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上にも下にも間にも
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とある田舎の数少ない娯楽施設であるスパ。最終の24時までやっているテナントはアタシのお店とスポーツジムだけ。
今年オープンしたばかりのジムはチェーン店で東京から来た30代の男性3人が仕切っている。
店長は有名な空手選手の弟でダビデ像みたいな体の壮二くん。苗字で呼ばれるのをイヤがるの。
副店長は体育の教員免許を持っている馬場くん。ダビデとまではいかないながらも良い体。爽やかな文武両道風。あくまで『風』よ。アタシの勘が油断しちゃいけないと言っている。
もう一人の副店長は元気いっぱいの高田くん。二人よりも二回りほど小柄で……とにかく元気いっぱい。
「ああこママ! お疲れさまでーす!」
閉店後、残り物をお裾分けするのが日課になってる。一人が取りに来て、閉店業務の後に三人でジムのスタッフルームで食べる。食器は翌日洗って返ってくる。
今日取りに来たのは高田くん。食事の乗ったワゴンに手を掛けたまま動かない。
「ねえママ、昔はブラックな白衣の天使だったんだって?」
「あらやだ、どこから聞いたの?」
誰とでもすぐに仲良くなる高田くん。もうこの土地にそこまで馴染んでるのね。
「へへ、内緒。
それでさ、今でも一服もったりできるってホント?」
「さ~、どうかしら?」
「焦らさないでよっ。
馬場にもってほしいんだ。今度の水曜日に」
「水曜日は壮二くんの定休日よね。二人っきりのスタッフルームでナニする気かしら?」
なーんて、アタシはとっくにお見通しだったけどね。
「な、なんもしないよ!
たださ、最近疲れてるみたいだから、ぐっすり眠ってほしいなって思っただけ!
普通に休めって言っても休まないからさ、そんだけ!」
「あらそうなの。アタシったら早とちり。ごめんなさいね。
いいわ。水曜日にね」
「ありがと!
あ、壮二には内緒にしてね」
元気にワゴンを押してお店を出る高田くんにアタシも笑顔で手を振った。
中学生だってもう少し上手に嘘つけるわよ?
翌日取りに来たのは馬場くん。実のお母さんにもママと呼びかけたことがなくて恥ずかしいらしい。
「女将さん、お疲れ様です」
背が高い馬場くんは椅子に座ってアタシを見上げた。
「ねえ女将さん、おクスリに詳しいって本当?」
高田くんったら口が滑ったのかしら?
いいえ、アタシの勘が違うと言ってる。ここは大事な局面よ。
「そこそこね。この歳になるとお肌に足腰、色んなお薬が必要なのよ」
頬を片手で包んでわざとらしく困って見せる。
馬場くんはまだ余裕の表情。
「とぼけないで下さい」
かと思ったら子犬のような空気になる。
「壮二を右に置くのがお好きなようですけど、俺と高田のことを応援してほしいんです」
それから意味深な表情になった。
「レディいこ?」
やっぱりこの子は油断ならないわね。
アタシが「いこ」って名前で壮二くん右固定の薄い本出してることだけじゃなくて、腐女子は30過ぎたら貴腐人になること、アタシが30過ぎてることまで知ってるなんて。
アタシは肩の高さに両手を上げて小さく降参した。
「分かったわ。仰せのままに」
そして水曜日当日。
コーンスープを飲みながら高田くんが自然に切り出した。
「なあ、最近なんか疲れてないか?
ちょっと横になってけよ。お前ほっとくと大丈夫って言うだけで絶対寝ないだろ?」
やればできるじゃない、高田くん。
「じゃあ、そうさせてもらおうかな?」
壁に立て掛けてあった洗えるスポーツマットを床に敷く。そこに倒れ込んだのは……高田くん。
馬場くんが服を脱がせて筋トレ用のゴムバンドでマットに縛りつける。じっくりと筋肉質な体を鑑賞してから手で撫で回し、次に唇を這わせる。
「ん……」
高田くんから漏れた声にビクつくどころか、目に宿る炎が一層燃え上がる馬場くん。男はレム睡眠になれば勝手に硬くなることを知っているのね。
そこを集中的に刺激してどんどん大きくしてから、馬場君がポケットから何か取り出した。
手に収まるくらい小さな密閉袋にローションを入れておいて体温で温めてたのね。本当に抜かりない子。
そしてジャージすら脱がずにずらしただけで自分の中へと招き入れた。
休憩時間は綺麗にしただけだと思ってたら、ほぐすところまでやってあったのね。そんな状態でいつも通りの爽やか笑顔を保っていたとは。
ああ、でも高田くんへの気持ちは本物なのね。なんて顔してるの。
「ん、んんっ、ふっ……。
っかだ、たかだ!
