生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

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第319話 エメラルドの約束18

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 ──バーベキューをお腹いっぱい食べた。
 お腹いっぱいとは言っても、7歳女子の胃袋だ。今思えば、量的にはそれほどでもない。

(……満腹だ……)

 もう食べられない。

 満腹と言うのは幸せな事の筈なのに、私の頭の中はという感情でいっぱいだった。

 一人でお腹いっぱいになっても何の意味もない。
 私は兄さんと一緒にお腹いっぱいになりたかった。

 ダメだ、どうしても、何をしても兄さんの影がチラつく。

「……兄さん……リョク兄さん……」

 私、お腹いっぱいじゃなくていいよ。
 毎日、少しの焦げたパンと水と塩だけで十分だよ。

 宿も要らない、野宿でいい。
 朝から晩まで働き詰めでもいい。

(だから、一緒に居てよ、兄さん──)

「……うわぁ……ぁぁぁぁ……」

 ああ……頭がおかしくなる。

 兄さんを殺したアイツを私は絶対に許さない!
 いつか、必ず報いを受けさせてやる!

「──エメレアさん、エメレアさん!」
「……ぇ……ぁ……」

 気づくと私は憤怒の形相ぎょうそうで泣いていた。
 リーダーさんが私を心配そうに見る。

「……エメレアちゃん、どうしたの?」

 シュナさんの、優しく、でも困った様子の声だ。

「……私は……」

 ──数日前に、兄を殺されました。

 自分の狂った今の心情を話す為、私はここ数日の出来事を全て、包み隠さず皆に話した。

 ──

 ────

「……酷い……」

 シュナさんが呟いた。他の皆は黙っている。
 いや、私への言葉が見つからないようだ。

「……ぶぇぇっ……びぇぇ……ひぐっ……」

 悔しい、悔しくて涙が止まらない。
 あんな奴に意味もなく大好きな兄さんを殺された。

 ……大切な……大切な……大切な……

「トア、抗議に行きましょう!!」
「気持ちは分かるけど、ダメだよ。今の私たちじゃ逆立ちしても、とてもじゃないが戦力も権力も足りない──〝最高貴族〟奴等を相手取るなら、最低でも大国を1つ2つ敵に回すつもりでいかないと、この件には只の抗議1つすらマトモにできやしない」

「そんな……泣き寝入りしろってことですか! このままじゃ、エメレアちゃんが可哀想過ぎます!」
「落ち着け、シュナ、トアに怒っても意味ないだろ」

「エルバ……トア、失礼、少し熱くなりました」

 シュナさんはボロ泣きの私を抱き寄せる。
 呼吸がままならない程に泣き叫ぶ私は、そんなシュナさんの優しさに甘え、強く、強くしがみつく。

「バルス・ハンジ……許せねぇな! それに依頼主ちゃんが俺たち──男を怖がる理由も納得だ……朝は大きい声を出してごめんな。これからは小さく話すぜ」

 皆、心は1つだった。
 誰もがエメレアへのエメレアの兄への仕打ちが許せない。でも、だからと言って今の自分たちではどうすることもできない。

 だから──
 『いつか国を敵に回せるぐらい強くなろう!』
 こんな理不尽に立ち向かえるぐらいに!

 そう──冒険者パーティー〝吟遊詩人バラッド〟の10名は、この日、この小さな依頼主に心で誓った。
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