新説 桃太郎

本来タケル

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新説 桃太郎

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(新説 桃太郎)
・昔々、ある所におじいさんおばあさんがおった。
ある晴れた日、おじいさんは山へ食材集めに、おばあさんは川へ洗濯に行った。おばあさんが洗濯物を洗い終えそろそろ帰ろうとするとき、遠くからおばあさんを呼ぶ声がした。
「ばあさんや、ばあさんや」
おばあさんが目を凝らし声がするほうを見ると、おじいさんが駆け足でこちらの方にやって来る。
「ばあさん、赤ん坊じゃ、赤ん坊を見つけてしまった。山で赤ん坊を見つけてしまったんじゃ」と言いながら、おじいさんが両手に何かを抱え、こちらに向かって来る。おばあさんは、おじいさんの言ってる意味がよくわからず、おじいさんがこちらに来るのを待っておった。
「ハア、ハア、ハア、水をくれ、ばあさん、ゴク、ゴク、ゴク、ばあさん、山に赤ん坊が捨ててあったんじゃが、周りを見渡しても人の気配はないし、このままじゃ野犬にでもかみ殺されてしまうと思って、急ぎ拾ってどうするか考えておったが、とりあえずばあさんに相談せにゃと思って、走ってきたとこじゃ、どうする、ばあさんや?」
おばあさんは、おじいさんが話す間ジィーと赤ちゃんを見ていたが、おじいさんの話が終わると
「じいさんや、今日の仕事は中止して、村長の所に話に行こう。」
と言った。・・・・
「村長、村長はおろうかー」 
「なんじゃー、あかしじいさんか、どうしたー」
「実は、山で赤ん坊を拾ったんじゃ、どうしたものかと思って村長に話を聞きに来たんじゃ、ほれ、この子じゃ」おじいさんは言いながら、村長に赤ん坊を見せた。
「ふむ。」
村長はそう一言いうと、
「村の者をみんな集めて話しをしよう」と言った。・・・・・
「よし、皆、集まったな。実は今日あかしじいさんが山で捨て子を拾った。どうしたものか、皆の意見を聞きたい。」
「自分らが食うだけで精一杯じゃ、鬼の年貢の取り立ては日ごとにきつうなる。こんな世の中で育てるなんてかわいそうなだけじゃ。だれが生んだかわからぬような赤ん坊は、死んだ方がましじゃ。殺そう。」
座の一番前にいたこの村一番の年配者の老人が荒く、喋った。
「そうじゃな」  「仕方ない」
村の年配者の老人の声に、二人、三人、呼応した。他の者はみな、下を向いていた。その時あかしおじいさんに抱えられていた赤ん坊が急に泣き始めた。ほぼそれと同時に、晴れていた空に急速に黒い雲がかかり雨が落ちたかと思うと、それだけではなく同時に雷がなり始めた。それらは全て一瞬の出来事だった。
一同沈黙していたが、心の中は
「なんじゃ?」  「これはどうした事か?」
と、動揺していた。
あかしおじいさんが、急に
「この子は天の子かも知れん。」
と言いその場に立った。
皆、あかしおじいさんの方を見つめた。
あかしおじいさんは喋り始めた。
「実はこの赤ん坊は山の奥で見つけたんじゃが、そこは村の者でも近よらん場所じゃ、村の外の人間が勝手に捨てたとも考えにくい。村の者で捨てるような奴はいないと思う。大事なことは村の皆で話して決めるきまりじゃからな。あげくにこの子を包んでいた毛布じゃ、こんなにボロボロなのに中の赤ん坊は汚れ一つない。加えて今の雷じゃ、きっとこの子は天からの使いじゃと思うんじゃが、わしら夫婦に育てさせてくれんか、どうじゃ。」