くっ、あ、あああっ!」
床に置いといたティッシュで受け止めて拭き取る。ここまで用意周到だとただの健気に思えてくるわ。
ジャージを戻して高田くんに服を着せようとする。
え!? 無かったことにするつもり?
これはアタシも完全に予想外だったわ。既成事実を作って迫ると思ってたから。
高田くんの服を持つ馬場くんの指がぎこちない。もう薬が効いてるはずなのに意地でも秘めておくつもりなのね。
時間差で効くように仕込んだ高田くんへの睡眠薬、馬場くんへの痺れ薬。
それでもここまでタイミングばっちりなんて、アタシってナースよりも麻酔科医か薬剤師の方が向いてたかしら。
ぎりぎり間に合って、目を開けた高田くんは元通りの姿。
「あれ?
俺……」
体を起こして、隣で横たわっている馬場くんを不思議そうに見つめる。
「馬場?
どうした?
眠くないの?」
「か、らだが……お……うように……かないんだ」
「鍛えてるからかな?
ちゃんと効かなかったのか」
「え、たかだ?」
高田くんが見たことない静かさで馬場くんに床ドンをする。
「ああこママが一服もれるって人づてに聞いてさ、お願いしたんだ。
初めて会った中三の時からずっっっと好きだった」
これ本当に高田くんの声?
「っかった、わかった。おれたち」
やっと気付いたのね。あんなに賢いのに、どうして両想いなことには気付けなかったのかしら。
そして残念ながら高田くんは全く気付いてないみたい。宥められると思ったのか、高田くんは上体を起こして脱いだジャージを馬場くんの猿轡にした。
「ごめん、どうしてもやりたい」
ゴムバンドの感触が体に残ってたり、なんでここにあるのかって思ったりしないのかしら?
疑問は持たなくてもあることは認識したようで馬場くんの手を縛る。
「お前色々スゴイからさ、とりあえず一回やっとかないと逃げられそう」
必死に首を振る馬場くんの視線をしっかり受け止めながらも動きは止めない。
旅行コスメの小瓶に入ったローションを口に含むと、その中に馬場くんを浸した。零れないように唇をしっかりと添わせて舌で塗りたくっている。
顔を上げて手に吐き出して自分の中にも塗ってから、緊張した面持ちで先端を当てがってゆっくり沈む。
「ってえ!
っ、本当は入れたかったけど、こんな思い大好きな馬場にさせたくないし、準備がいるから不意打ちは出来ないだろ?
それでももう我慢できなかった。どんな形でもいいから一つになってみたかった。
ごめんな、すぐに終わらせるから」
痛みの方が勝っている状態から馬場くんへの愛撫でなんとか昇りつめようとする高田くん。そんなことされたら馬場くんの方が先にいくわよね。
痛みを忘れるほど驚いた高田くんが腰の動きを止める。
「……馬場……気持ち良かったのか?」
静かにしっかり頷いた馬場くんを見て、猿轡とゴムバンドをほどいてあげる。
馬場くんが自分を跨いでいる足からジャージを脱がせる。うまく動けない馬場くんに合わせて高田くんが足を伸ばす。
「全部脱いで、全部入れて。
俺もずっと好きだった」
「でも準備」
「してあるから」
珍しく食い気味に話す馬場くんに高田くんが見惚れる。あの24時間接客モードな馬場くんが飢えている。高田くんを欲しがっている。
そこからの二人は無邪気な猛獣だった。
・
・
・
アタシのお店のバックヤード。
動画が終わっても動けない私の後ろで、出入口を塞いでた馬場くんは相変わらずの接客モード。
「お気に召しました?」
「勿論よ! もう一回だけ観させて!」
「ごめんなさい。
この一回だって本当に危険なことなんですから」
そうよね。そもそもよく観させてくれたわよね。
「そうよね。ありがと。この記憶を忘れないわ」
アタシが両手を胸に当てて一度目を閉じて開けると、馬場くんもスマホを両手に持って胸に当てた。
「こちらありがとうございました。一生の宝物です」
その姿は賢く人懐っこい好青年。
スマホに入っている動画では上にも下にも右にも左にもなったのに、完璧なニュートラルモードでお店を出て行った。
今年オープンしたばかりのジムはチェーン店で東京から来た30代の男性3人が仕切っている。
