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第1話 悪役キャラに転生するパターン
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ハマった。
「何に?」と問われれば「悪役キャラ転生モノである」と答える。
そう、最近小説サイトのランキングに度々登場する悪役転生モノにハマってしまったのだ。
大事なことなので二回言った。
ランキング上位に名を連ねているとある小説を読み厨二病を再発させた俺は、自分の悪役キャラ転生攻略チャートを作り上げ、そして死んだ。
朝、通勤途中に踏み切りの前で件のネット小説を読み返していたら、背中を思い切り突き飛ばされ電車に撥ねられ死んだのだ。
死の間際に考えたことは、「これって悪役に転生するパターンじゃね?」ということである。
もっと他に考えることがあったのではないか、と肉体を捨て去り魂だけの存在になってしまった今ならそう言える。
もう口なんてないけどね、ガッハッハ(激ウマ幽霊ギャグ)。
テンションと一緒に天に上昇していく自分の魂とは裏腹に、なんとなく認識できた他の魂は全て地底を目指しているようである。
これは俺が運命に選ばれたのかと、死してなお厨二病を卒業できていない事実に震えながら、ひたすら天を目指す。
白雲を抜け、青空を突破し、成層圏を離れ、地球から飛び出し、数々の星を横目に宇宙すらも離脱し、別の宇宙に突入した。
そして再び様々な星やデブリを横目にしながら、俺の魂はとある星に吸い込まれていった。
もうこの時点でテンプレとはなにか違うような気はするが、やはりこの流れは悪役転生に違いないという確信もどこかにある。
そして俺の魂は月すら浮かばぬ真っ暗な空を突き破り、黒い雲を抜け、周辺で最も高い塔に侵入し、その最上階でひっそりと寝息を立てている女の腹の中に収まった。
悪役転生とはいえ、まさか誕生より以前からスタートとは思わなかった。
だがこうなったものは仕方ないので、今のうちからトレーニングをしなければなるまい。
悪役キャラはその才能の大小は別にして、争いごとに関しては大抵雑魚と相場が決まっているのだ。
今のうちに主人公とラスボスキャラに対してアドバンテージを稼がねばなるまい。
それにしても胎児からトレーニングを行う小説は数多読んできたが、まさか受精卵にすらなっていない卵子の段階でトレーニングをするハメになるとは思いもしなかった。
どうせ魔力や気などの概念があるのだろうと当たりをつけてトレーニングを行う。
俺が宿っている卵子からエネルギーを捻り出す。
こういったエネルギーに対する感覚は、つい先程まで魂だけの存在であったので鋭敏なままだ。
最も容易に己のエネルギーを操作することが可能となった。
他の卵子からもエネルギーを搾り出し操ることも可能となった段階で、次は卵子から出せるエネルギーの絶対量を増やす訓練を行う。
こういったエネルギーは使えば回復し、それに伴い全量が少し嵩増しされることで有名なので、己の魂が宿る卵子のエネルギーを全ていずれ母体となる女の子宮に流し込む。
他の卵子からも同様にエネルギーを全て搾り取り、子宮に受け流す。
卵子のエネルギーがスッカラカンになり、どういった経緯で消費したエネルギーが回復するのか観察したい気もするが、原作までに俺自身が弱いままではいけないので訓練を続行する。
今度は世界に溢れるエネルギーを取り込む訓練である。
ファンタジーでよくある龍脈に流れるウンタラカンタラというヤツだ。
古今東西、占いやら風水やらで権威を示す巨大建築物の位置を決めるのはお約束である。
ならば少なくとも意味深に聳え建っているこの巨塔の地下には莫大な龍脈が流れているはずだ。
俺は龍脈がナニかは全く知らないが、古事記にもそう書いてあったから正しいのだ。
正しいったら正しい。
そういうことにしておこう。
卵子からニュルッと魂の触手を伸ばし、女の臍を媒介に世界と繋がる。
塔の床から龍脈らしきなにかを感じ取り、そこを流れるエネルギーを魂の触手管を伝い己の宿る卵子に注入する。
卵子のエネルギーとは全く質が違うが、幸い今は卵子の中にエネルギーは存在していないので拒絶反応は起こらず、龍脈のエネルギーを詰め込めるだけ詰め込む。
他の卵子にも同様の操作を行い、全ての卵子にエネルギーを注ぎ込んだ。
そして現状できる最後の訓練として魂から取り出したエネルギーの操作を行う。