あかしおじいさんは皆の顔を見た後、最後に村長の顔を見た。村長も皆も一同に
「信じられないものを見た」
という表情をして、皆ゆっくりと、コクリとうなずいた。さっきまでの雨雲と雷がうそのように、空は晴れていた。
おじいさんとおばあさんが赤ん坊を連れて家に帰った。
「おばあさんや、今日からこの赤ん坊はわしらの子じゃ。さっそくじゃが名前を付けんといかん。なんという名がいいかのう。」
おばあさんは
「うーん」
と言っていっときの間かんがえていたが、急に口を開き
「そうじゃ、今は桃がいいころ合いじゃ、桃という字を取って桃太郎はどうじゃ。」
今度はおじいさんが考える番だった。
「うーん、桃、桃、うん、そうじゃ、いい名じゃ、そうしよう、お前の名は今日から桃太郎じゃ、わしらの子じゃ、一緒に暮らそうぞ」といい桃太郎を両手で上へとあげた。
・・・・・18年後・・・・・
桃太郎さん桃太郎さん、鬼の奴らがまた来たぞ。
「来たか、いいな、鬼に歯向かうな、奴らのゆう通り食べ物を出すんだぞ」
「桃太郎さん、今は貴方が村長だ。貴方が村の事を決めるから、意見はしないが、奴らのいう通りしてたら、村の皆、餓死してしまう。」
と、泣きながら忠兵衛は言った。桃太郎は
「今日が最後だ、これで鬼の年貢の取り立てが終わる。」
と忠兵衛の肩を優しく叩きながら言った。
忠兵衛は
「何か考えがあるのか?」
と桃太郎に問いかけたが、桃太郎はニッコリ笑っているだけであった。
鬼の取り立ては目にあまるものだった。彼らは食物を欲しいがままに奪い去って行く。それで飢える者がいても、死ぬものがいても、なんの関係もないと言わんがままに、時にはその手に持ちたる鉄棒で、少しでも気に食わないと、人を殺し、家を破壊する。彼らが来た後は、強烈な台風が通り過ぎたような光景になった。
「いや、強烈な台風でもここまではならない、皆、今日だけ我慢してくれ、仇は必ずとる。」
と桃太郎は、自身の胸中に言った。
1ヵ月後、桃太郎は村の者を一堂に集めた。
「何だ?」  「どうした?」  「何があった?」
村の人達は皆そわそわしていた。
なんせ桃太郎が皆を集めるなんて、初めての事だったからだ。桃太郎が来た。桃太郎は皆の顔を見た後、言い放った。
「皆、聞いてくれ、私は9才の頃自分自身に誓った事がある。いつの日か必ず鬼を倒す事を。」
座はそれまで、小さな声でささやき合っていた人たちも含め、完全に沈黙した。桃太郎は話をつづけた。
「鬼の取り立ては日ごと年ごとにひどくなる。家を壊された者、無意味に殺された者は少なくない。このままでは全員餓死してしまう。我々に残された道は二つ。このまま餓死するのを待つか、鬼を倒すかである。皆はどうする。私は一人でも戦う。その為に生まれてきたと言っても言い過ぎではない。私と一緒に鬼と戦う者は、声をあげよ。」
桃太郎はそう言うと、拳を掲げた。最初に座にいた5名ほどの者達が、
「ウオー」
と声をあげ拳をあげた。
それにつられてあちこちで手が上がる。
「俺の子はあいつらに殺された。まだ3歳だったのに、奴らの前をただ歩いたという理由だけで。」
と言いながら、顔を真っ赤にしている男がいれば、
「私は、お腹の中に赤ん坊がいるから、これ以上食べ物をもっていかれると、栄養が失くなって赤ん坊が育たないといったら、お腹を金棒で殴られた。そのせいで流産した。失くした子の弔い合戦よ」
