吸血鬼 詰め合わせ

ritkun

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吸血鬼×ショタ(微エロ)

ひどい吸血鬼(吸血鬼サイド)

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 人間の世界に来た瞬間から分かっていた。

 目には見えない。ただ温かい輝きのある方向が分かるだけ。それが運命の相手。

 初めての土地も珍しい建物もどうでもいい。早く輝きの正体を見たい、触れたい、手に入れたい。

 辿り着いた輝きの中心にいるのは小さな男の子だった。消えそうな命の灯を抱えて静かに俺に抱きついた。

 もう大丈夫だよ。俺とずっと一緒にいよう。
 血を飲み込む度に鼻に抜ける薬品の匂いさえ決意に変わる。
 俺が守るんだ。俺が飲むからじゃなく元気に過ごせるように、もっと美味しい血にしてあげる。



 弱っていた状態で契約したから体が変化したことへの反動が大きかったみたい。活力のある生き物ならすぐに喋ったりもするそうだけど、この子は相当時間が掛かりそう。

 心配してるよ。早く話せるようになってほしいよ。本気で思ってる。

 だから今日もこの子の土地で採れた新鮮な野菜を用意した。この子の口のサイズに合わせて小さく切った物をフォークに刺す。

「あーん」
 俺の言葉に合わせてパカっと口を開ける。そこにキュウリをそっと入れる。
「もぐもぐもぐ、もぐもぐもぐ、もぐもぐもぐ」
 俺の言葉に合わせて口を動かす。
「ごっくん」
 全部飲み込んだ。

 元気になったらこんなことも出来なくなるなぁなんて思ってないからね。

 運命の相手は俺たちの斜め後ろに立ちたがる。この子は一歩が小さいし体も丈夫じゃなかったから俺が左腕に座らせて抱っこして歩くのが基本。

 人間に限らず、運命の相手は契約したら故郷には連れて行かない。俺たちの魅了の能力に掛かった他の生き物とケンカになるから。

 今のこの子に限ってはトイレとかの面倒を見ないといけないから連れて行く。仲間が見てくれるって言うけど離れたくない。

 正直に言うと俺たちの種族はそんなに強くない。俺は退魔師による監視の元で警察に協力している。報酬はこの子の活力になる新鮮な野菜や果物。

 デパートに到着したところでイヤホンから眠そうな声で指示される。
「朝からお疲れさまー。まずはキッズコーナーに行ってみてよ。一応監視してるからよろしくー」

 『一応』なんて言った声の主はやる気が無いわけではない。自分の管轄全体に結界を張って疲れているだけ。センサーとして使っているから寝ていても反応が伝わってきて休まらないそうだ。
 今も緩い声に似合わない圧を肌でしっかりと感じている。

 それにしても俺たちでキッズコーナーってどうなんだろう。まあ、変に思われたら兄弟って言うか魅了でなんとかすればいいか。

 緊張しながらキッズコーナーに行くと店員さんに声を掛けられた。最初は遠くから様子を見ようと思ってたのに。
「ボールハウスのご利用はいかがですか?
 今なら貸し切り状態ですよ?」

 俺の返事を待たずに畳みかけてくる。
「本日はお二人でいらしたんですか?
 お母様は?」
 やばい。怪しまれてる。

 店員さんがためらいがちに続ける。
「もしよかったら、私がこの子のお母さんになりましょうか?」
 魅了に掛かっちゃっただけか?
 だったらこの子だけなのは変だよな。俺にはお姉さんになりたいってこと?

 店員さんが潤んだ目で俺を見上げて更に続ける。
「お父様にも、安らげる相手が必要だと思うんです」
 は?

 俺は19歳でこの子は8歳だぞ?
 どう考えても俺たちは兄弟だろ!

 落ち着け。捜査中に目立ってはいけない。
 適当にかわして自動販売機横のベンチに座った。

 いつものように左足に横向きで座らせるのじゃなく、両足に跨るように座らせて見つめ合う。

 分かってる。俺が老けてるんだ。
 確かにこの子も5、6歳に見えるくらい小さい。それはずっと入院してたことと関係あるんだろう。

 この子のせいじゃない。分かってる。
 それにしても小さいな。顔も小さい。なのに目は大きい。肉が少ないように見えるほっぺもツンツンすると意外に指が食い込む。
 つまりかわいい。

