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第一話 いざ、ダンジョンへ
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右の穴は入口は少し狭かったが、内部はこれまでの通路以上に広くなっていた。壁も床も岩で、巨大な一つの岩をくりぬいて作られたようだった。荒く削られたのではなく、岩肌はとても滑らかだった。人が掘ったとは思えない。だからこそ物見の洞は大地神ヴォータルが作ったものと言われているが、そんな神秘に感動している暇はなかった。
アイーシャは目を皿のようにしてダンジョンの入り口を探す。入口を隠すような大きな岩はどこにもなく、ただ滑らかに均された岩壁が続いているだけだった。
ひょっとして、もうダンジョンは死んで岩と同化してしまったのか? そう思いながら進んでいくと、ついに突き当りにまで来てしまった。ここに入り口があるのかともおもったが、そうではなかった。どこをどう見ても、入り口のような痕跡はない。継ぎ目も、隠す様なものも、何もない。
アイーシャは暗い洞穴の中で、その心までが闇に覆われていくような気がしていた。未来が消えていく。金がないというだけで、人生と言うのは容易に闇に転がり落ちてしまうのだ。そしてその闇から這い上がることは、とても難しい。ぬかるんだ穴の底で、手を滑らせながら壁を登ろうとするようなものだ。
チチ、チ!
魔法カナリアの囀りだった。魔物が出たのか?! アイーシャはハッとして振り返るが、魔法カナリアは緑色のままだった。だが何かを知らせるように、踊るように空中で右に左に動いていた。
「何かある……って事?」
アイーシャは魔法カナリアのいる場所まで戻り、その周辺の岩を確認した。すると……ごく僅かにだが岩の色が異なっている部分があった。局所的ではなく、面的に、ちょうど人が通れるくらいの大きさの穴のように、色が少し濃くなっていた。
触れてみると感触は周りの岩と同様に硬い。だがメイスで叩いてみると、岩の部分とは違って少し籠ったような音がする。中身の割れた瓜を叩いたような感じだった。この奥は空洞の可能性がある。
「ここ……? ここなの? だったら……!」
アイーシャはメイスを大上段に振りかぶり、黒っぽい岩の部分に向かって思い切り振り下ろした。
鈍い音がして、メイスは岩の壁にめり込んだ。いや、違う。表面の粘土のような層を打ち破り、その奥の空洞が見えているようだった。
「やっぱりここなのね! だったら、こんな蓋ぶっ壊してやる!」
魔法カナリアも応援するように囀り、アイーシャはメイスを景気よく振り下ろし入口を隠す粘土層を破壊していった。数分でくぐって通れるくらいの大きさの穴になり、アイーシャは肩で息をしながら殴る手を止めた。
「はぁはぁ……ここがダンジョン……? 死んではいなかったのね……良かった」
穴の内部はぼんやりと明るい。手前の通路は洞窟と同じように暗いが、奥にあるダンジョンの入り口は光があるようだった。ダンジョン内部はダンジョンの持つ魔力により明るさが保たれている。光っているという事は、ダンジョンはまだ生きて機能しているという事だ。あとはここにお宝がある事を祈るばかりだった。
魔法カナリアが穴をくぐり前に進む。うっすらとその体が黄色になり、警告するように鋭い囀りを発する。
中で何が待っているのかは分からない。魔物なのか、危険な罠や毒性のガスが待っているのかも知れない。だが退くことはできない。アイーシャは深呼吸し、ダンジョンへと進んでいった。
アイーシャは目を皿のようにしてダンジョンの入り口を探す。入口を隠すような大きな岩はどこにもなく、ただ滑らかに均された岩壁が続いているだけだった。
ひょっとして、もうダンジョンは死んで岩と同化してしまったのか? そう思いながら進んでいくと、ついに突き当りにまで来てしまった。ここに入り口があるのかともおもったが、そうではなかった。どこをどう見ても、入り口のような痕跡はない。継ぎ目も、隠す様なものも、何もない。
アイーシャは暗い洞穴の中で、その心までが闇に覆われていくような気がしていた。未来が消えていく。金がないというだけで、人生と言うのは容易に闇に転がり落ちてしまうのだ。そしてその闇から這い上がることは、とても難しい。ぬかるんだ穴の底で、手を滑らせながら壁を登ろうとするようなものだ。
チチ、チ!
魔法カナリアの囀りだった。魔物が出たのか?! アイーシャはハッとして振り返るが、魔法カナリアは緑色のままだった。だが何かを知らせるように、踊るように空中で右に左に動いていた。
「何かある……って事?」
アイーシャは魔法カナリアのいる場所まで戻り、その周辺の岩を確認した。すると……ごく僅かにだが岩の色が異なっている部分があった。局所的ではなく、面的に、ちょうど人が通れるくらいの大きさの穴のように、色が少し濃くなっていた。
触れてみると感触は周りの岩と同様に硬い。だがメイスで叩いてみると、岩の部分とは違って少し籠ったような音がする。中身の割れた瓜を叩いたような感じだった。この奥は空洞の可能性がある。
「ここ……? ここなの? だったら……!」
アイーシャはメイスを大上段に振りかぶり、黒っぽい岩の部分に向かって思い切り振り下ろした。
鈍い音がして、メイスは岩の壁にめり込んだ。いや、違う。表面の粘土のような層を打ち破り、その奥の空洞が見えているようだった。
「やっぱりここなのね! だったら、こんな蓋ぶっ壊してやる!」
魔法カナリアも応援するように囀り、アイーシャはメイスを景気よく振り下ろし入口を隠す粘土層を破壊していった。数分でくぐって通れるくらいの大きさの穴になり、アイーシャは肩で息をしながら殴る手を止めた。
「はぁはぁ……ここがダンジョン……? 死んではいなかったのね……良かった」
穴の内部はぼんやりと明るい。手前の通路は洞窟と同じように暗いが、奥にあるダンジョンの入り口は光があるようだった。ダンジョン内部はダンジョンの持つ魔力により明るさが保たれている。光っているという事は、ダンジョンはまだ生きて機能しているという事だ。あとはここにお宝がある事を祈るばかりだった。
魔法カナリアが穴をくぐり前に進む。うっすらとその体が黄色になり、警告するように鋭い囀りを発する。
中で何が待っているのかは分からない。魔物なのか、危険な罠や毒性のガスが待っているのかも知れない。だが退くことはできない。アイーシャは深呼吸し、ダンジョンへと進んでいった。
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