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第三話 剣の従者
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アイーシャも自分の部屋に戻ろうとするが、エルデンが声をかけた。
「何も今から行かなくてもいいんじゃないのか? お前は気絶したばっかりだし、あの魔導人形だってもうちょっとゆっくり時間をかけて調べるべきだ」
エルデンの言葉に、アイーシャは少し考えこむ。
「……私の体調なら心配ないわ。魔力酔いの一種らしいし、今はもう治まってる。今日はダンジョンから金のタイルを持って帰ってきたけど、これがもし偽物なら今日の稼ぎは無いことになる。お化け茸の一匹でも狩ってこないと話にならないわ」
「そりゃそうかも知れんが……」
「心配してくれるのはうれしいけど、はっきり言って今の私達は非常事態なのよ? お金がない。それもかつてないほどにね。この家を売るようなことになったらおしまいよ? その為には毎日少しずつでも稼いでいかないと! あのポンコツも売るか働かせるか、どっちかを選ばないと!」
「……ううむ……分かった。しかし……体調が悪くなったら切上げて早く帰ってくるんじゃぞ」
エルデンとしては、アイーシャにはゆっくり休んで欲しかったが、金がないと言われれば止めることも出来なかった。子供の頃はエルデンが家計を支えていたが、最近は年のせいか内職の手仕事の速度が落ちてきていたし、すぐ疲れるようになってしまった。
その分減った収入はアイーシャが魔物を狩ることで何とかしているが、最近ではエルデンとアイーシャの稼ぎはほとんど同じになっていた。だからアイーシャに対して強く言うことも出来ず、エルデンに出来るのは心配することだけだった。
それがアイーシャの重荷になることは理解しているが、エルデンにとってアイーシャは人生そのもののような存在だった。失うことは考えられない。危険な目には合わせたくなかった。
「ええ、分かってる。無理はしない。これから内職の籠を納品に行くのよね? 私たちが帰るまでちょっと待ってて。一時間はかからないから」
「ああ、分かった」
アイーシャは自分の部屋に戻り、ポケットと雑嚢に入れておいた金のタイルを取り出し小袋に詰めた。もし本物なら、もう一度ダンジョンに行って取りに行かなければならない。
しかし内部構造は毎回変わるので、再びあの部屋に辿り着けるかどうかは分からなかった。だが自分の他には誰もあのダンジョンを知らないのだから、横取りされる心配もない。時間がかかっても回収は可能だろう。
タイルは全部で二十四枚あった。金タイルを入れた小袋は、大きさの割に随分重い。金であれば当然だが、こうなると本物であることを期待してしまう。
机の上に置いてあった鎖帷子と兜を再び装着し、アイーシャはメイスを手に取って振り回す。眩暈が起きることもなく、調子は悪くない。今日は流石にもう一度ダンジョンに入る気にはなれなかったが、近所でお化け茸を狩る程度なら何の問題もなさそうだった。
「よし! 五匹は狩るわよ!」
自分の頬を両手で叩き、アイーシャは自分に気合を入れた。
金タイルの入った小袋と荷物を持って一階に降りる。エルデンは町に納品する藤の籠を背負子に乗せロープで固定しているところだった。五日で七つ作り、それを雑貨屋に毎週納めに行っているのだ。エルデンの仕事は丁寧で、作ったそばから売れてしまう人気商品だった。
「はい、おじいちゃん。金タイル二十四枚よ」
アイーシャは重い小袋をエルデンに手渡す。
「ああ、分かった。本物だったらお金に換えてくるよ。とりあえず三枚分でいいかの。一度に出すと出所を怪しまれそうじゃ」
エルデンは小袋の重さを確かめるように軽く上下に動かしながら言った。
「そうね。換金の仕方はお爺ちゃんに任せるから、うまくやってきてよ。じゃ、行ってくるから」
「ああ……気を付けてな……」