 あれ?
 何考えてたんだっけ?
 そうそう小さいって話。

 イヤホンから眠そうな声が響く。
「刑事さんがね、今の店員ともう一度話してみてだって」
 違った捜査中だった。

 そして店員さんが犯人だった。

 魅了に掛かってあっさり尻尾を出して洗いざらい喋る店員さんと、退魔師から護符を貰っていて魅了に掛かってないはずの刑事さんに挟まれて大変だった。

 妬いちゃってホント大変だったよ。不安そうな目で見上げてきたり親指と人差し指だけで俺のシャツをつまんでクイクイって引っ張ったりしてくるんだよ。

 そんなかわいい仕草を堪能した後は1日の最後にして最大の試練が待っている。

 そう。それはお風呂の時間。

 俺が服を脱ぐのをウットリしているような目で見てくる。自分で言うのもなんだけど割と仕上がってる方だと思うからね。これが老けて見られる一因でもあるんだろうな。

 腰にバスタオルを巻いて服を脱がせる。
 なにもかもが小さい。そうだよな。親子に見えちゃうくらいだもんな。

 そんな子に俺はなんて感情を。感情っていうか、反応を。どこにも先っぽさえ入らないだろ。

 スポンジ越しであろうと、こんなにかわいい体を撫でたら平常心でいられる自信が無い。だから浅めにお湯を張って半分くらいまで泡でモコモコにしたバスタブに一緒に入る。

 俺のがどうなってるか見られなくて済むのはいいんだけど、それは俺からもバスタブの中が見えないってことで。

 体を支えてあげてる手の感覚に意識が集中してしまう。モチモチの肌と泡のヌルつきが余計に興奮させる。

 頑張って心頭滅却していたのに今日は急に左肩へと右手が伸びてきた。俺の肩の一部分だけを指で何度もなぞる。
「な、ど、どうした?」

 なんだか満足げになって、今度は右肩も左手で同じようになぞる。だいぶ細かな動きができるようになったのは嬉しいけど何をしようとしてるんだ?

 無表情というか無邪気な表情と、小さな指が皮膚1枚だけを挟んで骨を撫でていく感覚で、こう、こみ上げてくるものが……。

 今度は掌で体を上から下、中心から外側に向かって撫でていく。というか払っていく。
 もう少しゆっくりだったり往復させたりしてくれるとムードが出るんだけどね。

 いやいやダメだ。出ちゃダメなんだよ。むしろ出ちゃうから。

 「よし!」って思ったみたいに小さく頷いてから全身で抱きついてきた。

 泡が邪魔だったんだな。泡すら間に挟みたくないくらいにくっつきたかったのか。かわいい子だ。最初のは鎖骨に溜まった泡を掻き出してたのか。俺は泡があるのも良いと思うけどね。目や口に入ったら危ないからね。

 普通のお湯なら口付けることができたのに。お互いの体が何で濡れているのか分からなくなる程に……。なんて考えてはいけない。一緒に入る時は必ず泡風呂にするべきだな。

 妄想と戒めに気を取られていたら首に巻き付けられていた腕の力が緩められた。抱きついている状態から直接跨って座っている状態になって、つまり、この子の中で一番柔らかい部分がムニっと。もう臍に触るくらいの状態だった部分をムニっと。

 君は下りただけのつもりかもしれないけどね、俺にとっては突き上げる感覚に近いんだよね。
 不意の出来事にあっけなく昇りつめてしまった。

 力の入らない頭をバスタブの縁に預けて虚無感を逃がす。

 俺の胸が上下するせいじゃなく泡が動く感じがして頭を戻す。
 浮かぶ泡を除けて水中を見ようとしていた。自分の足の間で何が起こったのか気になるんだろう。

 俺は慌てて両脇に手を入れて持ち上げたものの、驚く無邪気な子になんて言えばいいのか分からない。
 「見ちゃダメ」なんて、何かあるって言ってるようなものだよな。

「そろそろ上がろうか」
 そんなに急いで言うことかとは思わないでいてくれるらしい。素直にバスタブから出ようとする。

 跨ぐ動作もゆっくりで、なんかエロい姿勢でいる時間もその分長くて堪能し放題なんて思ってはいけない。

 思うように体が動かなくてもどかしいだろう。この子は辛いんだから楽しんじゃいけない。俺はいつでも手を貸せるようにしっかり見ているだけだ。

 シャワーを出して温度を確かめてから固定ホルダーに掛ける。
「自分で流してごらん」

 できるだけ泡を纏ってバスタブの縁に座り、更に姿勢でさりげなく隠して見守る。

 きれいに泡を落として、両手を広げて俺を見上げた。「どう?できてる?」って顔はかわいいんだけどね。体がかわいくないわけじゃないよ。ただそれ以上に眩しいんだよ。

 俺はお兄ちゃんという役に徹する。
「うん。上手にできたね。
 今日は拭くのも自分でやってみようか。ゆっくりでいいから、背中や足の指もちゃんと拭くんだよ」
 脱衣所へと見送って擦りガラスのドアが閉まるのを見届ける。

 バスタブから泡を掬って、再び硬くなり始めている場所を包む。汚れた感情から吐き出された物は真っ白で何とも言えない気持ちになった。

 俺たちは人間が思ってる吸血鬼とは違う。むやみに血や体を貪ったりしない。みんな誤解に苦しんでる。

 なのに俺はこんなにもあの子を貪りたい、あの子の中を俺で満たしたいと思っている。快楽を知る歳でもなく、受け入れられる体でもないあの子を。

 誤解なんかじゃない。むしろ人間が思うよりずっと、俺はひどい吸血鬼だ。
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