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碧眼の魔性
第十四話 追跡
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一番近い町のサッペンまでは歩いて二時間。そこで虫車を手に入れてジョン達を追いかける。
武装と最低限の荷物を持って俺とアレックスはサッペンに向かった。そして着いたんだが、一つ問題があった。虫車を借りるのに町をうろつくには、アレックスは目立ちすぎるという事だった。
今更目立とうがそんなことを気にしている場合じゃない気もしたが、アレックスが言うには、緊急事態であっても基本は人に見られてはいけないらしい。それがモーグ族の掟だという。
じゃあシャディーンとタナーンはどうなるんだ? あいつらは堂々と昼日中の街中を歩きまわっていた。そう思ったが、あの二人は別だという。純血のモーグ族ではないという事らしかった。
掟は掟で好きにしてもらえばいいが、虫車が必要なことに変わりはない。そして俺は、金を持って今まさに車屋の親父と交渉をしているところだ。
「しかしだね……金を出すと入っても、こちらも予定があるんですよ、分かりますか? うちの虫車を頼りにしている方も大勢いますからね?」
車屋の親父は腕組みをしわざとらしく眉間にしわを寄せ、口をへの字に曲げる。
「分かるよ、分かる。荷を運んだり、人を乗せたり、そりゃ色々虫は使うだろうけどさ。二日間ばかり貸してもらいたいんだよ。料金に色つけるからよ?」
「まあそれがどのくらいかにもよりますがね~?」
親父が片目でチラリと俺の方を見る。正確には俺が脇に抱えている財布だ。アレックスにもらった金がざっと五十銀クォータは入っている。硬貨の触れ合う音を聞いて、虫屋の親父は俺からふんだくろうと考えているんだろう。
別にこの金を全部渡してもいい。それはアレックスからも了解は取っているし、金はまだ別にあるらしい。だが簡単に金を見せると足元を見られる。もっと出せと言われて値を吊り上げられると、それこそ有り金をすべて奪われることになる。
それに金を持っていることが広まると、余計な厄介ごとを招くことにもなる。ごろつきに付きまとわれたりするのは勘弁だ。こっちはジョンを追うのに手一杯だってのに、これ以上のもめごとは御免こうむりたい。
だから俺はなるべく相場に近い金で借りられるように、薄ら笑いを浮かべて店の親父と腹の探り合いをしている。
「相場が~大体、時間三銅トーバだろ? で、一日だと四十八銅トーバ。だからよ、一日五十銅トーバ出すよ! 二日で百だ!」
「二日で百~? なにしろ急なお話ですからね~」
この狸親父、さっきからそればっかりだ。
「まいったな~……ちょっと」
俺は手招きをし、親父に耳打ちをする。親父は体を傾けて、ずいとこちらに寄ってくる。
「ここだけの話なんだがね、首都と縁深いさるお方が急にこの辺の見分を深めたいとおっしゃっててね、どうしても車がいるんですよ。ただお連れの方が色々と訳ありの方で……口の堅いしっかりした車屋じゃないと駄目だと」
「……ほ~」
「ちんけな用ならその辺の車屋も考えるんですがね、ここらで一番の車屋はどこかっていったら、そりゃあおたくでしょ? だからね、ちょっとどうしても用立ててもらわないと困るんですよ」
「それはつまり……」
今度は親父が俺に耳打ちをする。
「代官のトレネリ様の辺り……?」
「いや~それ以上は勘弁を」
俺はわざとらしく顔の前で手を合わせる。親父は分かった様な顔でにやりと笑った。
「今回の車の用立ての事も万事つつがなくいけば、覚えも明るいかと……」
「ほう~……なるほどね……うむ、まあ……」
親父は顎髭を手でしごきながら思案している様子だった。全部俺の適当な出まかせなのに、信じる馬鹿もいるもんなんだな。
