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第336話 伝説の大鳥
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「──で、渓谷を進むんだったな?」
〝ルスサルペの街〟を目指す、俺とクレハは月明かりの照らす、夜の森を進んでいく。
クレハをお姫様抱っこしながら、魔力を足に纏い、空を駆ける俺は綺麗な空を見上げる。
月に影がかかる。
俺から見て斜め上30m程の上空にそいつは現れた。
「何だ、鳥!? デカイ、いやそれより──」
──強い。
と、言いかけた所でクレハの声が俺の声を遮る。
「ほ、鳳凰!?」
「鳳凰だと?」
孔雀に似た随分とゴージャスな大鳥だ。
つーか、何だ、この圧倒的な存在感は?
超常、そんな言葉がよく似合うそんな鳥だった。
いや、神様とか魔王とか超常的なのは、この異世界生活で沢山見てきたけど!
それでも尚、息を呑むような存在だった。まあ、アルテナ程じゃないが。
鳳凰はチラりと、俺とクレハを見ると、更に高度を上げ、あっという間に何処かへと去っていった。
「何だったんだ?」
「さ、さぁ? というか、ユキマサ君、鳳凰って何か知ってる?」
「うん? まぁ、知ってるっちゃ知ってるけど」
神話に出てくる36種類ぐらいの羽を持つ伝説の鳥だったか。後は有名どころだと平等院鳳凰堂とかか?
「鳳凰は〝天聖〟にテイムされた、最強クラスの魔力を持った動物なんだよ? ていうか、今では伝説として古い書物に文字と白黒の念写真で残ってるだけ、実物の鳳凰なんて見た人は聞いたこと無いよ」
うん、全然違った。
ところで念写真とは俺の手配書にも使われてた、あの白黒写真のことだろうか。
どうやって撮ったのかと不思議に思ってたが、念写だったんだなあれ。流石異世界ノーテクノロジーだ。
「すまん、全然違った。世界も変われば動物も変わるもんだな。てか、天聖はあれをテイムしてたのか?」
「授業内容だとその筈だよ」
「そうなると、あの鳳凰は主を失ってから、ずっとああやって、空を飛んでいることになるのか──」
1000年も前の人物だ。
──1000年、気が遠くなるな。
そんな時間を生きてるのか、あの鳥は。
いや下手をすれば、もっと昔からいるワケだ。
「あ、ユキマサ君、あの川、その渓谷だよ。谷に沿って進んでいけば、ミリアの湖に出るよ!」
「おう、了解だ」
ミリアの湖──ミリアは凄いな、異世界に湖を持ってるんだからな。スケールが違うぜ!
「つーか、ミリアいないが、入れるのか? タケシがまた襲ってきたりはしないだろうな?」
タケシ──空竜の変異種であり、ミリアの友達というか、何というか……
あの湖を守っている、大きな青い竜、湖の番人だ。
「多分、大丈夫だと思うよ? あ、でも、私もミリア無しで来たことは流石に無いかな……」
「そん時は全力で逃げればいいか。まあ、後でミリアに謝らないといけなくなりそうだがな」
「あはは、そうだね。ミリアなら拍子抜けするぐらい、あっさりと許してくれそうだけどね」
魔力を纏った足で空を踏みしめながら、俺たちは渓谷を谷に沿って道なりに、どんどんと進んでいく──
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