生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

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第314話 エメラルドの約束13

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 兄さん、兄さん、リョク兄さん。
 今、助けに行くからね──

 王宮を抜け、処刑場までの道がやけに長く感じる。

 開けた場所に出る、人が集まっている。
 その殆どが鎧を着た兵士だ。

 だがそこには憎っくきバルスの姿もある。

 中央には処刑台──ギロチンがある。
 そこにの兄さんの姿を見つけた。

 2本の柱の間にうつ伏せに寝かされた兄さんの首の少し上には吊るされた刃がある。

 あれを落とさせてはいけない。絶対にだ!

 兄さんが私に気づく。
 驚いた顔をした後、兄さんは優しく笑った。

「兄さ──


 刃が落ちる。


 ──ザンッ!!

 噴兄さんの首のあった場所から噴水のように赤い血が吹き出す。私は何が起こったのかを理解するのに少しばかり時間がかかった。

「あぁ……ぁぁ……兄……さん……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 ゾっと血の気が引く。頭が真っ白になる。

「あれはバルス・ハンジ。正当な礼状も裁判も無しに処刑を実行するとは──最悪だ〝最高貴族〟め」

 エルサリオンさんが来た道を引き返す。

「君の兄を助けられなかった、本当にすまない──最高貴族の非道っぷりには私も迷惑している。君はこの国を出なさい。君に対しこの国は酷すぎる」

 私は悲鳴に似た声になら無い声をあげながら、エルサリオンさんのそんな言葉だけが耳に入ってくる。意味は理解していない。
 そんな余裕は今の私には一切なかった。

 王宮に入るとエルサリオンさんは懐から何かを取り出し私に渡してくる。

「当面の路銀だ。償いにはならないかも知れないけど受け取ってくれ──」

 何も言わず、私はそれを受け取るが──
(こんなの要らない。兄さんを返して)
 そんな思いが私の頭を過る。

「もう一度言う。君はこの国から出るんだ、バルス・ハンジにも目を付けられてるみたいだしね。時間は私が稼ぐから、逃げるんだ、いいね?」
「……」

 兄さんがいない……もう何処にも……
 ああ……ああ……ぁぁ……

 涙があふれてきた。止めようと思っても無理だ。
 全然止まってくれない。

「泣くな! 今は逃げることを考えろ! 君の兄の犠牲を無駄にするな!」

 頭が追い付かない。
 放って置いて、私は兄さんを失った。

 もう何も残ってない。

「……兄さん……リョク兄さん……ひぐっ……」

 ──『してくれるかい?』

 ──『、私の分も、ずっと』

 頭に流れてくる兄さんとの最後の約束。
 ……果たさなきゃ──

「……私行きます……生きる為に……ふぐっ……びぇぇ……」

 私は泣きながら走り出す。アテは無い。
 この場から去る、いや逃げるんだ。

 バルスとこの国と、そしてから──
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