4 / 13
4話
しおりを挟む
待ち遠しかった春も終わりへと準備を進めている。
桜色1色だった窓の外はもう葉桜へと変わったせいで緑が目立つようになってきている。
(今年ももう桜終わりかー。早かったな……)
窓の外を眺めながら、真夏は桜の木を見ている。
夏はまだ来ないが、春は中盤に差し掛かっている。
新鮮な花や雪解け水の香りは春だ、と思わせる。
空気が馴染んできた春は春とあまり感じられない。
真夏の考え方である。
でも、そんな春のことも好きなのだ。
真夏の前の席に座っていた秋菜が話しかける。
「最近よく春架ちゃん来るよね」
「そうだね。ずっと明瀬君に会いに来てるもんね」
「この前喧嘩したかと思ったのに、次の日になったらすぐ会いに来たよね。本当にカップルだったりして~」
「そうだよね。だったらお似合いだね」
「えぇ~! 真夏は?!」
「へ?」
「真夏は冬馬君のこと、もういいの?」
「もういいも何も、好きじゃないから……」
「むぅ~……。ほんとにほんと? 私、真夏のこと応援したいよ~」
「ふふっ。ありがとね」
真夏は自分が恋愛をして上手くいくとは思えなかった。
足が不自由なため相手に合わせられる自信が無いのだ。また、その人にとってのデメリットになってしまうのではないかと怖がってもいる。
ドラマや漫画のような青春を送ってみたい。
甘くて苦くて、でも酸っぱくて。
そんな恋愛がしてみたい。
ただ真夏には勇気がなかった。
「真夏は可愛いんだから自信持ちなよ」
「そんなことないよ。秋菜の方が100倍可愛いよ」
「真夏は上手いな~」
今日、真夏と秋菜はお揃いのヘアピンを付けている。
真夏は空色、秋菜はラベンダー色のスリーピン。
お互い片方に付けていて、ノートを取る時に片方の髪の毛が降りてこなくて便利らしい。
「マジで教えてね。私は真夏のこと1番に応援するからさ」
「マジで教えるよ。秋菜もね?」
「あったりまえ~」
真夏には秋菜という友人がいる。
ヘアピンをお揃いにするのも一緒にお菓子を食べるのも、全部青春である。
だから、満足しているという理由もあり、恋愛は自分から程遠いものだと感じてしまう。
「てか、腰痛いの治らなそう?」
「うーん。まだ痛いけど、痛み止め飲んでるから大丈夫かな」
「大変そうだったら保健室連れていくから言ってね?」
「うん、ありがと」
これから7時間目が始まる。
LHRの時間だ。
「皆さんは2年生なって文系と理系で別れましたよね。そしてここにいる皆さんは文系を選んだ。やりたいことが決まっている人もそうでない人も沢山いると思います。ですから、今の時間は自分の興味の持てる分野について調べる時間にしたいと思います。まあ、いわゆる自由課題研究というやつですね。テーマが決まり次第このプリントに書き込んで、先生に提出してくださーい」
担任の先生は列ごとに提出用のプリントを配っていく。
クラスと名前を書く欄とテーマを書くであろう黒い囲みがプリントに書かれていた。
「今日中に出せない人は……うーん、まあ、今週中に出してくださいね」
先生は進路関係だから悩む人もいるだろう、と付け足す。
(進路、か……。あんまり考えたことなかったな)
真夏はシャープペンシルのキャップの方を顎に添え、考えるが、何1つとして案は出てこない。
毎日義足で歩ける訳ではない。
OLや接客業は向いていないのではないかと考える。
車椅子で働くのも大変で、周りの人に迷惑をかけてしまうかもしれない。
真夏の心の中ではマイナスのもしも話が飛び交っている。
「真夏はお菓子作り上手だし、ケーキ屋とか良さそうだよね」
悩んで動かなくなった真夏を気にして、秋菜は明るく声を掛ける。
「ケーキ屋いいね。秋菜がお店のロゴとかデザインしてくれるの?」
「それいいね~。任せてよ、可愛いやつにしてあげるあらさ」
秋菜は中学の時からデザイナー志望だった。
そのため、誕生日でくれるズボンはいつもセンスの良いものばかりである。
結局、真夏はクラスと名前の欄以外埋めることが出来ず、そのまま家へプリントを持ち帰った。