「ま、いいでしょう。そちらも随分お困りのようですし」
「いいんですか?」
「ええ。今から二日間、四十八時間という事で」
「あ~ありがとうございます! さすがこの界隈で名のある車屋だけはありますね。急なお願いだったのに~」
「まあ急な用向きのお客さんのためにこそあるのが虫車ですからね。それは当然ですよ」
親父は謙遜しているようなことを言いながら、胸をそびやかしていた。
「ただし、料金は二日で百二十銅トーバですよ?」
「はい、それはもう! その料金でも助かります! ではちょっとお待ちください……」
俺は革袋の中をガサゴソと探す。銅トーバは百二十枚もないが、銀クォータはたくさんある。八銅トーバで一銀クォータだから、百二十銅トーバだと……十五銀クォータか。
「ではこれで」
俺は十五枚の銀クォータ貨幣を親父に渡す。親父は指で一枚一枚舐めるように指で確認しながらにんまりと笑った。普通より二割増しだから、そりゃあ笑みも浮かぶだろう。
まったく面倒くさいおっさんだった。しかし借りられてよかった。
俺は受け取った虫車でアレックスとの合流地点に急いだ。
虫車で街道を進む。俺が御者で、アレックスは客車の中だ。もうじき日暮れで、影が長くなってきた。
虫は賢いので見ていなくても街道沿いであれば勝手に進んでくれるが、ジョンやその仲間たちが襲ってこないとも限らない。周囲の警戒を兼ねて御者台から周りを見ていた。背後はアレックスが機械を使って確認している。何でも、カメラという機械で人間の目の代わりにものを見ることができるらしい。
そして今、アレックスは追跡装置でアクィラの位置を確認していた。
「どうだ。分かるのか」
「ああ、確認できる。あちらも街道沿いを進んでいるようだ。速度も一定。虫車に乗っていると思われる」
「追いつけそうか」
「速度は……同じだな。このままでは追いつけない。距離にして四十タルターフ、八時間の差だ」
「奴らが八時間先に研究所に着いたとして、その五時間で装置は完成するのか? アクィラはどうなる?」
「装置の完成は間近のはずだが、八時間では完成しないだろう。しかし猶予はせいぜい一日くらいかも知れん」
「一日? じゃあほとんど余裕はないんだな」
「正確なところは私にもわからん。シャディーン達ががいればもう少し分かるはずだが……死者に文句を言うわけにもいかない」
「俺たちは本当にジョンを止められるのか? 着いたはいいが手遅れでしたじゃ意味がないぜ。合流するっていうお前の仲間に先に行ってもらうわけにはいかないのか?」
「一人では危険が大きすぎる。返り討ちにあってしまうだろう。そして我々も戦力が不足することになり、どっちも手詰まりになる。遅くはなるが、我々を待って合流してもらうしかない」
気は焦るが、これ以上オサムシの速度を上げると早くへたっばっちまう。そうなれば元も子もない。この速度で進み続けることしかできない。
上空を虫が飛んでいた。トンボだ。二、三匹が空中でじゃれ合うように飛び回っている。自由なものだ。
そう言えばジョンからアクィラを守ろうとしたのもトンボだった。俺にとっても命の恩人なのかもしれない。
「トンボ、ね。あんな風に飛べたらいいのにな。どこにでもすぐに行けるぜ」
「そうだな。過去にはあったらしい。私も見たことはないが」
「機械か? 空を飛ぶ? 嘘だろ?! 本当にあったのか?」
「何百人も一度に運べるものや、それこそトンボのように機械を背負って飛べるものもあったらしい。私の知る限り、現存はしていないが」
何百人が一度に……吊るすのか? 何かに乗るのか? 見当もつかない。
「へえ、そりゃ残念だな。そういう機械は……どっか一か所に固まって置いてあるのか? 倉庫みたいなところに」
