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琴人の第二章 醜いアヒルの子は遺伝子が優れてる

新しい家族で遊園地に…

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【土曜日】

私はお母さんとお父さんと遊園地に行く…

って言っても、大型スーパーの屋上にあるちょっとしたところなんだけど…

「いやー、ごめんな!有名なところに行く予定だったんだけど、人数が多すぎて、チケット、売り切れてた(笑)」

「そんなことだろうと思ったわよ!」

お母さんがお父さんを責める

だけど、表情が心なしか、穏やかな雰囲気がする

(お母さんも嬉しいんだな)

「さぁ!なんか乗るか!」

お父さんが仕切り直す

そういえば私はアミューズメントパークに来たのは、初めてだ

ずっと家でピアノ弾いてたから

「琴人は、どれに乗りたい?」

お父さんが私に尋ねた

「え~~と~」

私は、

「パレードに乗りたい!」

変なことを言った

「おいおい、パレードは乗り物じゃないぞ!」

「変な子ね、誰に似たのかしら?」

もちろん、私はそう言った知識がない

顔が痺れるような感覚を感じた

「なぁ~に顔赤くしてんだよ!」

「な、なってないもん!」

こんな会話は初めてだ

誰かに茶化され、反論する

こんな風景はクラスメイトでよくあるやりとりを私は遠目でいつも見ていた

(まさか、私がこんな会話するなんて…)

お母さんも驚いていた

そういえばお母さんと仲良くしている会話なんてほとんどやってないや

(初めて感じることばかりだ)

「じゃあ、まずはあれを乗るか!」

お父さんが指を差した先には

ものすごいスピードで空中を駆け巡る乗り物
《ジェットコースター》

「お~、すごい!」

思わず声が出てしまった

「へぇ~、あんなの好きなんだ」

お母さんがお父さんに尋ねた

「あぁ!やっぱり遊園地って言ったら、
ジェットコースターだろ!普通!」

「何言ってんのよ!」

お母さんが慌てている

「ジェットコースター以外にもいろいろあるでしょ!おばけ屋敷とか、
スクリーンショーとか!」

「ひょっとして……怖いのか?」

「な!ち、違うわよ!
ただ、一番最初に乗るのが
あんな乗り物なんて…」

驚いた、お母さんのこんな姿を見たのは生まれて初めてだ!

というか、一生こんなお母さんを拝めることなんて、無いと思ってた

《凄く新鮮だ!》


◆◇◆◇◆◇


結局、ジェットコースターに乗ることになった

「あぁ~」

お母さんがくたびれてる

「そんなに怖かったか?」

「当たり前でしょ!あんな高いとこから落とされて、一回転するとか人が乗るものじゃ無いわよ!」

「そういえば、琴人は?怖くなかったの?」

「うん、大丈夫だった」

「あんたたち…イカれてるわ!」

こんなお母さんはじめてみた!

ねぇ、

「なによ!」

お父さんの問いかけに半ギレ状態のお母さんが答える

「次は、肝試ししようぜ!」

「あ~、はいはい!お化け屋敷ね、」

ということで、次はお化け屋敷だ

中に入ると、真っ暗な空間に入れられた

なんか、ピアノの稽古を思い出す

ちょっと前までは、暗い地下の部屋で1人ずっとピアノ弾いてたから

暗い場所は苦手だ

頼りはひとつの懐中電灯か……


「っ!!」

急に背後に違和感を感じた

肩に誰かが…手を置いている…


「ねぇ!」

お母さんだった

「あんたたち、よく平気でいられるわね!」

怖いみたいだ

「何言ってんだよ!俺だって怖いさ!
 歩かないと、終わらないだろ!」

ガン!!

「うわ!!」

急に壁からすごい音が……

「もう、覚悟を決めるわ…」

ゴールを決めて前に進む

途中でいろんな仕掛けがあった、

人形の首が突然ぶら下がってきたり

後ろから誰かが追いかけてきたりと

ジェットコースターよりスリルがあって楽しかった

「そろそろゴールね、」

「そうだね!」


「ん!!!!っ」

誰かに、腰を触られてる!

「お母さん!お父さん!」

「ひぃっ!な、なによ!まだなんかあるの?」

「どうしたんだ?」

お父さん…でもないみたい

誰なの!

すると、私だけに聞こえるような小声で誰かが、私に喋りかけた

「おい!騒ぐな、騒いだら、
お前の《お母さんを殺すぞ》」

「ん!!!っ」

凄く……怖い


私は何もできないでいた

その、私の腰を触っている誰かの手が、位置を少しずつ、下にずらしてくる

「ひぃ!」

思わず声を上げてしまった

それを聞いたお父さんが…

「なんだ!やっぱりなんかいるな!」

「もう良いわよ!早く出ましょ!」

お母さんが急かしたことにより私たちはお化け屋敷を出た

「あぁ~怖かったな~2人とも!
まじでやばいわここのお化け屋敷!」

「もう、2度とこんなところ来ないわ!」

「まぁまぁ、そんなこと言うなよ!
琴人、どうだっ...」

お父さんが言葉を一瞬失った

私は恐怖のあまり、体が震えていたのだ

「大丈夫か?」

「…うん、た..たのしかったよ」



なんで?
《楽しい思い出になるはずだったのに》
なんで?…こんな…
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