往々にして魂から引き出されるタイプの力はデメリットばかりであるがその分無類の強さを発揮する。
ならばなぜデメリットが多いのかと問われれば、そのエネルギーの操作がなってないからだと考察したあの頃。
ならば特訓すればええじゃないかというわけだ。
魂に癒着しているモノのうち、余分なエネルギーを剥ぎ取る。
先程の触手管のように魂を直接加工する訳ではないので、丁寧に造形を決める。
今回象るのは『拳銃』。
あわよくば魂装化して、主人公とラスボス相手に初手分からん殺しを決めたい。
因みに魂装とはこれまたよくある設定の一つで、魂から生み出される自分専用武器のことであり、本来は実体を持たないはずが強い意志により一時的に現界するタイプのヤババなファンタジー武器である。
今回もまた「どうせあるんでしょう?」の精神でトライする。
そして思いの外あっさりと余剰分のエネルギーで『拳銃』を象るまではできたが、非物質を物質化させるほどの強い意志とはなんぞや、という段階で訓練は一時打ち止めとなった。
なにせ、「死にたくない」と言ってももう死んでいるわけだし、「生きたい」と言ってもそもそもまだ生まれてない。
さらに「勝ちたい」と思っても競う相手がいないし、「守りたい」と思ってもその対象がいない。
最早「カッコよくありたい」ぐらいしか動機は見つからないが、前世日本で培われた滅厨二病マインドが羞恥で悲鳴を上げている。
そういうわけで魂装訓練打ち止めである。
本格的にやることがなくなったので、卵子の体で子宮内を泳ぎ回る。
あっちへウロウロ、こっちへウロウロ。
時折他の卵子とぶつかりそうになるが、こちとら満員電車も飽和交差点もなんのそのだった元社畜だ。
上手い具合に隙間を見つけて、避けて避けて避けまくる。
たまに団体が屯していることがあるが、そういう場合には真ん中を突っ切らずに敢えての遠回りをする。
その後、子宮内を泳ぎ回ったりもう一方の卵管に突入したりなどやりたい放題やったが、結局最初に居た方の卵管に戻った。
そして自分の体を労わるために休息を取ることにした。
───────────
エネルギーの名称について
女性由来のエネルギーは、『魔力』。
龍脈由来のエネルギーは、『精霊力』。
魂由来のエネルギーは、『魂力』。
あとついでに男性由来となるであろうエネルギーは、『気』。
現在の主人公の二つ名は『アグレッシブ卵子』。
「何に?」と問われれば「悪役キャラ転生モノである」と答える。
そう、最近小説サイトのランキングに度々登場する悪役転生モノにハマってしまったのだ。
大事なことなので二回言った。
ランキング上位に名を連ねているとある小説を読み厨二病を再発させた俺は、自分の悪役キャラ転生攻略チャートを作り上げ、そして死んだ。
朝、通勤途中に踏み切りの前で件のネット小説を読み返していたら、背中を思い切り突き飛ばされ電車に撥ねられ死んだのだ。
死の間際に考えたことは、「これって悪役に転生するパターンじゃね?」ということである。
もっと他に考えることがあったのではないか、と肉体を捨て去り魂だけの存在になってしまった今ならそう言える。
もう口なんてないけどね、ガッハッハ(激ウマ幽霊ギャグ)。
テンションと一緒に天に上昇していく自分の魂とは裏腹に、なんとなく認識できた他の魂は全て地底を目指しているようである。
これは俺が運命に選ばれたのかと、死してなお厨二病を卒業できていない事実に震えながら、ひたすら天を目指す。
白雲を抜け、青空を突破し、成層圏を離れ、地球から飛び出し、数々の星を横目に宇宙すらも離脱し、別の宇宙に突入した。
そして再び様々な星やデブリを横目にしながら、俺の魂はとある星に吸い込まれていった。
もうこの時点でテンプレとはなにか違うような気はするが、やはりこの流れは悪役転生に違いないという確信もどこかにある。
そして俺の魂は月すら浮かばぬ真っ暗な空を突き破り、黒い雲を抜け、周辺で最も高い塔に侵入し、その最上階でひっそりと寝息を立てている女の腹の中に収まった。
悪役転生とはいえ、まさか誕生より以前からスタートとは思わなかった。
だがこうなったものは仕方ないので、今のうちからトレーニングをしなければなるまい。
悪役キャラはその才能の大小は別にして、争いごとに関しては大抵雑魚と相場が決まっているのだ。
今のうちに主人公とラスボスキャラに対してアドバンテージを稼がねばなるまい。
それにしても胎児からトレーニングを行う小説は数多読んできたが、まさか受精卵にすらなっていない卵子の段階でトレーニングをするハメになるとは思いもしなかった。