「色々だ。カドホックの施設には大型の機械はない。部屋と、人の背丈ほどの工作機械があるだけだ。そういう施設もあれば、巨大な屋敷の様な広さを持ち、機械虫のように大きな機械を保管している場所もある。それらの全貌は我々にも分かっていない」
「分かってないって……探してる途中って事か?」
「一覧表があるわけではないからな。方々を捜し歩いて、信号を探すんだ。それが見つかったら、解読してロックを解除する」
「そして……封印する?」
「そうだ。破壊することもある」
「何だかもったいねえな」
「過去を知る貴重な資料であることは間違いないが、それを教訓とするには我々は幼すぎる。手にすれば間違いなく過ちを犯すだろう」
「前も聞いたような気がするけどよ、そんなに……ひどいものなのか? 昔の戦争の道具ってのは」
ジョンやアレックスの武器を見ても、俺たちの武器の延長にあるようにしか見えない。簡単に作ることはできなさそうだが、真似はできそうだ。それがそこまで危険な武器なのだとは、どうしても思えなかった。
「ひどいものもある。君らの武器と大差のないものもあるが、問題はそこではない。もっと強い力があると知れば、みんな血眼になってそれを探す。そして一部の者が独占し、不当な支配や暴力が蔓延ることになる」
「それが幼いって事か」
「そうだ。だから我々モーグ族は長きにわたり封印の業を為している」
「いつか、使える日が来るのか? その物騒な機械を」
少し考え、アレックスは答えた。
「……使っていいと判断できる段階であれば、その時点の人々は危険な機械を使うことは無いだろう。だから結局、使われることはないし、使わせもしない」
「その日までずっとあんたらは働き続けるのか」
「そうだ。何年でも、何千年でもな」
「気の長い話だ。世界が虫だらけになる方が早いんじゃないのか?」
「かも知れん。虫は年々増え続けているからな」
もうじき日は暮れる。しかし止まることはできない。ジョン達もそうだろう。ここでさらに離されるわけにはいかない。
並足のオサムシを速足にしたいが、じっとこらえる。虫に委ねるというのが、こんなにもじれったいものだとは思わなかった。
武装と最低限の荷物を持って俺とアレックスはサッペンに向かった。そして着いたんだが、一つ問題があった。虫車を借りるのに町をうろつくには、アレックスは目立ちすぎるという事だった。
今更目立とうがそんなことを気にしている場合じゃない気もしたが、アレックスが言うには、緊急事態であっても基本は人に見られてはいけないらしい。それがモーグ族の掟だという。
じゃあシャディーンとタナーンはどうなるんだ? あいつらは堂々と昼日中の街中を歩きまわっていた。そう思ったが、あの二人は別だという。純血のモーグ族ではないという事らしかった。
掟は掟で好きにしてもらえばいいが、虫車が必要なことに変わりはない。そして俺は、金を持って今まさに車屋の親父と交渉をしているところだ。
「しかしだね……金を出すと入っても、こちらも予定があるんですよ、分かりますか? うちの虫車を頼りにしている方も大勢いますからね?」
車屋の親父は腕組みをしわざとらしく眉間にしわを寄せ、口をへの字に曲げる。
「分かるよ、分かる。荷を運んだり、人を乗せたり、そりゃ色々虫は使うだろうけどさ。二日間ばかり貸してもらいたいんだよ。料金に色つけるからよ?」
「まあそれがどのくらいかにもよりますがね~?」
親父が片目でチラリと俺の方を見る。正確には俺が脇に抱えている財布だ。アレックスにもらった金がざっと五十銀クォータは入っている。硬貨の触れ合う音を聞いて、虫屋の親父は俺からふんだくろうと考えているんだろう。
別にこの金を全部渡してもいい。それはアレックスからも了解は取っているし、金はまだ別にあるらしい。だが簡単に金を見せると足元を見られる。もっと出せと言われて値を吊り上げられると、それこそ有り金をすべて奪われることになる。
