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4話
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待ち遠しかった春も終わりへと準備を進めている。
桜色1色だった窓の外はもう葉桜へと変わったせいで緑が目立つようになってきている。
(今年ももう桜終わりかー。早かったな……)
窓の外を眺めながら、真夏は桜の木を見ている。
夏はまだ来ないが、春は中盤に差し掛かっている。
新鮮な花や雪解け水の香りは春だ、と思わせる。
空気が馴染んできた春は春とあまり感じられない。
真夏の考え方である。
でも、そんな春のことも好きなのだ。
真夏の前の席に座っていた秋菜が話しかける。
「最近よく春架ちゃん来るよね」
「そうだね。ずっと明瀬君に会いに来てるもんね」
「この前喧嘩したかと思ったのに、次の日になったらすぐ会いに来たよね。本当にカップルだったりして~」
「そうだよね。だったらお似合いだね」
「えぇ~! 真夏は?!」
「へ?」
「真夏は冬馬君のこと、もういいの?」
「もういいも何も、好きじゃないから……」
「むぅ~……。ほんとにほんと? 私、真夏のこと応援したいよ~」
「ふふっ。ありがとね」
真夏は自分が恋愛をして上手くいくとは思えなかった。
足が不自由なため相手に合わせられる自信が無いのだ。また、その人にとってのデメリットになってしまうのではないかと怖がってもいる。
ドラマや漫画のような青春を送ってみたい。
甘くて苦くて、でも酸っぱくて。
そんな恋愛がしてみたい。
ただ真夏には勇気がなかった。
「真夏は可愛いんだから自信持ちなよ」
「そんなことないよ。秋菜の方が100倍可愛いよ」
「真夏は上手いな~」
今日、真夏と秋菜はお揃いのヘアピンを付けている。
真夏は空色、秋菜はラベンダー色のスリーピン。
お互い片方に付けていて、ノートを取る時に片方の髪の毛が降りてこなくて便利らしい。
「マジで教えてね。私は真夏のこと1番に応援するからさ」
「マジで教えるよ。秋菜もね?」
「あったりまえ~」
真夏には秋菜という友人がいる。
ヘアピンをお揃いにするのも一緒にお菓子を食べるのも、全部青春である。
だから、満足しているという理由もあり、恋愛は自分から程遠いものだと感じてしまう。
「てか、腰痛いの治らなそう?」
「うーん。まだ痛いけど、痛み止め飲んでるから大丈夫かな」
「大変そうだったら保健室連れていくから言ってね?」
「うん、ありがと」
これから7時間目が始まる。
LHRの時間だ。
「皆さんは2年生なって文系と理系で別れましたよね。そしてここにいる皆さんは文系を選んだ。やりたいことが決まっている人もそうでない人も沢山いると思います。ですから、今の時間は自分の興味の持てる分野について調べる時間にしたいと思います。まあ、いわゆる自由課題研究というやつですね。テーマが決まり次第このプリントに書き込んで、先生に提出してくださーい」
担任の先生は列ごとに提出用のプリントを配っていく。
クラスと名前を書く欄とテーマを書くであろう黒い囲みがプリントに書かれていた。
「今日中に出せない人は……うーん、まあ、今週中に出してくださいね」
先生は進路関係だから悩む人もいるだろう、と付け足す。
(進路、か……。あんまり考えたことなかったな)
真夏はシャープペンシルのキャップの方を顎に添え、考えるが、何1つとして案は出てこない。
毎日義足で歩ける訳ではない。
OLや接客業は向いていないのではないかと考える。
車椅子で働くのも大変で、周りの人に迷惑をかけてしまうかもしれない。
真夏の心の中ではマイナスのもしも話が飛び交っている。
「真夏はお菓子作り上手だし、ケーキ屋とか良さそうだよね」
悩んで動かなくなった真夏を気にして、秋菜は明るく声を掛ける。
「ケーキ屋いいね。秋菜がお店のロゴとかデザインしてくれるの?」
「それいいね~。任せてよ、可愛いやつにしてあげるあらさ」
秋菜は中学の時からデザイナー志望だった。
そのため、誕生日でくれるズボンはいつもセンスの良いものばかりである。