どうせ魔力や気などの概念があるのだろうと当たりをつけてトレーニングを行う。
俺が宿っている卵子からエネルギーを捻り出す。
こういったエネルギーに対する感覚は、つい先程まで魂だけの存在であったので鋭敏なままだ。
最も容易に己のエネルギーを操作することが可能となった。
他の卵子からもエネルギーを搾り出し操ることも可能となった段階で、次は卵子から出せるエネルギーの絶対量を増やす訓練を行う。
こういったエネルギーは使えば回復し、それに伴い全量が少し嵩増しされることで有名なので、己の魂が宿る卵子のエネルギーを全ていずれ母体となる女の子宮に流し込む。
他の卵子からも同様にエネルギーを全て搾り取り、子宮に受け流す。
卵子のエネルギーがスッカラカンになり、どういった経緯で消費したエネルギーが回復するのか観察したい気もするが、原作までに俺自身が弱いままではいけないので訓練を続行する。
今度は世界に溢れるエネルギーを取り込む訓練である。
ファンタジーでよくある龍脈に流れるウンタラカンタラというヤツだ。
古今東西、占いやら風水やらで権威を示す巨大建築物の位置を決めるのはお約束である。
ならば少なくとも意味深に聳え建っているこの巨塔の地下には莫大な龍脈が流れているはずだ。
俺は龍脈がナニかは全く知らないが、古事記にもそう書いてあったから正しいのだ。
正しいったら正しい。
そういうことにしておこう。
卵子からニュルッと魂の触手を伸ばし、女の臍を媒介に世界と繋がる。
塔の床から龍脈らしきなにかを感じ取り、そこを流れるエネルギーを魂の触手管を伝い己の宿る卵子に注入する。
卵子のエネルギーとは全く質が違うが、幸い今は卵子の中にエネルギーは存在していないので拒絶反応は起こらず、龍脈のエネルギーを詰め込めるだけ詰め込む。
他の卵子にも同様の操作を行い、全ての卵子にエネルギーを注ぎ込んだ。
そして現状できる最後の訓練として魂から取り出したエネルギーの操作を行う。
往々にして魂から引き出されるタイプの力はデメリットばかりであるがその分無類の強さを発揮する。
ならばなぜデメリットが多いのかと問われれば、そのエネルギーの操作がなってないからだと考察したあの頃。
ならば特訓すればええじゃないかというわけだ。
魂に癒着しているモノのうち、余分なエネルギーを剥ぎ取る。
先程の触手管のように魂を直接加工する訳ではないので、丁寧に造形を決める。
今回象るのは『拳銃』。
あわよくば魂装化して、主人公とラスボス相手に初手分からん殺しを決めたい。
因みに魂装とはこれまたよくある設定の一つで、魂から生み出される自分専用武器のことであり、本来は実体を持たないはずが強い意志により一時的に現界するタイプのヤババなファンタジー武器である。
今回もまた「どうせあるんでしょう?」の精神でトライする。
そして思いの外あっさりと余剰分のエネルギーで『拳銃』を象るまではできたが、非物質を物質化させるほどの強い意志とはなんぞや、という段階で訓練は一時打ち止めとなった。
なにせ、「死にたくない」と言ってももう死んでいるわけだし、「生きたい」と言ってもそもそもまだ生まれてない。
さらに「勝ちたい」と思っても競う相手がいないし、「守りたい」と思ってもその対象がいない。
最早「カッコよくありたい」ぐらいしか動機は見つからないが、前世日本で培われた滅厨二病マインドが羞恥で悲鳴を上げている。
そういうわけで魂装訓練打ち止めである。
本格的にやることがなくなったので、卵子の体で子宮内を泳ぎ回る。
あっちへウロウロ、こっちへウロウロ。
時折他の卵子とぶつかりそうになるが、こちとら満員電車も飽和交差点もなんのそのだった元社畜だ。
上手い具合に隙間を見つけて、避けて避けて避けまくる。
たまに団体が屯していることがあるが、そういう場合には真ん中を突っ切らずに敢えての遠回りをする。
その後、子宮内を泳ぎ回ったりもう一方の卵管に突入したりなどやりたい放題やったが、結局最初に居た方の卵管に戻った。
そして自分の体を労わるために休息を取ることにした。
───────────
エネルギーの名称について
女性由来のエネルギーは、『魔力』。
龍脈由来のエネルギーは、『精霊力』。
魂由来のエネルギーは、『魂力』。
あとついでに男性由来となるであろうエネルギーは、『気』。
現在の主人公の二つ名は『アグレッシブ卵子』。
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