それに金を持っていることが広まると、余計な厄介ごとを招くことにもなる。ごろつきに付きまとわれたりするのは勘弁だ。こっちはジョンを追うのに手一杯だってのに、これ以上のもめごとは御免こうむりたい。
だから俺はなるべく相場に近い金で借りられるように、薄ら笑いを浮かべて店の親父と腹の探り合いをしている。
「相場が~大体、時間三銅トーバだろ? で、一日だと四十八銅トーバ。だからよ、一日五十銅トーバ出すよ! 二日で百だ!」
「二日で百~? なにしろ急なお話ですからね~」
この狸親父、さっきからそればっかりだ。
「まいったな~……ちょっと」
俺は手招きをし、親父に耳打ちをする。親父は体を傾けて、ずいとこちらに寄ってくる。
「ここだけの話なんだがね、首都と縁深いさるお方が急にこの辺の見分を深めたいとおっしゃっててね、どうしても車がいるんですよ。ただお連れの方が色々と訳ありの方で……口の堅いしっかりした車屋じゃないと駄目だと」
「……ほ~」
「ちんけな用ならその辺の車屋も考えるんですがね、ここらで一番の車屋はどこかっていったら、そりゃあおたくでしょ? だからね、ちょっとどうしても用立ててもらわないと困るんですよ」
「それはつまり……」
今度は親父が俺に耳打ちをする。
「代官のトレネリ様の辺り……?」
「いや~それ以上は勘弁を」
俺はわざとらしく顔の前で手を合わせる。親父は分かった様な顔でにやりと笑った。
「今回の車の用立ての事も万事つつがなくいけば、覚えも明るいかと……」
「ほう~……なるほどね……うむ、まあ……」
親父は顎髭を手でしごきながら思案している様子だった。全部俺の適当な出まかせなのに、信じる馬鹿もいるもんなんだな。
「ま、いいでしょう。そちらも随分お困りのようですし」
「いいんですか?」
「ええ。今から二日間、四十八時間という事で」
「あ~ありがとうございます! さすがこの界隈で名のある車屋だけはありますね。急なお願いだったのに~」
「まあ急な用向きのお客さんのためにこそあるのが虫車ですからね。それは当然ですよ」
親父は謙遜しているようなことを言いながら、胸をそびやかしていた。
「ただし、料金は二日で百二十銅トーバですよ?」
「はい、それはもう! その料金でも助かります! ではちょっとお待ちください……」
俺は革袋の中をガサゴソと探す。銅トーバは百二十枚もないが、銀クォータはたくさんある。八銅トーバで一銀クォータだから、百二十銅トーバだと……十五銀クォータか。
「ではこれで」
俺は十五枚の銀クォータ貨幣を親父に渡す。親父は指で一枚一枚舐めるように指で確認しながらにんまりと笑った。普通より二割増しだから、そりゃあ笑みも浮かぶだろう。
まったく面倒くさいおっさんだった。しかし借りられてよかった。
俺は受け取った虫車でアレックスとの合流地点に急いだ。
虫車で街道を進む。俺が御者で、アレックスは客車の中だ。もうじき日暮れで、影が長くなってきた。
虫は賢いので見ていなくても街道沿いであれば勝手に進んでくれるが、ジョンやその仲間たちが襲ってこないとも限らない。周囲の警戒を兼ねて御者台から周りを見ていた。背後はアレックスが機械を使って確認している。何でも、カメラという機械で人間の目の代わりにものを見ることができるらしい。
そして今、アレックスは追跡装置でアクィラの位置を確認していた。
「どうだ。分かるのか」
「ああ、確認できる。あちらも街道沿いを進んでいるようだ。速度も一定。虫車に乗っていると思われる」
「追いつけそうか」
「速度は……同じだな。このままでは追いつけない。距離にして四十タルターフ、八時間の差だ」
「奴らが八時間先に研究所に着いたとして、その五時間で装置は完成するのか? アクィラはどうなる?」
「装置の完成は間近のはずだが、八時間では完成しないだろう。しかし猶予はせいぜい一日くらいかも知れん」