店長は有名な空手選手の弟でダビデ像みたいな体の壮二くん。苗字で呼ばれるのをイヤがるの。
副店長は体育の教員免許を持っている馬場くん。ダビデとまではいかないながらも良い体。爽やかな文武両道風。あくまで『風』よ。アタシの勘が油断しちゃいけないと言っている。
もう一人の副店長は元気いっぱいの高田くん。二人よりも二回りほど小柄で……とにかく元気いっぱい。
「ああこママ! お疲れさまでーす!」
閉店後、残り物をお裾分けするのが日課になってる。一人が取りに来て、閉店業務の後に三人でジムのスタッフルームで食べる。食器は翌日洗って返ってくる。
今日取りに来たのは高田くん。食事の乗ったワゴンに手を掛けたまま動かない。
「ねえママ、昔はブラックな白衣の天使だったんだって?」
「あらやだ、どこから聞いたの?」
誰とでもすぐに仲良くなる高田くん。もうこの土地にそこまで馴染んでるのね。
「へへ、内緒。
それでさ、今でも一服もったりできるってホント?」
「さ~、どうかしら?」
「焦らさないでよっ。
馬場にもってほしいんだ。今度の水曜日に」
「水曜日は壮二くんの定休日よね。二人っきりのスタッフルームでナニする気かしら?」
なーんて、アタシはとっくにお見通しだったけどね。
「な、なんもしないよ!
たださ、最近疲れてるみたいだから、ぐっすり眠ってほしいなって思っただけ!
普通に休めって言っても休まないからさ、そんだけ!」
「あらそうなの。アタシったら早とちり。ごめんなさいね。
いいわ。水曜日にね」
「ありがと!
あ、壮二には内緒にしてね」
元気にワゴンを押してお店を出る高田くんにアタシも笑顔で手を振った。
中学生だってもう少し上手に嘘つけるわよ?
翌日取りに来たのは馬場くん。実のお母さんにもママと呼びかけたことがなくて恥ずかしいらしい。
「女将さん、お疲れ様です」
背が高い馬場くんは椅子に座ってアタシを見上げた。
「ねえ女将さん、おクスリに詳しいって本当?」
高田くんったら口が滑ったのかしら?
いいえ、アタシの勘が違うと言ってる。ここは大事な局面よ。
「そこそこね。この歳になるとお肌に足腰、色んなお薬が必要なのよ」
頬を片手で包んでわざとらしく困って見せる。
馬場くんはまだ余裕の表情。
「とぼけないで下さい」
かと思ったら子犬のような空気になる。
「壮二を右に置くのがお好きなようですけど、俺と高田のことを応援してほしいんです」
それから意味深な表情になった。
「レディいこ?」
やっぱりこの子は油断ならないわね。
アタシが「いこ」って名前で壮二くん右固定の薄い本出してることだけじゃなくて、腐女子は30過ぎたら貴腐人になること、アタシが30過ぎてることまで知ってるなんて。
アタシは肩の高さに両手を上げて小さく降参した。
「分かったわ。仰せのままに」
そして水曜日当日。
コーンスープを飲みながら高田くんが自然に切り出した。
「なあ、最近なんか疲れてないか?
ちょっと横になってけよ。お前ほっとくと大丈夫って言うだけで絶対寝ないだろ?」
やればできるじゃない、高田くん。
「じゃあ、そうさせてもらおうかな?」
壁に立て掛けてあった洗えるスポーツマットを床に敷く。そこに倒れ込んだのは……高田くん。
馬場くんが服を脱がせて筋トレ用のゴムバンドでマットに縛りつける。じっくりと筋肉質な体を鑑賞してから手で撫で回し、次に唇を這わせる。
「ん……」
高田くんから漏れた声にビクつくどころか、目に宿る炎が一層燃え上がる馬場くん。男はレム睡眠になれば勝手に硬くなることを知っているのね。
そこを集中的に刺激してどんどん大きくしてから、馬場君がポケットから何か取り出した。
手に収まるくらい小さな密閉袋にローションを入れておいて体温で温めてたのね。本当に抜かりない子。
そしてジャージすら脱がずにずらしただけで自分の中へと招き入れた。
休憩時間は綺麗にしただけだと思ってたら、ほぐすところまでやってあったのね。そんな状態でいつも通りの爽やか笑顔を保っていたとは。
ああ、でも高田くんへの気持ちは本物なのね。なんて顔してるの。
「ん、んんっ、ふっ……。
っかだ、たかだ!
