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第357話 シナノの家6
しおりを挟む待つこと15分。
シナノが帰ってきた。
「か、帰りましたぁ……全力ダッシュは疲れますね。さて、私のお肉はどこですか?」
「おかえり。肉なら俺とクレハの胃袋の中だ」
「──!! そ、そんな冗談ですよね……」
「あー、うん。冗談、冗談!」
「ユキマサ君、からかい過ぎ」
「ふはぁ、天国から地獄に落とされた気分です」
「悪い悪い、まあ食えよ」
〝アイテムストレージ〟に隠してた華牛の肉を取り出す。それを見てシナノは心底安堵した顔をする。
肉を受け取ったシナノは綺麗に並べるように肉を鍋にいれていく。
料理は見映えも大事だよな。実に美味そうだ。
シナノは一人占めして食うワケでは無く、ちゃんとクレハにも肉を渡している。クレハも大好物の肉だからかまだまだ食べられる様子だ。
──ん? あれ、俺の分は?
「ユキマサさん、今度は私がよそいますよ」
「ああ、悪い」
よかった。忘れられてなかった。
「どうぞ」
「ありがとな」
よし、華牛は俺は食べるのは初めてだ。
どんな味がするんだろうな、楽しみだ!
……って、あれ?
シナノが装ってくれた奴、肉入ってねぇじゃん。
ネギとしらたきと豆腐と白菜。
ヘルシーな物ばかりだ。
「おい、俺の肉がねぇじゃねぇか!」
「からかいの仕返しです。あ、いえ、嘘です。ごめんなさい。肉を盛ります。器を貸してください」
悪いと思ったのか、謝ってくるシナノ。
俺も念願の肉を受け取った所で、ふとシナノに聞いてみる。
「つーかよ、シナノはパン屋で働いてるんなら肉ぐらい、年に数回ぐらいは食べようと思えば食べられるんじゃないか? 縞牛も華牛も肉の中ではだが、高い物では無いぞ?」
日本換算だと、普通にスーパーで買うのと同じか、少し高いぐらいの値段だ。
庶民的な肉と言って問題ない範囲だろう。
だが、一瞬シナノの箸が止まる。
「少し私のことを話すと、仕事とカッコつけて言いましたが、バイトとは名だけの軽いお手伝いさんです」
シナノが肉を1枚口に運ぶ。
「こんなボロボロの汚い服で髪もボサボサのホームレスの一歩手前の怪しい奴ですから。どこもこんな私を普通に働かせてくれる場所なんてありません」
更に1枚肉を口に運ぶ。
「今の店も、パン屋の仕事は名ばかりで、お店の人の家や庭の掃除、畑の水まき、馬の糞の世話、そんなことばかりです。給金は1時間で銅貨2枚、雇って貰っていて言うのはなんですが、給金激安です。とてもじゃないですがやってはいけません」
「銅貨2枚? おいおい、この世界は最低賃金とか無いのか?」
銅貨2枚、日本円で換算すると200円か。
時給200円て、今時コンビニでも5倍は貰えるぞ?
「だから、お肉は愚か、お米や野菜何て物も私に取っては高級品です。野草や食パンの耳が私の主食です」
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