「一日? じゃあほとんど余裕はないんだな」
「正確なところは私にもわからん。シャディーン達ががいればもう少し分かるはずだが……死者に文句を言うわけにもいかない」
「俺たちは本当にジョンを止められるのか? 着いたはいいが手遅れでしたじゃ意味がないぜ。合流するっていうお前の仲間に先に行ってもらうわけにはいかないのか?」
「一人では危険が大きすぎる。返り討ちにあってしまうだろう。そして我々も戦力が不足することになり、どっちも手詰まりになる。遅くはなるが、我々を待って合流してもらうしかない」
気は焦るが、これ以上オサムシの速度を上げると早くへたっばっちまう。そうなれば元も子もない。この速度で進み続けることしかできない。
上空を虫が飛んでいた。トンボだ。二、三匹が空中でじゃれ合うように飛び回っている。自由なものだ。
そう言えばジョンからアクィラを守ろうとしたのもトンボだった。俺にとっても命の恩人なのかもしれない。
「トンボ、ね。あんな風に飛べたらいいのにな。どこにでもすぐに行けるぜ」
「そうだな。過去にはあったらしい。私も見たことはないが」
「機械か? 空を飛ぶ? 嘘だろ?! 本当にあったのか?」
「何百人も一度に運べるものや、それこそトンボのように機械を背負って飛べるものもあったらしい。私の知る限り、現存はしていないが」
何百人が一度に……吊るすのか? 何かに乗るのか? 見当もつかない。
「へえ、そりゃ残念だな。そういう機械は……どっか一か所に固まって置いてあるのか? 倉庫みたいなところに」
「色々だ。カドホックの施設には大型の機械はない。部屋と、人の背丈ほどの工作機械があるだけだ。そういう施設もあれば、巨大な屋敷の様な広さを持ち、機械虫のように大きな機械を保管している場所もある。それらの全貌は我々にも分かっていない」
「分かってないって……探してる途中って事か?」
「一覧表があるわけではないからな。方々を捜し歩いて、信号を探すんだ。それが見つかったら、解読してロックを解除する」
「そして……封印する?」
「そうだ。破壊することもある」
「何だかもったいねえな」
「過去を知る貴重な資料であることは間違いないが、それを教訓とするには我々は幼すぎる。手にすれば間違いなく過ちを犯すだろう」
「前も聞いたような気がするけどよ、そんなに……ひどいものなのか? 昔の戦争の道具ってのは」
ジョンやアレックスの武器を見ても、俺たちの武器の延長にあるようにしか見えない。簡単に作ることはできなさそうだが、真似はできそうだ。それがそこまで危険な武器なのだとは、どうしても思えなかった。
「ひどいものもある。君らの武器と大差のないものもあるが、問題はそこではない。もっと強い力があると知れば、みんな血眼になってそれを探す。そして一部の者が独占し、不当な支配や暴力が蔓延ることになる」
「それが幼いって事か」
「そうだ。だから我々モーグ族は長きにわたり封印の業を為している」
「いつか、使える日が来るのか? その物騒な機械を」
少し考え、アレックスは答えた。
「……使っていいと判断できる段階であれば、その時点の人々は危険な機械を使うことは無いだろう。だから結局、使われることはないし、使わせもしない」
「その日までずっとあんたらは働き続けるのか」
「そうだ。何年でも、何千年でもな」
「気の長い話だ。世界が虫だらけになる方が早いんじゃないのか?」
「かも知れん。虫は年々増え続けているからな」
もうじき日は暮れる。しかし止まることはできない。ジョン達もそうだろう。ここでさらに離されるわけにはいかない。
並足のオサムシを速足にしたいが、じっとこらえる。虫に委ねるというのが、こんなにもじれったいものだとは思わなかった。
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