くっ、あ、あああっ!」
床に置いといたティッシュで受け止めて拭き取る。ここまで用意周到だとただの健気に思えてくるわ。
ジャージを戻して高田くんに服を着せようとする。
え!? 無かったことにするつもり?
これはアタシも完全に予想外だったわ。既成事実を作って迫ると思ってたから。
高田くんの服を持つ馬場くんの指がぎこちない。もう薬が効いてるはずなのに意地でも秘めておくつもりなのね。
時間差で効くように仕込んだ高田くんへの睡眠薬、馬場くんへの痺れ薬。
それでもここまでタイミングばっちりなんて、アタシってナースよりも麻酔科医か薬剤師の方が向いてたかしら。
ぎりぎり間に合って、目を開けた高田くんは元通りの姿。
「あれ?
俺……」
体を起こして、隣で横たわっている馬場くんを不思議そうに見つめる。
「馬場?
どうした?
眠くないの?」
「か、らだが……お……うように……かないんだ」
「鍛えてるからかな?
ちゃんと効かなかったのか」
「え、たかだ?」
高田くんが見たことない静かさで馬場くんに床ドンをする。
「ああこママが一服もれるって人づてに聞いてさ、お願いしたんだ。
初めて会った中三の時からずっっっと好きだった」
これ本当に高田くんの声?
「っかった、わかった。おれたち」
やっと気付いたのね。あんなに賢いのに、どうして両想いなことには気付けなかったのかしら。
そして残念ながら高田くんは全く気付いてないみたい。宥められると思ったのか、高田くんは上体を起こして脱いだジャージを馬場くんの猿轡にした。
「ごめん、どうしてもやりたい」
ゴムバンドの感触が体に残ってたり、なんでここにあるのかって思ったりしないのかしら?
疑問は持たなくてもあることは認識したようで馬場くんの手を縛る。
「お前色々スゴイからさ、とりあえず一回やっとかないと逃げられそう」
必死に首を振る馬場くんの視線をしっかり受け止めながらも動きは止めない。
旅行コスメの小瓶に入ったローションを口に含むと、その中に馬場くんを浸した。零れないように唇をしっかりと添わせて舌で塗りたくっている。
顔を上げて手に吐き出して自分の中にも塗ってから、緊張した面持ちで先端を当てがってゆっくり沈む。
「ってえ!
っ、本当は入れたかったけど、こんな思い大好きな馬場にさせたくないし、準備がいるから不意打ちは出来ないだろ?
それでももう我慢できなかった。どんな形でもいいから一つになってみたかった。
ごめんな、すぐに終わらせるから」
痛みの方が勝っている状態から馬場くんへの愛撫でなんとか昇りつめようとする高田くん。そんなことされたら馬場くんの方が先にいくわよね。
痛みを忘れるほど驚いた高田くんが腰の動きを止める。
「……馬場……気持ち良かったのか?」
静かにしっかり頷いた馬場くんを見て、猿轡とゴムバンドをほどいてあげる。
馬場くんが自分を跨いでいる足からジャージを脱がせる。うまく動けない馬場くんに合わせて高田くんが足を伸ばす。
「全部脱いで、全部入れて。
俺もずっと好きだった」
「でも準備」
「してあるから」
珍しく食い気味に話す馬場くんに高田くんが見惚れる。あの24時間接客モードな馬場くんが飢えている。高田くんを欲しがっている。
そこからの二人は無邪気な猛獣だった。
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アタシのお店のバックヤード。
動画が終わっても動けない私の後ろで、出入口を塞いでた馬場くんは相変わらずの接客モード。
「お気に召しました?」
「勿論よ! もう一回だけ観させて!」
「ごめんなさい。
この一回だって本当に危険なことなんですから」
そうよね。そもそもよく観させてくれたわよね。
「そうよね。ありがと。この記憶を忘れないわ」
アタシが両手を胸に当てて一度目を閉じて開けると、馬場くんもスマホを両手に持って胸に当てた。
「こちらありがとうございました。一生の宝物です」
その姿は賢く人懐っこい好青年。
スマホに入っている動画では上にも下にも右にも左にもなったのに、完璧なニュートラルモードでお店を出て行った。
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