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2話
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休み時間になり、教室中が賑やかになる。
真夏の元に秋奈が飲み物と間食のお菓子を持ってくる。
「一緒に食ーべよ」
「うん! 今日ね、私、クッキー持ってきたよ」
「食べたい食べたい!」
「えへへ。食べよ食べよ」
ガラッ!
勢い良く教室のドアが開く。
そこにはキラキラした女の子がいた。
靴の色からして同じ学年。
彼女は冬馬がいつも絡んでいる友達に声を掛ける。
「ねぇねぇ、冬馬は?」
男子の1人が答える。
「分からん。あいつ、いつの間にかいなくなってるんだよなぁ」
「はぁ~? 春架、冬馬に用事あって来たんだけど~」
「じゃあ、俺らと話して待っとくー?」
「ははっ。冬馬いないならやめとく~」
春架は男子たちをすり抜けて教室を出ていく。
彼女が出ていった後の教室は少し静かに感じられる。
「春架ちゃんって明瀬君の彼女なの?」
「さぁね。でも噂はずっとあるよねー」
「へぇー」
言い出したのは真夏なのに興味のないような返事をする。
それに対して、秋菜は手で口元を抑えながらにやけ始める。
「えー? えー? もーしーかーしーてー?」
「え、何……」
「冬馬君のこと気になってんの?!」
「違うよ! てか、声大きいよ、秋菜!」
「あはは! 真夏もね」
「ふふっ。確かに~」
教室内の賑やかさは戻る。
声で埋もれる咀嚼音を自分で聞きながら、またお互いに他愛のない話をする。
真夏は右足の太腿を毛布の上から撫でる。
「好きな人出来たら教えてね」
「うん! 秋奈も教えてよ」
高校生らしい会話だ。
「で、冬馬君のこと、どー思ってんの?」
「優しかったけど、感じ悪かった」
「嬉しいか険しいかどっちかにしてよ、その顔」
真夏は秋菜に昨日あったことを説明する。
「ええ~! 意外だね」
「にしても冷たくない?!」
「あはは~。まあ、冬馬君いてよかったじゃん。ひっくり返ってたかもだしね」
「うぅ~……」
真夏は何とも言い返せない。
確かに助かりはしたが、眠りを妨げたからといってそんなにも怒るものだろうか。
不服そうな表情をするもクッキーを頬張る真夏。
片足だけで立って跳びながら車椅子を出すことも出来た。
しかし、腰に負担がかかるし、転んでしまったら起き上がれない。それに真夏は今腰が痛い。
「まぁね……」
「でしょ~?」
「あ、私、保健室に用事あるんだった! 先生に言っておいてくれない?」
「いいよー。押して行こうか?」
「すぐ終わるから大丈夫だよ」
「じゃあ教室から出すくらいはさせて?」
「ふふっ。うん、お願いします」
秋菜は真夏が乗っている車椅子を押して、教室から出してやる。
真夏は軽いので、秋菜はそれを苦と思ったことはない。
「ありがとう、秋菜」
「いいえん。気をつけて行ってきてね」
「はいよー!」
真夏のクラスは2階にあり、保健室は1階にある。
エレベーターを使い、1階へ降りる。
真夏は少しサボってやるか、と思い、遠回りをして保健室に向かう。
車椅子のタイヤが床に擦れる音が聞こえるくらい静かな廊下である。
「ん?」
真夏はクンクンと周囲の匂いを嗅ぎ、首を傾げる。
どこからかタバコの匂いがするのだ。
窓の外を見渡すと、1つ煙が上がってるのが見える。
誰だろう、と思い、窓に近づくと、そこには真夏の知り合いの背中があった。
「先生が吸ってるかと思ったよ」
真夏は思わず声をかけてしまった。
肩すら揺らさず、びっくりする様子もなく彼はこちらを振り向いた。
「ごめんね、声かけちゃった」
「何だよ。叱りにでも来た?」
「ち、違うよ」
「じゃあ何だ。サボり?」
「まぁ、そんなとこ。でも私は教室ちゃんと戻るから」
「そうかよ」
冬馬はまた同じ所に座り込み、タバコを吸い始める。
「美味しい?」
「んだよ、まだいたのか」
「どうせサボりだし、もうちょっとしたら保健室行くしね」
「ハハッ、意外だな。月宮ってもっとちゃんとしてるかと思ってた」
程よく風が通っていて、廊下は快適だった。
でもそれはさっきまでの話。
真夏は冬馬の初めて笑うところを見れたのだ。
それに釣られて真夏も笑う。
「あははっ。そんなことないよ。もうちょっとここにいてもいい?」
「好きにしろよ」
真夏は車椅子を窓の前、冬馬と1番近いところに停める。
そこは太陽が当たっていて暖かった。
真夏の元に秋奈が飲み物と間食のお菓子を持ってくる。
「一緒に食ーべよ」
「うん! 今日ね、私、クッキー持ってきたよ」
「食べたい食べたい!」
「えへへ。食べよ食べよ」
ガラッ!
