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第324話 エメラルドの約束23
しおりを挟む「──エメレアちゃん! 大丈夫!?」
慌ててキサラギさんが私に抱きついてくる。
「エメレアちゃん!」
「エメレアちゃん!」
シュナさんもレベッカさんも来てくれた。
「まったく下衆な男に目を付けられたね。許せない、こんな小さい子に何するつもりよ。いや、小さくなくてもだけど!」
「エメレアちゃん〝変態〟には十分に気を付けるのよ? 近づいちゃダメ! 何されるか分からないよ」
レベッカさんとシュナさんが真剣に言う。
「わかりました」
変態には近づいちゃダメ。何されるか分からない。
変態には近づいちゃダメ。何されるか分からない。
私の中で変態って言葉が地に落ちた瞬間であった。
(……あれ? でもこれって兄さんみたいな、相手から舐められるぐらいのお人好しの良い人に〝変態〟って渾名付ければ悪い奴も寄ってこないんじゃないの?)
何かに気づいたエメレアだが、止めるものも、訂正するものも、今、この場所には誰もいなかった。
憲兵の到着を待つ間、皆は臨戦態勢だ。
いくら縄で縛って意識がないとしても、相手は山賊──無法者集団だ。一切、気を抜いてはいけない。
──2時間後。
漸く憲兵が来た。20名ぐらいの隊だ。
リーダーさんが指揮を執り、テキパキと盗賊たちを運んでいく。
その後、盗賊を狩ったことで、少なくない額の褒賞金が支払われ、皆(特にエルセムさん)が喜んでいた。
意識が戻った盗賊の頭は憲兵に取り押さえられ、観念した様子だが、私と目が合うと睨んできた。
それを見て更にシュナさんが睨み返していた。
──その後、改めて竜車に乗って〝大都市エルクステン〟を目指した。
御者席に私とシュナさん、リーダーさんが座る。
「エメレアさん疲れたかい?」
「リーダーさん、はい、少し。でも、怖くありません」
皆が一緒だから怖くない。そう心から思えた。
「そうかい? なら、よかった」
そう言いながらリーダーさんは笑う、兄さんと何処か似た雰囲気で。
「〝大都市エルクステン〟には、もう数刻で着くよ? 心も荷物も準備は大丈夫かい?」
「……大丈夫です……」
もう……着いちゃうんだ。
私の新しい一人ぼっちの生活が始まる。
泣いちゃダメだ、泣いちゃダメ。
また心配をかけてしまう──
この時だけは上手く涙が引っ込んでくれた。
〝光の結晶〟の明かりだけが行く道を照らす、暗い夜道の中、それは突如として現れた。
「──エメレアちゃん、見て!」
一つ、また一つ、二つ、三つ──綺麗な鈴のような音と共に丸いボールみたいな明かりが光り始めた。
「綺麗……」
「鈴蛍だね、この辺じゃ珍しい」
私たちの回りをぐるぐると回る鈴蛍に私は癒された、まるで歓迎されているみたいだと思った。
それと同時に今までの生活に別れを告げられてるようにも、小さな頃の私は──そう強く感じた。
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