と息荒く、喋る夫人がいた。その場を泣き声とも、怒号とも区別が付かない熱気が支配した。その光景を見ていた桃太郎は、もう一度手を突き上げ
「鬼退治に。」
と一言だけ言い放った。その後に皆が叫ぶ、
「鬼退治に」
その場に鬼退治の合唱の声が響いた。
2週間後、桃太郎は村の者を引き連れて村を出た。すぐ横に忠兵衛がいる。
「桃太郎、勝算はあるのか?今から行くところは、鬼だらけの所。別名、鬼ヶ島じゃ。その数10万ともいわれとる。村で戦える者、ざっと千人ぐらいじゃ、話にならんぞ。町で人を集めても、合わせて4千人か五千人じゃ、十万対五千じゃ、これじゃーやられてしまうだけじゃ。」
桃太郎は忠兵衛の話に頷き、
「わかっとる、私は鬼退治を心に誓ってから10年、どうすれば勝てるかだけを考えてきた。安心していろ。」
桃太郎は山の向こうを見ながら話した。
「それよりも忠兵衛。先に町に行って町民に話をしといてくれ。今から鬼退治にいく、付いてくる者は付いてこいと。
「よし、わかった。どうやったら鬼を倒せるか、皆目見当もつかんが、桃太郎の言うことだから、わしも皆も、何とかなるとおもちょる。ワシは一足先に町へ行こう。では又」
町に着いた桃太郎一行は、町民の歓迎の中、迎えられた。
「来たぞー。桃太郎じゃー」
「やったぞ、鬼どもの泣き顔が目に浮かぶ」
「ワシは鬼ヶ島だろうがどこだろうが、いくぞー」
桃太郎は、(鬼退治)と書かれた扇子を広げて、颯爽と町長の所に向かった。
「ようこそおいでくださいました、桃太郎殿。私が町長です。今まで鬼に泣かされつづけたが、ようやくそんな日々が終わると、確信しています。村の者、全員その心です。」
「町長ありがとう。必ずや鬼を成敗します」
桃太郎一行は、その人数を5倍に広げ、鬼ヶ島に向かった。
「桃太郎、上手くいったな」忠兵衛と桃太郎が、話している。
「桃太郎、だが戦える者全員あわせても、5千がいいとこだ。お前の剣技なら、鬼の10や20は倒せるかもしれんが、わしらは一人で一鬼たおすのがやっとっじゃ。どう考えとる?」
「まず犬族とサル族を仲間にする。」
「???犬族、サル族じゃと。桃太郎、あいつらのなかの悪さは、村の子供でもしっちょう。どちらかだけを仲間にするならとにかく、両方は無理じゃ。」
「大丈夫じゃ。仲間にするというか、もうなっておる。」
「?桃太郎、いつのまに?」
「犬族とサル族を仲間にするのに、3年かかった。私はあの二種族の手を1年前、ようやく握手させたんだ。」
「桃太郎、いつの間にそんな芸当をしたんじゃ。」
「私は9才の頃から今までずっと、鬼を倒す事を考え、その為に1人で動いてきた。出来るだけ他の人には、知られたくなかった。鬼退治の目論みが、鬼にばれると面倒な事になると思ってな。」
「すごいのー、桃太郎は、やっぱりお前は天の使いじゃ。これでわしも勝てる気がしてきた。」
「嫌、まだだ。後はキジ族じゃ。一応彼らも鬼と戦うと言ったが、なんせ彼らは気が弱い。土壇場でやっぱり無理とかいいかねん。そこで忠兵衛、ひとっ走りしてキジ族の様子を見といてくれんか。わしはサル族と犬族を引き連れて、キジ族の所に向かう。」
「わかった、わしは足だけは早い。急ぎ行こう。」
忠兵衛はハカマをまくりあげ馬の様に走っていった。
「この場所か」
桃太郎は、犬族とサル族、そして人族の長の代表会の場所に着いた。そこには犬族の長が待っていた。