言いながらも、エルデンの目は行かないでと言っていた。アイーシャはそんなエルデンの目をまともに見る事が出来ず、逃げるように家の外に出ていった。
「何も今から行かなくてもいいんじゃないのか? お前は気絶したばっかりだし、あの魔導人形だってもうちょっとゆっくり時間をかけて調べるべきだ」
エルデンの言葉に、アイーシャは少し考えこむ。
「……私の体調なら心配ないわ。魔力酔いの一種らしいし、今はもう治まってる。今日はダンジョンから金のタイルを持って帰ってきたけど、これがもし偽物なら今日の稼ぎは無いことになる。お化け茸の一匹でも狩ってこないと話にならないわ」
「そりゃそうかも知れんが……」
「心配してくれるのはうれしいけど、はっきり言って今の私達は非常事態なのよ? お金がない。それもかつてないほどにね。この家を売るようなことになったらおしまいよ? その為には毎日少しずつでも稼いでいかないと! あのポンコツも売るか働かせるか、どっちかを選ばないと!」
「……ううむ……分かった。しかし……体調が悪くなったら切上げて早く帰ってくるんじゃぞ」
エルデンとしては、アイーシャにはゆっくり休んで欲しかったが、金がないと言われれば止めることも出来なかった。子供の頃はエルデンが家計を支えていたが、最近は年のせいか内職の手仕事の速度が落ちてきていたし、すぐ疲れるようになってしまった。
その分減った収入はアイーシャが魔物を狩ることで何とかしているが、最近ではエルデンとアイーシャの稼ぎはほとんど同じになっていた。だからアイーシャに対して強く言うことも出来ず、エルデンに出来るのは心配することだけだった。
それがアイーシャの重荷になることは理解しているが、エルデンにとってアイーシャは人生そのもののような存在だった。失うことは考えられない。危険な目には合わせたくなかった。
「ええ、分かってる。無理はしない。これから内職の籠を納品に行くのよね? 私たちが帰るまでちょっと待ってて。一時間はかからないから」
「ああ、分かった」
アイーシャは自分の部屋に戻り、ポケットと雑嚢に入れておいた金のタイルを取り出し小袋に詰めた。もし本物なら、もう一度ダンジョンに行って取りに行かなければならない。
しかし内部構造は毎回変わるので、再びあの部屋に辿り着けるかどうかは分からなかった。だが自分の他には誰もあのダンジョンを知らないのだから、横取りされる心配もない。時間がかかっても回収は可能だろう。
タイルは全部で二十四枚あった。金タイルを入れた小袋は、大きさの割に随分重い。金であれば当然だが、こうなると本物であることを期待してしまう。
机の上に置いてあった鎖帷子と兜を再び装着し、アイーシャはメイスを手に取って振り回す。眩暈が起きることもなく、調子は悪くない。今日は流石にもう一度ダンジョンに入る気にはなれなかったが、近所でお化け茸を狩る程度なら何の問題もなさそうだった。
「よし! 五匹は狩るわよ!」
自分の頬を両手で叩き、アイーシャは自分に気合を入れた。
金タイルの入った小袋と荷物を持って一階に降りる。エルデンは町に納品する藤の籠を背負子に乗せロープで固定しているところだった。五日で七つ作り、それを雑貨屋に毎週納めに行っているのだ。エルデンの仕事は丁寧で、作ったそばから売れてしまう人気商品だった。
「はい、おじいちゃん。金タイル二十四枚よ」
アイーシャは重い小袋をエルデンに手渡す。
「ああ、分かった。本物だったらお金に換えてくるよ。とりあえず三枚分でいいかの。一度に出すと出所を怪しまれそうじゃ」
エルデンは小袋の重さを確かめるように軽く上下に動かしながら言った。
「そうね。換金の仕方はお爺ちゃんに任せるから、うまくやってきてよ。じゃ、行ってくるから」
「ああ……気を付けてな……」
言いながらも、エルデンの目は行かないでと言っていた。アイーシャはそんなエルデンの目をまともに見る事が出来ず、逃げるように家の外に出ていった。
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