黎明期、多くのライターに夢を与えた、とあるサイトの管理人へ感謝を込めて書きます。資産を持たぬ便利屋の私は、叔母へ金の融通を申し入れるが、拒絶され、縁を感じてシティバンクに向かうも、禿げた行員に挙動を疑われ追い出される。仕方なく、無一文で便利屋を始めると、すぐに怪しい来客が訪れ、あの有名アイドルチェリー・アパッチのためにひと肌脱いでくれと頼まれる。失敗したら命もきわどくなる、いかがわしい話だが、取りあえず乗ってみることに……。この先、どうなる……。 お笑いミステリーです。よろしくお願いいたします。

【完結】一本の電話

高羽志雨
ミステリー
美優(みゆ)の元に届いた一通の手紙。 それは中学校の同窓会の案内だった。 記憶の彼方に追いやっていたイジメの過去。 欠席で返事しようとしていたところに電話がかかってくる。 美優をイジメていた真理恵からだった。 関わらないで生きていこうと思っていたけれど、そういうわけにはいかなさそうだ。 ならば、真理恵と同窓会で会わずにすむ方法を考えよう。 *3500字程度のショートショート *ご都合主義的な展開となっています。

嘘 静寂の証言者

ログ
ミステリー
「静寂の証言者」は、東京で起こった小説家の謎の死を巡るサスペンスミステリーです。 この物語は、若き刑事・佐々木明が主人公で、彼が犯罪の真実を解明する過程を描きます。 事件の背後には深い政治的陰謀が隠されており、佐々木はこの複雑な謎を解き明かすために奔走します。 物語は、真実を求める彼の戦いと、その過程での喪失と再生を描いています。

席は何処?

三月 深
ミステリー
私たちの席はどこ? 登場人物達の思いから、彼らの席を考えて下さい。 様々な悩みを抱える彼らは、どんな思いでせきにつくのでしょうか? 解けたら答え合わせします。 ツイッターで見た方はDMにて それ以外の方は感想にてお願いします。

最近、夫の様子がちょっとおかしい

野地マルテ
ミステリー
シーラは、探偵事務所でパートタイマーとして働くごくごく普通の兼業主婦。一人息子が寄宿学校に入り、時間に余裕ができたシーラは夫と二人きりの生活を楽しもうと考えていたが、最近夫の様子がおかしいのだ。話しかけても上の空。休みの日は「チェスをしに行く」と言い、いそいそと出かけていく。 シーラは夫が浮気をしているのではないかと疑いはじめる。

DREAM DAYS

狩野 理穂
ミステリー
 夢━━現代の科学技術でもそのメカニズムは謎の部分が多い。  夢は、脳が見せているもの。それは、人間の無意識の塊なのだろうか━━

ガレキの楽園

リョウ
ミステリー
西暦2446年。世界はエデンとその他の社会で成り立っていた。エデンに暮らす事を夢見る真人と、同じ学校施設に暮らす少年達。けれど学校では謎の転校が相次ぎ……。学校への不信感と消える友人の謎。 銀河鉄道が見えるというナナツ、引きこもりのカイチ、兄のような存在のユウ。意味深な発言をするナオヤ。マサトとおかしな友人達が学校という閉じられた楽園で過ごす幻想物語。 ラストで世界がひっくり返る、少年だけの世界の幻想系ミステリー。

暗号好きの泥棒

土星の輪っか
ミステリー
「暗号好きの泥棒」と世間から名づけられている、大泥棒、ヒラを、世界的有名な名探偵、ロンドが捕まえる物語

処理中です...