「これは桃太郎殿、ようやくこの日が来ましたな。めでたい日だな。」
「バサック殿、確かにめでたい日じゃ、それはそうとしてサル族の長、猿人殿はまだかのー」
「桃太郎殿、うわさをすれば向こうの方から猿人殿だ。」
「桃太郎殿―、バサック殿―」
桃太郎が目を凝らすと、向こうの方から飛び跳ねて来る、猿人殿を見つけた。
「遅れたかな?すみません。妻と子と今生の別れになるかも知れないと思うと、別れがたくて。」
「猿人殿、皆、同じ気持ちだ。なー、桃太郎殿」
「私はそうは思いません。猿人殿も、バサック殿も、もちろん私も、生きて帰れると思っています。」
「そうなれば良いが、」
猿人はそう一言つぶやいた。バサックは何も言わなかった。
「しかし、双方、鬼に煮え湯を飲まされているとはいえ、まさか犬族と手を結び、戦う日がくるとは思いませんでした。」
「それはこちらも同じだ。だが、今はその手を握ろう」
「両者、積もる話があれど、キジ族の所に急ぎ行かねばいかん。道中で話しながら進もう」
「よし」 
「わかりました」
こうして桃太郎は、犬族の戦士四千と、サル族の戦士五千を引き連れ、キジ族の所に向かった。
「桃太郎、大変じゃ」
キジ族に合う前に、忠兵衛と合流した桃太郎は、その話を聞いたとき、やはり、と思った。
「キジ族の奴ら、鬼と戦う奴らと、怖くて戦いたくない奴らで、真っ二つに意見が別れとる。どうしたもんか」
「忠兵衛。今からキジ族は、総勢1万4千の戦力をその目で見る事になる。空想で描いた兵と、実際にその姿を見てその熱気を肌で感じれば、必ず、戦う方に賛同する勢力が増える。」
「なるほど」
忠兵衛は感心したと言わんばかりに、2、3度頷く。
それから少しして、4者会議が開かれた。
桃太郎が話す。
「皆さん、サル族の長猿人殿、犬族の長バサック殿、キジ族の長マリー殿、この鬼ヶ島の戦いに参列してくれてありがとう。マリー殿、族民の皆は戦いに賛成しているか?」
「私達キジ族は、戦いを好まない。鬼には確かに泣かされ続けてきたが、いざとなれば、私達キジ族は空に逃げる事が出来る。だが鬼から逃げ続けるのは疲れた。彼らのここ何年の傍若無人ぶりは、言葉に出来ないほどです。人族、犬族、サル族の戦士の姿を見てようやく心が定まりました。私達キジ族も、鬼退治に微力ながら参列します。」
「よく言った。マリー殿」
犬族の長、バサックが言った。
桃太郎が席を立って喋る。
「では、決死の時は、明日の正午過ぎ、今宵は作戦会議をします。」
皆うなづいた。
その後、深夜遅くまで作戦会議は続いた。
・・・・・・・・・・
日はまばゆいばかりに、照っている。
「この時間だ。今なら鬼からすれば逆光だ。・・・・・・・・・・ああ、ようやく長年の敵を討つ事が出来る。思えば9才の時、私を育ててくれた、おじいさんとおばあさんを、鬼に殺されてから、私は彼らを倒す事だけを、胸に秘め生きてきた。今日ようやく仇がうてる。」
バサックが鋭い眼光をして言う。
「桃太郎殿、もうすぐ鬼ヶ島に着く。興奮してきたぞ。」

「我らがサル族は無敵だー」
少し離れた所で猿人を頭にサル族は、お互いを鼓舞しあっている。
桃太郎はキジ族の方を見た。だが彼らの軍団だけが元気がない。下を向いて後ろの方を付いてくる。桃太郎はマリーの所に駆け寄った。
「マリー殿、大丈夫か?」
マリーは歯切れの悪い感じで喋った。
「じ、実はその、言いにくい事ですが、皆いざ鬼ヶ島に近づくと怖くなったのか、桃太郎殿の後ろを付いて来てはいますが、いや、怖いのです。族民も私も」
