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第364話 フェフジンテの街
しおりを挟む──〝フェフジンテの街〟
食事を終え、シナノの家から街へ向かった。
昨日は入りそびれたからな。
街は朝から賑やかだ。露店の店主、買い物客、鍬を持った畑仕事の格好のおっさん、冒険者──
と、こいつ俺はあまり好ましくないな。
憲兵だ。俺はフード付きマントを深く被り直す。
「おや、憲兵から目を逸らしませんね」
「変に逸らすと怪しまれるだろ? 寧ろチラ見だけでも目を真っ直ぐに合わせるほうが疑われないんだよ」
「ユキマサ君、手配されたのってこの数日だよね?」
そんな少し手慣れたことを言う俺にクレハが『まさかね?』って、感じで聞いてくる。
──そういや、指名手配されてから、俺の冒険者登録ってどうなってんだろうな?
こうなった以上、普通にギルドで依頼を受けられるとは思えない。あれ、俺……今無職じゃん。
学校も行ってないし、収入源も無い。
異世界無職で指名手配犯。
うわぁ……結構詰んでね? あーあ、こんな時でも婆ちゃんが居れば笑ってくれたのかね。
何かアルテナにも申し訳なくなってきたな。
異世界召喚→中略→指名手配犯→無職
うーん、俺の知ってる異世界召喚と大分違うぞ?
そもそも、大体の異世界物の話で教会ってのは、悪役な事が多いが、この世界の教会──〝聖教会〟のNo.2の大聖女であるノアとか、めちゃめちゃフレンドリーで常識人、しかも超のつく美少女だったしな。
対して、異世界ファンタジーの大御所、エルフの国があまりいい所では無かったりと、よくある異世界漫画や小説のようには、どうやらいかないみたいだ。
「なあ、シナノ。この街って家売ってないか?」
「……は? まさか買うつもりですか?」
「そのまさかだ。小さいのでいい」
──っと、やべ、失言だったか。
シナノの家の事とかあるのに、小さいのでいいから家が欲しい何てシナノの居る前でする話じゃなかったな。
だが、そんな心配は杞憂だったらしく。シナノは特に気分を悪くした様子も無く返事を返してきた。
「あなた追われてるんですよね? この街に家を買ってどうするんですか? あ、私にくれるんですか!」
キラッと音が聞こえそうな程にシナノは目を輝かせた。
「いや、違ぇよ。俺の〝アイテムストレージ〟は知ってるだろ? あれに入れて持ち運ぶんだよ」
「……? !? え、あ、ああ……じゃないです。意味分からないです。持ち運ぶ家って何ですかっ!?」
ブンブン、ブンブンと手を振る。
「この人やっぱ変です。変人です。何かが可笑しい」
「……よし、昼飯は割勘にするか」
「ユキマサさんは素敵な人です!」
掌返し、そんな言葉がよく似合った。
「ったく、昼飯は銀貨1枚までだぞ? ちなみに残したら罰金だからな──そうだな銀貨2枚の罰金だ」
「ごはんを残すなんて熱が42℃あってもしません!」
「それは残す以前に飯何て用意しないだろ?」
そういや、俺、熱出たこと無いなぁ。
平熱は37℃弱と高めだけど。
「病は食から。具合の悪い時ほど食事を適切に摂るのが私の家の教えです」
つーん、とそっぽを向くシナノ。
どうやら、そこは譲れないらしい。
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