麻雀王と呼ばれた男

本来タケル

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麻雀王と呼ばれた男

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俺の名前は里 荒野。(さと こうや)
里 「あ、それ、ロンね。」
客1 「マジかよ。またかよ。つえーよ。あんた。」
里 「満貫の8000ね。」
客1 「くそ。持ってけ。」
客が勢いよく点棒を卓に投げつける。
里 (馬鹿が。その行為一つ一つが俺に新たな情報をくれる。心の様が見て取れる。勝つ確率がまた増える。)
里は他人を冷静に見つめる。麻雀をやっている時は特に集中している。)
里 「それ、ロン。」
客2 「嘘だろ。やみ点かよ。」
客1 「この兄ちゃんの一人勝ちだな。ボロ負けだ。やってられねー。」
里 (4万2000点の一番か。又、勝ったな。楽勝だな。今月だけで80万は勝ってるな。時間も時間だし、そろそろソープでも行くか。一人バブルだな。これ。今日はどんな娘に当たるかなー。)
里 「タラららら。タラららら。♪」
里 「店長、開いてる?」
店長 「あ、荒さん。もちろん。そうだ。そうだ。今日新人の娘、入ったんですよ。味見してって下さいよ。」
里 「いいねー。そういう事ならその娘指名するわ。」
店長 「ありがとうございまーす。荒さん。今日も麻雀勝ったんですか?」
里 「もちの。ろんよ。今日は7万勝ち。運で勝ってるんじゃないからね。実力だから。店長この違いわかる?」
店長 「もちろん。単純に強いって事ですよね?」
里 「もちろんそうだけど。運で勝ってる奴らは所詮運だから、勝つときもあれば負ける時もあるって事。実力で勝つっていうのは何回やっても自分が勝つって事。全然違うわけよ。トータルすると。長帳場で見ると。」
店長 「でも麻雀ってある程度覚えるとその後は所詮運ゲーとはよく言いますよね。どうやって勝ち続ける事が出来るんですか?秘密があるんですか?教えて下さいよー。」
里 「ん?んー。いやまあー。秘密があるっちゃあるけど、ないっちゃないかな。普通に打ってるだけだよ。」
店長 「荒さん。もしかして配が透けて見えるメガネ開発したとか。そんなんが出来たなら俺1000万でも買いますよ。」
里 「はは。さすがにそれはない。それは俺でも買う。まあ、今ならそんなの無くても勝率7割ぐらいはいけるかな。」
店長 「それを教えて下さいよー。」
里 「はは。まあとにかく打つ事だよ。」
スタッフ 「お客様、準備が出来ました。女の子がお待ちです。」
里 「お、んじゃーな。店長。仕事頑張れよ。どんな娘かな。どんな娘かな。タラららら。タラららら。♪」

・・・・・・1年前・・・・・
男 「てめー。ぶっ殺されてえのか。おい、誰か包丁持ってこい。二度と麻雀できねーように右腕ぶった切ってやる。」
里 「すいません。すいません。お金ある時持ってきますんで許して下さい。」
男 「ふざけるな!金がないのに打ちにくるとは、それだけの覚悟があるからだろ。おい。包丁はまだか。」
里 「すいません。どうか許して下さい。お願いします。」
常連客 「もう、いいじゃないか。許してやりなよ。安い場でやってたんだろ。若い頃はこういう事の一つや二つ間違いを犯すものさ。」
男 「アンタがそういうなら・・・・おい、お前、この店には2度と来るなよ。これで許してやるよ。」
「バキッ。ドガッ。ドガッ。」
里は土下座をしている顔面に向けて3発の拳をくらった。
里 「う。ううう。す、す、す、すみませんでした。」
男 「さっさと俺の前から消えろ。くそぼうずが。」
里 「はい。」
里は急いでその場所から離れた。鼻から血が出ていて、それを抑えながら夜の繁華街を早歩きした。目にはうっすらと涙が滲んでいた。
(もう、麻雀はやめよう。俺には運がない。)
家に帰り鼻にティシュを詰め込み、冷蔵庫を開けてみたが空だった。(わかっていた事だったが。) 食べる物がカップラーメンしか無いので仕方なくそれを食べた。
テレビを付けてカップラーメンをすする。麻雀を止めれば普通の暮らしが出来る。俺の運はもう尽きたんじゃないだろうか。もうここまでだろう。俺の麻雀人生は。でも一度だけ、激闘麻雀杯の決勝まで行ったんだ。一度だけ。そんな事を思いながら、それから1時間思考がグルグル堂々巡りしていた。その時、ただ何となく、何となくだったんだ。俺は思考が定まらずテレビをボーと見ていた。そこでやっていたのは、メンタリストとか言う人が仕草や目線の動きで相手の考えていることがわかると言う物だった。俺はこれを見た瞬間ビビッと来た。これだ。これを麻雀に取り入れれば勝てると。それから1年近く、メンタリストの本を買い、心理学を勉強した。そして実践した。最初の頃は情報が多すぎて頭が追い付かなかった。普通に河を見たりするのは当たり前だが、俺は麻雀をしながら相手の挙動に集中する。目線を見逃さない。コンマ何秒どの牌を見たか、どんな表情をしたか。どこで何秒考えたかなどだ。さらに話術だ。場を支配するためにどんな言葉を喋るべきか常に考えた。大声を出したらいいと言う物でもない。正しわざと大きな声を出すときもある。場を支配するとは、場の面子が何を考えているかをわかるという事だ。もちろん上手い人ほどそういった仕草や表情を隠すのが上手い。それでも俺の話している事が心理学にもとづいてるとは誰も思わないし、メンタリストを用いているとは考えてもいない。
里 「ツモ。三色。タンヤオ。ドラ2。」
客1 「やられたー。」
客2 「最悪」
今日も俺は勝つ。勝って勝って勝ち続けて麻雀界のトップに立ってやる。身に付けたこの魔法で。
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