「マリー殿、今、怖くないものなどおらん。だが大丈夫じゃ。私に秘密兵器がある。これを食べれば、たちどころに闘志が湧いてくる。元気が湧いてくる。うそだと思って一つ食べてみてくれ。」
そういうと桃太郎は、懐から一つの饅頭を差し出した。
「もぐ、もぐ、もぐ。」
「・・・・?これは何ですか?食べてすぐだというのに力が湧いてくる。何か鬼なんかへっちゃらな気がしてくる。
「これは私が、この日の為に5年の月日をかけて作った。その名は、きびだんごじゃ。どうじゃ勇気が立ち上がろう」
「桃太郎殿、これはすごい。これを皆に食べさせれば向かう所、敵なしです。でも沢山ないと皆が食べられないのでは?」
「大丈夫じゃ。全員分用意してある。」
桃太郎は、全軍団の最後尾に駆け寄った。
「町からここまで貨車を引いてくれてありがとう。きびだんごを、皆に振舞ってくれ。」
「なんじゃい、この食べ物は?」
「力が出るぞい」
「魔法の食べ物じゃ」
「鬼なんか屁でもない」
鬼ヶ島を前に内面恐れてた連中も、意気揚々、勇気倍々の戦士になった。
人族はざわめき、犬族は吠え、キジ族は飛び周り、サル族は跳ねた。
桃太郎が軍団の先頭に立って、意気揚々喋り始めた。
「鬼までもう目の前だ。いよいよこの時がきた。我々は彼らに泣かされ続けてきた。苦しめられてきた。だが今日で全てが終わる。今日で全てが変わる。今こそ各族の垣根を超え、共に協力しあい、鬼退治を成そうではないか。」
「オーーーーー」
全員が唸った。吠えた。
「最初にキジ族、鬼の鉄棒の届かない場所から、大きな石を空から落とし、鬼どもを平原から森林へ追いやってくれ。」
キジ族の長、マリーと族民は飛んだ。手にはみな、大きな石を持っている。
「続いてサル族、君たちは森林の木の上に身を隠し、追い詰められて逃げてきた鬼を、木の上から攻撃してほしい。奴らは木に登るのが下手だ。」
「よーし、行くぞ皆」
サル族の長、猿人は飛び跳ねながら森林の方に走って行った。
「犬族は、森林に逃げてきた鬼たちを追い回し、鬼の足元を狙って攻撃してほしい。足は犬族、頭はサル族が攻撃する。鬼は誰に的を絞って攻撃すればいいかわからず、右往左往する事だろう。それと随時遠吠えして我らの数を4倍にも5倍にもいるものと錯覚させてほしい。」
「わかった桃太郎殿。オオーーーン」
犬族の長は吠えながら犬族の先頭を走って行った。
「最後に我々人族は、敵の大将を目指す。奴は森林の奥深くにいる。では行くぞー」
「桃太郎どのに続けー」
「おーー」
その日、平原で横になっていた鬼は、とてつもなく驚いた。空から巨大な石が急に降ってきたからである。
「なんだーこれはー」
「キジ族だ、キジ族が我らに歯向かった。」
「これはかなわん、ひとまず森林へ逃げ込めー」
森林へ逃げ込んだ鬼を待っていたのはサル族と犬族の攻撃だった。サル族を追いかけてると、犬族が足を狙ってくる。犬族を追い回してると、サル族が頭に向かって石を投げたり、その爪で顔をひっかく。それだけならまだしも、さらに人族が刀で切り付けて来る。
「鬼の力をなめるなー」
「やり返せー」
いたるところで双方の声がまじりあいその場所は混とんとしていた。
「大将、奴らが来ましたー。我々を攻撃してます。人族とサル族と犬族とキジ族です。不意を突かれて我々はなすすべがありません。まさか奴らが逆らうとは。くっそー。いかがいたしましょうか。」