勢い良く教室のドアが開く。
そこにはキラキラした女の子がいた。
靴の色からして同じ学年。
彼女は冬馬がいつも絡んでいる友達に声を掛ける。
「ねぇねぇ、冬馬は?」
男子の1人が答える。
「分からん。あいつ、いつの間にかいなくなってるんだよなぁ」
「はぁ~? 春架、冬馬に用事あって来たんだけど~」
「じゃあ、俺らと話して待っとくー?」
「ははっ。冬馬いないならやめとく~」
春架は男子たちをすり抜けて教室を出ていく。
彼女が出ていった後の教室は少し静かに感じられる。
「春架ちゃんって明瀬君の彼女なの?」
「さぁね。でも噂はずっとあるよねー」
「へぇー」
言い出したのは真夏なのに興味のないような返事をする。
それに対して、秋菜は手で口元を抑えながらにやけ始める。
「えー? えー? もーしーかーしーてー?」
「え、何……」
「冬馬君のこと気になってんの?!」
「違うよ! てか、声大きいよ、秋菜!」
「あはは! 真夏もね」
「ふふっ。確かに~」
教室内の賑やかさは戻る。
声で埋もれる咀嚼音を自分で聞きながら、またお互いに他愛のない話をする。
真夏は右足の太腿を毛布の上から撫でる。
「好きな人出来たら教えてね」
「うん! 秋奈も教えてよ」
高校生らしい会話だ。
「で、冬馬君のこと、どー思ってんの?」
「優しかったけど、感じ悪かった」
「嬉しいか険しいかどっちかにしてよ、その顔」
真夏は秋菜に昨日あったことを説明する。
「ええ~! 意外だね」
「にしても冷たくない?!」
「あはは~。まあ、冬馬君いてよかったじゃん。ひっくり返ってたかもだしね」
「うぅ~……」
真夏は何とも言い返せない。
確かに助かりはしたが、眠りを妨げたからといってそんなにも怒るものだろうか。
不服そうな表情をするもクッキーを頬張る真夏。
片足だけで立って跳びながら車椅子を出すことも出来た。
しかし、腰に負担がかかるし、転んでしまったら起き上がれない。それに真夏は今腰が痛い。
「まぁね……」
「でしょ~?」
「あ、私、保健室に用事あるんだった! 先生に言っておいてくれない?」
「いいよー。押して行こうか?」
「すぐ終わるから大丈夫だよ」
「じゃあ教室から出すくらいはさせて?」
「ふふっ。うん、お願いします」
秋菜は真夏が乗っている車椅子を押して、教室から出してやる。
真夏は軽いので、秋菜はそれを苦と思ったことはない。
「ありがとう、秋菜」
「いいえん。気をつけて行ってきてね」
「はいよー!」
真夏のクラスは2階にあり、保健室は1階にある。
エレベーターを使い、1階へ降りる。
真夏は少しサボってやるか、と思い、遠回りをして保健室に向かう。
車椅子のタイヤが床に擦れる音が聞こえるくらい静かな廊下である。
「ん?」
真夏はクンクンと周囲の匂いを嗅ぎ、首を傾げる。
どこからかタバコの匂いがするのだ。
窓の外を見渡すと、1つ煙が上がってるのが見える。
誰だろう、と思い、窓に近づくと、そこには真夏の知り合いの背中があった。
「先生が吸ってるかと思ったよ」
真夏は思わず声をかけてしまった。
肩すら揺らさず、びっくりする様子もなく彼はこちらを振り向いた。
「ごめんね、声かけちゃった」
「何だよ。叱りにでも来た?」
「ち、違うよ」
「じゃあ何だ。サボり?」
「まぁ、そんなとこ。でも私は教室ちゃんと戻るから」
「そうかよ」
冬馬はまた同じ所に座り込み、タバコを吸い始める。
「美味しい?」
「んだよ、まだいたのか」
「どうせサボりだし、もうちょっとしたら保健室行くしね」
「ハハッ、意外だな。月宮ってもっとちゃんとしてるかと思ってた」
程よく風が通っていて、廊下は快適だった。
でもそれはさっきまでの話。
真夏は冬馬の初めて笑うところを見れたのだ。
それに釣られて真夏も笑う。
「あははっ。そんなことないよ。もうちょっとここにいてもいい?」
「好きにしろよ」
真夏は車椅子を窓の前、冬馬と1番近いところに停める。
そこは太陽が当たっていて暖かった。
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