桜色1色だった窓の外はもう葉桜へと変わったせいで緑が目立つようになってきている。
(今年ももう桜終わりかー。早かったな……)
窓の外を眺めながら、真夏は桜の木を見ている。
夏はまだ来ないが、春は中盤に差し掛かっている。
新鮮な花や雪解け水の香りは春だ、と思わせる。
空気が馴染んできた春は春とあまり感じられない。
真夏の考え方である。
でも、そんな春のことも好きなのだ。
真夏の前の席に座っていた秋菜が話しかける。
「最近よく春架ちゃん来るよね」
「そうだね。ずっと明瀬君に会いに来てるもんね」
「この前喧嘩したかと思ったのに、次の日になったらすぐ会いに来たよね。本当にカップルだったりして~」
「そうだよね。だったらお似合いだね」
「えぇ~! 真夏は?!」
「へ?」
「真夏は冬馬君のこと、もういいの?」
「もういいも何も、好きじゃないから……」
「むぅ~……。ほんとにほんと? 私、真夏のこと応援したいよ~」
「ふふっ。ありがとね」
真夏は自分が恋愛をして上手くいくとは思えなかった。
足が不自由なため相手に合わせられる自信が無いのだ。また、その人にとってのデメリットになってしまうのではないかと怖がってもいる。
ドラマや漫画のような青春を送ってみたい。
甘くて苦くて、でも酸っぱくて。
そんな恋愛がしてみたい。
ただ真夏には勇気がなかった。
「真夏は可愛いんだから自信持ちなよ」
「そんなことないよ。秋菜の方が100倍可愛いよ」
「真夏は上手いな~」
今日、真夏と秋菜はお揃いのヘアピンを付けている。
真夏は空色、秋菜はラベンダー色のスリーピン。
お互い片方に付けていて、ノートを取る時に片方の髪の毛が降りてこなくて便利らしい。
「マジで教えてね。私は真夏のこと1番に応援するからさ」
「マジで教えるよ。秋菜もね?」
「あったりまえ~」
真夏には秋菜という友人がいる。
ヘアピンをお揃いにするのも一緒にお菓子を食べるのも、全部青春である。
だから、満足しているという理由もあり、恋愛は自分から程遠いものだと感じてしまう。
「てか、腰痛いの治らなそう?」
「うーん。まだ痛いけど、痛み止め飲んでるから大丈夫かな」
「大変そうだったら保健室連れていくから言ってね?」
「うん、ありがと」
これから7時間目が始まる。
LHRの時間だ。
「皆さんは2年生なって文系と理系で別れましたよね。そしてここにいる皆さんは文系を選んだ。やりたいことが決まっている人もそうでない人も沢山いると思います。ですから、今の時間は自分の興味の持てる分野について調べる時間にしたいと思います。まあ、いわゆる自由課題研究というやつですね。テーマが決まり次第このプリントに書き込んで、先生に提出してくださーい」
担任の先生は列ごとに提出用のプリントを配っていく。
クラスと名前を書く欄とテーマを書くであろう黒い囲みがプリントに書かれていた。
「今日中に出せない人は……うーん、まあ、今週中に出してくださいね」
先生は進路関係だから悩む人もいるだろう、と付け足す。
(進路、か……。あんまり考えたことなかったな)
真夏はシャープペンシルのキャップの方を顎に添え、考えるが、何1つとして案は出てこない。
毎日義足で歩ける訳ではない。
OLや接客業は向いていないのではないかと考える。
車椅子で働くのも大変で、周りの人に迷惑をかけてしまうかもしれない。
真夏の心の中ではマイナスのもしも話が飛び交っている。
「真夏はお菓子作り上手だし、ケーキ屋とか良さそうだよね」
悩んで動かなくなった真夏を気にして、秋菜は明るく声を掛ける。
「ケーキ屋いいね。秋菜がお店のロゴとかデザインしてくれるの?」
「それいいね~。任せてよ、可愛いやつにしてあげるあらさ」
秋菜は中学の時からデザイナー志望だった。
そのため、誕生日でくれるズボンはいつもセンスの良いものばかりである。
結局、真夏はクラスと名前の欄以外埋めることが出来ず、そのまま家へプリントを持ち帰った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる