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琴人の第一章 曲がって育った木は、真っ直ぐには育たない  

たった1日の夏休み

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夏休みに入った

私は、夏休みの宿題を1日目に終わらせた、とういうより、無理矢理やらされた

お母さんが言った

「この夏休み、ピアノのお稽古をしてもらうわよ!遊んでいる暇なんて、あなたには無いの!」

「でも、お母さん、私もみんなみたいに、遊びたいよ、」

「何ですって!」

「っん!」 

私は恐怖していた、《また、叩かれる》

「わかりました……」 

(叩かれるのは嫌だから)、そんな理由で私は今日もピアノを弾く

「みんなは今頃プールに行ったり、花火大会に行ったり、何も無い日は友達どうし、遊んでいるのかな?…」

そんな、考えても無意味な妄想をしながら、ピアノを弾く

「ピシッー」

「いた!…」

「音がずれたわよ!はい!やり直し!」

「……はい」

窓の外から、子供達が遊んでいる、楽しそうな声がする

でも、自分は家に引きこもり、ピアノの稽古をしている

「いいな~、私も混ざりたいな」

夏休みが明けると、引っ越す予定でいる、

お母さんと、私の?お父さんが同居することになった、

確か…仕事が一段落したから、一緒に住むことになったんだっけ?

「自分勝手だ…」

◆◇◆◇◆◇

夏休みも、終盤に差しかかった、ある日お母さんから、信じられない一言を私に浴びせた

「今日は、自由にしいいわよ」

嬉しかった!

私はすぐに靴を履き、外に飛び出した

先程、窓を眺めていたら、隣の席の宗善くんの姿が見えたからだ!

私は、彼が遊んでいる公園に走った!

彼を目の前にして、私は…

「遊ぼ!」

《産まれて初めて誰かと遊ぶ》

(おや?)

彼からの返事がない!なんでだろう?
聞こえなかったのかな?

「うん!」

少しタイムラグがあったが、彼からの返事が返って来た

(嬉しい!)

「何して遊ぶ?」

彼からの質問がきた

「なんでもいいよ!」

私は、曖昧な返事で返した
どんな遊びをするか、なんでもよかった
どんな遊びでも、全力で楽しむと決めていたからだ!

彼が提案した

それは、1人がブランコに乗り、もう1人はその周りをブランコに揺れている、相手に当たらないように回るといったゲームだった、

簡単そうに見えるけど、当たったら怪我するな!と思いつつ

「うん、いいよ!」

私は賛同した

まずは、最初に彼がブランコを漕ぎたわしが周りを10周回る、

1週目、2週目、3週目、

(うん、順調だ、意外と平気なのかも)

8週目にして、《タイミングを読み違えた》

彼の足に当たりそうになった!
しかし、私はそれを、間一髪でかわしたのだ

(やった、うまくかわした。危なかった~)

安心するのは早かった…

前日に雨が降っていたようで、彼の靴の裏に付いていた泥が、私の顔に当たった!

「っ!!」

私は、すぐに公園の水洗い場に行き、顔を洗った

「大丈夫かな?目に入っていないかな?」

不幸中の幸いだ、泥が目に入っていなかった口の中にも入ってなく、飲み込むこともなかった…

私は、ハンカチで顔を拭き、彼の元に戻った

私がうまく避けていれば、こんなことにはならなかったのにな…

自分を責める必要がないのに、無意識に自分を自分で責める、

《涙が出そうだ》

「彼に謝らなくっちゃ!じゃないと」

《叩かれるの》

「っ‼︎‼︎」

(なんだ?今のは?彼とお母さんは関係ないじゃないか!なんで彼に叩かれる想像を…)

怖くなった…

「また、叩かれるのかな?」

彼の顔を見た、すると

《彼が泣いていたのだ》

私は、理解した

彼も私と同じ、自分を責めてしまっていることに…

《悪いのは、私なのに…》

私は、手に持っていたハンカチで彼の涙を拭きとった

《誰かに優しくするって、こんなに温かいことなんだな》






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