結局、真夏はクラスと名前の欄以外埋めることが出来ず、そのまま家へプリントを持ち帰った。
桜色1色だった窓の外はもう葉桜へと変わったせいで緑が目立つようになってきている。
(今年ももう桜終わりかー。早かったな……)
窓の外を眺めながら、真夏は桜の木を見ている。
夏はまだ来ないが、春は中盤に差し掛かっている。
新鮮な花や雪解け水の香りは春だ、と思わせる。
空気が馴染んできた春は春とあまり感じられない。
真夏の考え方である。
でも、そんな春のことも好きなのだ。
真夏の前の席に座っていた秋菜が話しかける。
「最近よく春架ちゃん来るよね」
「そうだね。ずっと明瀬君に会いに来てるもんね」
「この前喧嘩したかと思ったのに、次の日になったらすぐ会いに来たよね。本当にカップルだったりして~」
「そうだよね。だったらお似合いだね」
「えぇ~! 真夏は?!」
「へ?」
「真夏は冬馬君のこと、もういいの?」
「もういいも何も、好きじゃないから……」
「むぅ~……。ほんとにほんと? 私、真夏のこと応援したいよ~」
「ふふっ。ありがとね」
真夏は自分が恋愛をして上手くいくとは思えなかった。
足が不自由なため相手に合わせられる自信が無いのだ。また、その人にとってのデメリットになってしまうのではないかと怖がってもいる。
ドラマや漫画のような青春を送ってみたい。
甘くて苦くて、でも酸っぱくて。
そんな恋愛がしてみたい。
ただ真夏には勇気がなかった。
「真夏は可愛いんだから自信持ちなよ」
「そんなことないよ。秋菜の方が100倍可愛いよ」
「真夏は上手いな~」
今日、真夏と秋菜はお揃いのヘアピンを付けている。
真夏は空色、秋菜はラベンダー色のスリーピン。
お互い片方に付けていて、ノートを取る時に片方の髪の毛が降りてこなくて便利らしい。
「マジで教えてね。私は真夏のこと1番に応援するからさ」
「マジで教えるよ。秋菜もね?」
「あったりまえ~」
真夏には秋菜という友人がいる。
ヘアピンをお揃いにするのも一緒にお菓子を食べるのも、全部青春である。
だから、満足しているという理由もあり、恋愛は自分から程遠いものだと感じてしまう。
「てか、腰痛いの治らなそう?」
「うーん。まだ痛いけど、痛み止め飲んでるから大丈夫かな」
「大変そうだったら保健室連れていくから言ってね?」
「うん、ありがと」
これから7時間目が始まる。
LHRの時間だ。
「皆さんは2年生なって文系と理系で別れましたよね。そしてここにいる皆さんは文系を選んだ。やりたいことが決まっている人もそうでない人も沢山いると思います。ですから、今の時間は自分の興味の持てる分野について調べる時間にしたいと思います。まあ、いわゆる自由課題研究というやつですね。テーマが決まり次第このプリントに書き込んで、先生に提出してくださーい」
担任の先生は列ごとに提出用のプリントを配っていく。
クラスと名前を書く欄とテーマを書くであろう黒い囲みがプリントに書かれていた。
「今日中に出せない人は……うーん、まあ、今週中に出してくださいね」
先生は進路関係だから悩む人もいるだろう、と付け足す。
(進路、か……。あんまり考えたことなかったな)
真夏はシャープペンシルのキャップの方を顎に添え、考えるが、何1つとして案は出てこない。
毎日義足で歩ける訳ではない。
OLや接客業は向いていないのではないかと考える。
車椅子で働くのも大変で、周りの人に迷惑をかけてしまうかもしれない。
真夏の心の中ではマイナスのもしも話が飛び交っている。
「真夏はお菓子作り上手だし、ケーキ屋とか良さそうだよね」
悩んで動かなくなった真夏を気にして、秋菜は明るく声を掛ける。
「ケーキ屋いいね。秋菜がお店のロゴとかデザインしてくれるの?」
「それいいね~。任せてよ、可愛いやつにしてあげるあらさ」
秋菜は中学の時からデザイナー志望だった。
そのため、誕生日でくれるズボンはいつもセンスの良いものばかりである。
結局、真夏はクラスと名前の欄以外埋めることが出来ず、そのまま家へプリントを持ち帰った。
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