「わしが蹴散らしてくれる。」
「桃太郎。桃太郎―。敵大将のいる場所がわかった。案内するぞー」
「ありがたい、忠兵衛。あとこの辺りの鬼、全てを倒していく。10分で終わる。ちょっと待っていてくれ。」
「カン。カキン。ぐえぃ。ゴリゴリ。まてーい。バン。ドーン。グサッ。逃げろー。とどめだ。」
「よし終わった。忠兵衛、案内してくれ。」
「承知。しかし桃太郎、そなたの剣技は本当にすごいのー。舞でもまっているかのようじゃ。鬼の大将よ。まっとれ、今桃太郎がいくぞー。」
ひと一倍でかい鬼が向こうに見える。
「弱い弱すぎる。これっぽっちの力で歯向かうなんぞ出直してこい。」
桃太郎が鬼の大将の所に到着すると、大将の周りには5人の人が倒れていた。
「大丈夫か。おい大丈夫か。」
その内の一人に桃太郎が声をかける。
「く、くやしいぞ、も、桃太郎殿。仇をたのむ。それと私の娘に、お前は幸せになれと、伝えてくれないか。」
「自分で、その口で伝えろ。」
桃太郎は寂しそうな目で見る。
「それは無理なようじゃ。」 
ガクッ。
桃太郎は、やさしく地面にその身を置いた。
「お前が鬼の大将か?」桃太郎が問う
「そうだ私が大将だ。」キッと睨み付けて鬼が答える。
桃太郎は剣を抜いた。
「人族のくせに私と戦うなんてなんて馬鹿な奴だ。」
「行くぞ。」
桃太郎は鬼の大将の頭上に高くジャンプして、鬼の額を狙い剣を振りぬいた。だが剣は虚空を描いた。鬼が後ろにのけぞったからだ。桃太郎の剣は地面を刺さる。そこを狙って鬼が突きを放つ。桃太郎は剣を横ばいにしてその突きを止めた、と思った瞬間、相手の力を受け流し剣を滑らせ相手を前のめりの状態にさせ、体制が崩れた鬼の首めがけて剣を振った。
「首が切られた」
と鬼は思った。が切られてはいなかった。すんでの所で桃太郎が剣を止めていたのだ。
「参った。」
鬼の大将は、両手を上げた。
「何故、剣を止めた。何故、首を切らない?」
「よく聞け。鬼の大将よ。これから先二度と村を襲わない、食べ物を強奪しないと言うなら、許してやろう。それが守れないと言うなら今すぐこの首を刎ねる。」
「わ、わかった。もうこんりんざい悪さはしない、許してくれ。」
そこに忠兵衛が駆けつけてきた。
「桃太郎、そいつは嘘をつくかもしれん。首を刎ねた方がいい。」
「忠兵衛よく聞け。今こいつの首を刎ねた所で、すぐに他の鬼が代わりの大将になる。それよりもこの鬼はこの桃太郎と戦って、その強さをみずからが知っている。わたしが生きている間は悪さはしないだろう。」
「なるほどさすが桃太郎じゃ。」
鬼の大将は、
「ありがとうございます。すいませんでした。もう二度と悪い事はしません」と涙を流しながらうったえた。
「やったー。勝ったぞー」
桃太郎の周りの味方から、歓喜の声が響く。その声は空にいたキジの戦士にも響き、戦士から戦士へ、空から地上へ、瞬く間に鬼が島に、歓喜の声がいたる所で響きわたる。
猿人は吠え、ガリスは仲間とはしゃぎ、マリーは空を飛び周った。
こうして桃太郎とその一行は、大勝利でおのおのの村に帰った。鬼は二度と悪さをする事はなかった。その後、桃太郎を称えたこんな歌がいたるところで歌われた。
(桃太郎さん、桃太郎さん。あなたは天の使いかな。鬼は恐れて身を隠す。)
と子供から大人まで歌ったそうな。    
めでたし、めでたし
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